
「知られざる地政学」連載(92):リアリズムから見たウクライナ戦争の停戦・和平をめぐる問題点(下)
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無人機による戦闘の現在
最近でいえば、ウクライナ東部でロシアが領有権を主張しているルハンスク(ルハーンシク)州の西、ハリコフ(ハリキウ)州の州都ハリキウにまでロシア製ドローン(無人機)が到達するようになっている。これは、15~30キロを飛行でき、電子戦システムで妨害できない光ファイバードローンの脅威が高まっていることを意味している。5月22日、ロシアはウクライナに対して128機の無人機を発射し、ドニプロとハリコフの住宅に損害を与えた(NYTを参照)。5月23日付のWPは、「ロシア軍は、最大12マイル(約19.3キロ)の射程距離をもつ光ファイバードローンを使ってウクライナの装備を破壊し、とくにロシア西部のクルスク地方で重要な兵站ルートを支配している」と書いている。
しかも、ロシアのドローン攻撃は精度を上げている。まずロシア軍は偵察ドローンを発射する。それからウクライナの陣地に誘導爆弾が浴びせかけられ、大砲でがっちりと援護される。その後、ロシア軍はすぐにFPV(ファースト・パーソン・ヴュー)攻撃ドローン(一人称視点ドローンと呼ばれる、ごく小型で安価なドローン)を投入し、砲撃後に動けるものをすべて粉砕することを狙う(下図を参照)。さらに光ファイバー攻撃ドローンを増やし、どんなカウンタードローンも防ぐことが難しい。その後、バイクや四輪バイク、あるいは徒歩で4、5人の兵士からなる突撃部隊を投入し、ウクライナの拠点に到達して陣地を掃討する――というやり方がいまのロシア軍の戦い方だ。1年前はドローンの面でウクライナが明らかに優位に立っていたが、今では少なくとも互角であり、いくつかの地域ではロシアが非常に優位に立っている。とくに憂慮すべきは、攻撃範囲が広がっていることだ。無人偵察機はすでに数十キロの距離を攻撃しており、全エリアの兵站を破壊しているという。
FPV光ファイバー・ケーブル・ドローン
(出所)https://archive.is/gNst6#selection-1511.0-1529.114
あるいは、ロシアのドローンが群れをなして攻撃するようになったという話もある。攻撃の前に、10~15機のイラン製ドローン、シャヘドが目標から数周、かなり離れて高度4000メートルまで上昇する。シャヘドはその後、高高度から急降下して目標を攻撃する。この新戦術によって、ウクライナの防空部隊によるドローン排除能力は急激に低下している。
5月20日付のNYTは、「ここ数週間、ロシア軍はドンバス地方東部のウクライナの重要拠点であるポクロフスク市の東側の防衛線を突破している」と報じた。さらに、ウクライナ北部のスームィにもロシア軍が近づいている。ウクライナの軍事アナリスト集団であるDeepStateは、ロシア軍が「ヴェセリヴカ-ジュラフカ-ノヴェンケ-バシフカ」の区間沿いにあるウクライナのスームィ州の足場をなんとか確保したと報告している。負け戦がいよいよ大団円に近づいているようにみえる。
最近の攻撃について、「どっちもどっち」の状況であることを「オールドメディア」は報じていない。ロシアが活発にウクライナを攻撃していることばかりを報道している。つまり、オールドメディアはいまでも「ロシア=悪」で凝り固まっている。たとえば、5月25日付のNYTは、「ロシア、ウクライナに戦後最大級の空爆を実施 ウクライナ空軍によると、この攻撃には370発近いミサイルと無人機が使用されたという。 少なくとも12人が死亡した」と報じたが、ウクライナの無人機51機がロシア上空で破壊されたとの情報は伝えていない(25日付「ヴェードモスチ」を参照)。困った問題として、モスクワをねらった無人機が複数飛んできたことで、モスクワのセルゲイ・ソビャーニン市長は、ヴヌコヴォ空港、ドモジェドヴォ空港、ジューコフスキー空港での航空機の発着に一時的な制限を課さざるをえなくなった。
ただ、トランプはロシアによるウクライナへの攻撃に対して怒り、25日、対ロ追加制裁の検討を示唆した。もしトランプが軍事支援と追加制裁に踏み切れば、「小芝居グループ」の勝利となり、戦争継続は決定的となるだろう。
脱走兵の多さをなぜ報道しないのか
本当は、ウクライナ兵の脱走も多い。4月4日付のウクライナ情報によると、2024年1月から12月にかけて、検察庁は刑法第407条(軍隊または勤務地からの無許可離脱)に基づき、6万7840件の刑事訴訟を登録した。この無許可離脱は、軍人が許可なく部隊や勤務地を離れることを意味する。徴兵については、無断離脱が3日以上続いた場合に責任が生じる。契約軍人の場合には、無断欠勤の日数が10日を超えると刑事責任が生じる。契約軍人の無断欠勤が2回目であれば、3日後に刑事責任も発生する。
脱走は、戻る予定がなく、法的許可なく軍務を離れる意味している。前述と同じ期間に、脱走に対する刑事事件が2万3000件以上も登録された。
これらの数字をどうみるかは難しい判断を迫られる。常識的に考えれば、無理やり動員されて兵士になった者が停戦間近と思えば、軍隊を抜け出して身を隠し、停戦を待とうとするのが当たり前ということになる。ゆえに、ウクライナ軍は脱走だけでなく、兵員集めにも苦労しているはずだ。しかし、その実情をオールドメディアは報道しない。
リアリズムに徹せよ!
リアリズムに徹すると、停戦・和平を実現するには、関係国の内部の状況がきわめて重要な意味をもつことに気づく。とくに注目されるのは、前線での戦況と、国内の政治状況だ。
戦況については、すでに紹介したように、ロシア軍有利な状況が決定的になりつつある。
より問題なのは、国内政治だ。ゼレンスキーは、ウクライナが少なくとも欧州の支援を維持できれば、あと数年はロシアとの消耗戦に耐えられると想定している。戦争が長引くことが明らかになれば、ゼレンスキーは、兵員を増やすために、動員年齢を引き下げるだろう。もう大統領選を心配する必要もないから、反発の大きな手段で、若者を平然と死に追いやるだろう。その間に、ゼレンスキーや、裏で糸を引く大統領府のアンドリー・イェルマーク長官らは、いつでも海外逃亡できるように蓄財に励むのかもしれない。
こうなった段階で、ようやく、ゼレンスキーを公然と引きずり下ろそうとする動きが広がるのだろうか。一刻も早く停戦しなければ犬死が増えるだけとわかるようになったとき、ロシアとよりまともな条件で停戦・和平の交渉ができる人物を据えなければならないと思う人が出てくるかもしれない。
クーデターの可能性
もっと怖いのは、ゼレンスキーないし別の人物が本当の意味での停戦・和平に前向きになると、そうした人物を裏切り者としてクーデターが引き起こされることである。そういう可能性のある人物が複数いる。
ウクライナにおいて、停戦に反対し、戦争継続を心から望んでいる人物、すなわち、停戦・和平に反対している人物として、アゾフのデニス・プロコペンコ司令官(レディス)と旧第3突撃旅団のアンドリー・ビレツキー司令官がいる。ウクライナの「ストラナ―・ニュース」は、「ビレツキーやプロコペンコといった人物やその他の幹部が、クーデター準備の基盤になるかもしれない。彼らはすでに軍団司令官の地位を得ており、2万~2万5000人の銃剣部隊を指揮下に置いているのだからなおさらだ」と指摘している。
アゾフ大隊(連隊)は、白人至上主義やネオナチの信条に動機づけられた外国人戦闘員をリクルートし、その多くが西側諸国出身者であるウクライナの武装集団である(White Supremacy Extremism: The Transnational Rise of the Violent White Supremacist Movement, 2019, p. 31)。2014年以降、米国を含む50カ国からおよそ1万7000人の外国人がウクライナに渡り、同国での戦争に参加していた。アゾフは、アゾフ海に面したマリウポリを拠点としていた。2018年3月には、ネオナチとのつながりを理由に、米国議会は歳出法案に条項を追加し、アゾフへの武器、訓練、その他の援助の提供に使用してはならないことになった。
しかし、アゾフ自体はウクライナの国家親衛隊に編入された。2025年4月15日付の情報によると、ウクライナ国家警備隊をベースに二つの軍団が創設され、そのうちの一つを第12アゾフ特殊部隊旅団司令官プロコペンコ(レディス)が率いることになった。つまり、彼は現在、多くの部下を使ってクーデターさえ起こせるだけの力をもっている。
戦争継続派への嫌疑
非難すべきは欧州の戦争継続派だ。ブルームバーグによれば、米国がウクライナへの支援を拒否した場合、欧州は米国の武器を購入し、キエフに譲渡することを計画している。あくまでも、ウクライナを軍事支援し、戦争をつづけさせたいらしい。
もっとも悪辣な戦争継続派の一人、アナレーナ・ベアボック独外相(当時)は2025年4月1日、キーフ到着後、「ウクライナの人々ほど平和を願っている者はいない。ウクライナは即時停戦に同意する用意がある。時間稼ぎをし、平和を望まず、国際法に違反する侵略戦争を継続しているのはプーチンだ。彼は交渉の意思があるように見せかけているが、その目標から1ミリも譲歩していない」と語った。
公然と「嘘」を話す彼女は、「現政権および次期政権の政党が、ウクライナへの短期支援のために 30 億ユーロを追加拠出し、2029 年までにさらに 82 億 5000 万ユーロの軍事支援を行うことを決定した」ことも明らかにした。だが、停戦を求めながら、ウクライナを軍事支援することがロシアを不安にさせ、停戦・和平の障害になるというリアリズムについては、彼女はまったく何も語らなかった。要するに、ドイツはウクライナを支援しつづけることで、戦争継続派の一味として活動していることになる。
リアリズムに徹すれば、欧州諸国が停戦・和平後の対ロ制裁緩和をめぐって恐れている問題の存在に気づく。それは、ロシア中央銀行が国際通貨準備高(外貨準備)として各国の中央銀行などに預けていた資金が欧米や日本の政府によって凍結され、それを担保に勝手にウクライナに融資するまでに至っている、ロシア資産の今後である。欧州は、ロシア資産約3000億ドルの3分の2を凍結・管理下に置いている。もし停戦・和平の実現によって、これをロシアに返還することになれば、欧州各国は停戦・和平後のウクライナ復興資金の捻出に窮する事態に陥るだろう。
つまり、「小芝居グループ」にとって、ウクライナ戦争の停戦・和平は自国のカネ、費用の急膨張をもたらし、財政悪化の原因となりかねない。同グループの英、独、仏といった国は自国のためにウクライナに戦争をつづけてもらい、できればロシアを破って、ロシア資産の返還に応じなくてもすむ状況にしてほしいのだ。だからこそ、欧州の政治指導者はウクライナの戦争継続を求めてやまないのである。たとえその結果として、ウクライナ国民の死傷者が増加しても、冷徹で利己的な彼らにとってはどうでもいい問題なのだ。
スターマー事件
最近、リアリズムの対象にすべき興味深い事件が起きた。前述した5月10日、「30日無条件停戦」という提案を決めた会合に参加した首脳(フランス、ドイツ、ポーランド、イギリス、ウクライナの首脳で、共同声明を出した)のなかに、英国のキア・スターマー首相もいた。なぜ彼は、そんなに戦争を継続したがっているのだろうか。そんな疑問にヒントを与えてくれたのがスターマーに関連する放火事件である。
5月20日付のNYTによると、スターマー英首相に関連する二つの不動産と車の火災で、2人目の男が起訴された。最初の放火は8日に起きた。スターマーが以前所有していた車が北ロンドンのケンティッシュタウンで放火されたのである。11日には、同じくロンドン北部のイズリントンで、スターマーがかつて住んでいた物件から出火した。12日未明、昨年までスターマーと家族が住んでいたケンティッシュタウンにあるスターマーの私邸の玄関先で小さな火災が発生した。
5月17日にロンドン北部のルートン空港で逮捕された、ウクライナ生まれのルーマニア人、スタニスラフ・カルピウク被告(26歳)は、最初に起訴された21歳のウクライナ人、ロマン・ラヴリノヴィッチ被告と共謀し、4月17日から5月13日の間に放火を行なった罪に問われている。ラヴリノヴィッチはロンドン南東部に住んでいたが、すでに起訴されている。事件の3人目の容疑者として、19日に逮捕された34歳の男が拘留されている。ただ、警察は名前を明かしていないと、この段階では報道されていた。21日付の英国の「インディペンデント」は、「ウクライナ人2人とルーマニア人1人の計3人が、首相に関連する住宅への放火で起訴された」と報じた。
「テレグラム」によると、不審火の容疑者は、ウクライナ西部のイヴァーノ=フランキーウシク州出身の21歳のロマン・ラヴリノヴィッチ、ウクライナ南西部、ルーマニア国境沿いのチェルニフツィ州出身の26歳のスタニスラフ・カルピュク、3人目は34歳のペトロ・ポチノクだ。3人はロンドン在住で顔見知りであった。ソーシャル・ネットワーク上では、ラヴリノヴィッチは自分のことを「モデル志望」で、どんな仕事でも時給20ポンド(イギリスの最低賃金は時給約13ポンド)で引き受けると書いている。さらに、「イギリスのソーシャル・ネットワークでは、スターマーがその男たちと知り合いだったとされる噂があり、彼らはエスコートとかレンタルボーイと呼ばれている」という記述まである。
これ以上は書かない。わかってほしいのは、ウクライナ戦争が長引くなかで、武器などの製造・販売で儲ける者もいれば、人身売買や売買春のようなもので大金持ちになったり、あるは身を落とさざるをえなくなったりする者もいるということだ。とくに、戦争で何らかの形で利益を受けた者は、戦争継続で利益の持続を願うことだろう。こうした利益享受者本人、あるいは、彼らによるロビイスト活動の対象者たる政治家がカネ儲けにつながる戦争継続に傾くのは、ある意味で当然かもしれない。
リアリズムに徹すれば、オールドメディアであっても、彼らがこれまでまったく報道してこなかった「闇ビジネス」に気づくことができるはずだ。しかし、残念ながら、オールドメディアは既得権益者と結託するだけで、「現実」に目を向けずにいる。
日本の外務省
リアリズムに徹すると、日本の外務省が米国の政策に盲従してきた咎がいま問題となっていることに気づく。外務官僚はこれまで、リベラルデモクラシーを海外に輸出するという米国の外交戦略に沿って、日本外交を展開してきた。もっと端的に言えば、米国の先兵として米国の外交政策に担ってきた。ところが、このリベラルデモクラシーそのものを批判するトランプ政権が誕生したことで、いま外務省は困難に直面している。
これまでの米国の外交政策は、民主党出身の大統領であろうと、共和党出身の大統領であろうと、基本はリベラルデモクラシーの堅持であったことに代わりはなかった。しかし、陸軍士官学校(通称ウェストポイント)の卒業生に向けて、「米軍の仕事は、ドラッグショーを主催することでも、外国の文化を変革することでも、銃を突きつけて世界中のすべての人に民主主義を広めることでもない」、と5月24日に語ったトランプ大統領は、リベラルデモクラシーの輸出を是としてきた米国外交そのものを否定している(NYTを参照)。私と同じくこの発言に注目したロシアの有力紙「コメルサント」は、トランプが米軍の主な任務は民主主義を広めることではなく、「いかなる敵も制圧し、米国に対するいかなる脅威もいつでもどこでも破壊する」ことだとのべた点に注目している。トランプは、すべての敵が米軍に対してもつべき敬意によって、これを達成できると考えているというのだ。
「米国べったり路線」の継続は、このトランプにつき従うことを意味する。さすがに、そうしたくない者は「べったり路線」から離脱して、欧州路線に近づかざるをえないのかもしれない。だが、それは、口先ではウクライナ戦争の停戦を唱えながら、実際には戦争継続を願っている、面従腹背の欧州路線を支持することを意味している。
テレビに登場する外務省OBをみていると、後者の立場に立つ者が多い。たとえば、成蹊大学の倉井高志特別客員教授だ。モスクワで私と同じアパートの住人であった。彼は、これまで「米国べったり路線」から決別し、戦争継続派になったようだ。それだけ、トランプが嫌いなのだろう。だが、「トランプべったり」ではないにしろ、トランプ路線を温かく見守ろうとするOBもいる。おそらく東郷和彦あたりはその一人だろう。2025年度岡倉天心記念賞の賞状を東京文化会館で私に渡した人物だ。私としては、後者を応援することで、よりリアリズムに基づいた日本外交の独自展開を期待したい。
今後の展望をめぐって
たぶん、地政学を学問として研究している者は、オールドメディアに属する「ヘタレども」よりはマシかもしれない。そんな思いを強くする報告書がJPモルガン・チェースの地政学センターから公表された。その19頁から、「ロシアとウクライナのエンドゲームとヨーロッパの未来」が記述されている。
それによると、戦争は「終盤戦に突入」し、停戦は2025年第2四半期の終わり、つまり7月までに実現するだろうという。停戦の実現については、四つのシナリオとその実現確率が示されている。地政学センターは、アメリカとヨーロッパがウクライナに提供する安全保障のレベルが、シナリオの選択に影響を与える主な要因だと考えている。どのシナリオも、ウクライナの領土を1991年の国境線に戻し、NATOに加盟することは想定していない。
もっともありそうな将来は、ウクライナの「ジョージア(グルジア)化」であるという。その確率は50%だ。「外国軍と強力な軍事支援の両方がない場合、ウクライナは不安定な状態がつづき、成長と回復が阻害され、外国支援は時間の経過とともに衰え、西側統合(EU・NATO加盟)は事実上頓挫し、徐々にロシアの軌道に戻るだろう」というのである。
グルジアの場合、2008年8月、当時の親米派大統領ミヘイル・サアカシュヴィリ大統領が戦争を開始した(ロシアが開戦したといまでも大誤報を流しつづけているオールドメディアも多いから要注意)。8日間でロシア側に軍配が上がった。不可思議なことに、ウクライナ戦争とは異なり、戦争を開始したサアカシュヴィリは戦後、西側諸国の援助と政治的支援の急増の恩恵を受けた。ただ、さすがに「侵略」とも言える行為をはじめた国に兵力や安全保障を約束する西側諸国はなかった。
報告書は、「今日、グルジアの与党グルジアン・ドリームは、ロシアに友好的なオリガルヒの支援を受け、EU加盟を凍結し、クレムリン流の「外国エージェント」法を採用したため、米国とEUの資金援助が停止された」と書いている。忍び寄るロシアの影響力によって助長された政治的不安定と民主主義の侵食は、外貨準備高が減少する中で投資家の信頼に影響を及ぼしているという。一方、ロシアとの経済的なつながりは深まっている。2022~2023年には、ロシアからの送金だけでグルジアのGDPの15%以上を占め、同国最大の送金収入源となった。貿易と直接旅行が拡大し、ロシア人の流入が急増した。
ウクライナの場合、前述したように、心から戦争をつづけたいと思っている超過激なナショナリストがたくさん残存している。彼らは、和平が実現しても、テロ活動をつづけるだろう。他方で、ウクライナの混乱に乗じて、西部の「併合」をねらってハンガリーやルーマニアのナショナリストが暗躍する可能性がある。そう考えると、報告書の予想は、リアリズムの観点から、当たらずとも遠からずの展望と言えるかもしれない。
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1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士。評論家。『帝国主義アメリカの野望』によって2024年度「岡倉天心記念賞」を受賞(ほかにも、『ウクライナ3.0』などの一連の作品が高く評価されている)。 【ウクライナ】 『ウクライナ戦争をどうみるか』(花伝社、2023)、『復讐としてのウクライナ戦争』(社会評論社、2022)『ウクライナ3.0』(同、2022)、『ウクライナ2.0』(同、2015)、『ウクライナ・ゲート』(同、2014) 【ロシア】 『プーチン3.0』(社会評論社、2022)、『プーチン露大統領とその仲間たち』(同、2016)、『プーチン2.0』(東洋書店、2012)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(岩波書店、2009)、『ネオ KGB 帝国:ロシアの闇に迫る』(東洋書店、2008)、『ロシア経済の真実』(東洋経済新報社、2005)、『現代ロシアの経済構造』(慶應義塾大学出版会、2004)、『ロシアの軍需産業』(岩波新書、2003)などがある。 【エネルギー】 『核なき世界論』(東洋書店、2010)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局、2007)などがある。 【権力】 『なぜ「官僚」は腐敗するのか』(潮出版社、2018)、『官僚の世界史:腐敗の構造』(社会評論社、2016)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた:官僚支配の民主主義』(ポプラ社、2016)、Anti-Corruption Policies(Maruzen Planet、2013)などがある。 【サイバー空間】 『サイバー空間における覇権争奪:個人・国家・産業・法規制のゆくえ』(社会評論社、2019)がある。 【地政学】 『知られざる地政学』〈上下巻〉(社会評論社、2023)がある。