
植草一秀【連載】知られざる真実/2025年6月 5日 (木) 民主主義が機能している韓国
社会・経済韓国の第14代大統領に李在明(イジェミョン)氏が選出された。
第13代大統領の尹錫悦(ユンソンニョル)氏が弾劾、罷免されたことに伴う大統領選で李氏が選出された。
新大統領は革新系の〈共に民主党〉を基盤とする。
韓国では親米保守と独立革新の政権がおよそ10年周期での交代を繰り返している。
民主主義が健全に機能している、世界でも稀有な例であると言える。
親米保守の朴槿恵(パククネ)大統領が弾劾・罷免されたあと、独立革新の文在寅(ムンジェイン)氏が大統領職を全うし、その後に尹錫悦氏が大統領に就任した。
韓国では親米保守政権と独立革新政権がそれぞれ2期10年を交互に担うことが多かったが、2022年の大統領選では文在寅大統領退陣後、独立革新政権が1期5年で親米保守の尹錫悦大統領にバトンを引き継いだ。
しかし、尹大統領が突然、特別戒厳令を発動し、韓国を大混乱に陥れ、その行為によって尹氏は大統領を罷免された。
親米保守と独立革新による政権交代の繰り返しは韓国主権者の民意を反映するもの。
親米保守と独立革新の主張は大きく異なるが、異なる民意が定期的に政権を樹立することは多様な民意を反映する政治システムとして特筆に値するものと言える。
韓国では歴代大統領が任期終了後、もしくは任期中に刑事訴追されて投獄されるケースが極めて多い。
大統領就任の際にはその先に控える過酷な運命を覚悟することが求められるとも言えるが、それでも、政治状況が定期的にリシャッフルされる状況は日本から見ればうらやましい限り。
日本では1955年に保守合同が実行されて自由民主党が創設された。
自民党創設には米国CIA資金が投下されたことが明らかにされており、米国が主導する日本政治体制の構築であったと言える。
1955年の保守合同以来、70年間にわたり、短期の例外時期を除いてこの自民党が政権の中枢に居座り続けてきた。
「権力は腐敗の傾向がある。
絶対的な権力は絶対的に腐敗する」
はイギリスの思想家ジョン・アクトンの言葉だが、自民党の腐敗は深刻である。
この70年間に繰り返し〈政治とカネ〉の腐敗が表面化してきた。
しかし、悪弊は是正されない。
いまもなお、巨額の裏金事件が表面化したまま、全容解明に至っていない。
敗戦後の日本において主権者の選択で〈革新政権〉が樹立されたのはわずかに2回。
1947年の片山哲内閣と2009年の鳩山由紀夫内閣だけである。
1993年には7党1会派による細川護熙内閣が樹立されたが、これは選挙後に第2党以下の政党が協議して内閣を樹立したもの。
この意味では1947年の片山内閣も選挙後の連立協議によって樹立されたもので、主権者の明確な意思で政権交代が遂行されたのは2009年の鳩山内閣だけということになる。
鳩山内閣は画期的な基本路線を示した。
対米自立、官僚支配打破、大資本支配構造打破、という根本的な政治構造刷新の方針を明示した。
これは、日本の既得権勢力にとっての〈悪夢〉だった。
それゆえに、既得権勢力の総攻撃、猛攻撃を受けた。
そのために、わずか8ヵ月の短期間で幕を閉じることになったが、日本政治史上に燦然と輝く偉業であったと言ってよいだろう。
いまの日本に求められるのは2009年の政権交代の再現である。
親米保守の政権から独立革新の政権への政治刷新が求められている。
ところが、この可能性が大幅に後退している。
理由は、多くの野党が〈第二自公化〉してしまっていることにある
〈ゆ党〉化である。
維新・国民・立民が〈ゆ党三兄弟〉を形成。
共通点は〈対米隷属〉だ。
〈対米隷属〉の〈自公〉と〈第二自公〉で政権をたらい回ししても政治の本質は変わらない。
米国は日本政治支配権を維持するために野党の〈ゆ党化〉に力を注ぐ。
2017年に立憲民主党が創設されたときには、立民が革新勢力の中核に育つことが期待された。
しかし、立民は右旋回して完全に〈ゆ党〉化している。
7月に実施される見通しの参議院議員通常選挙での最大課題は〈独立革新勢力〉の振興だ。
〈独立革新〉勢力による政権交代実現を目指さなければならない。
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050