【連載】社会学作家・秋嶋亮の「リアリティ・オブ・ジャパン」

秋嶋亮(社会学作家)連載ブログ/27:言論の危機の時代

秋嶋亮

憲法記念日の5月3日、NHKは『 “SNS時代”の選挙は 民主主義は』と題し、1時間以上にわたり特番を放送したのだが、その内容たるやソーシャルメディアの規制に世論を束ねるCMだったのだ。

NHKのHPの解説には”この番組は、選挙の形が大きく変わってきた現代において、私たちの「民主主義」がどうあるべきかを問い直す内容です。憲法記念日という大切な日に、政治家たちがSNSやAI、そして国民との関係について正面から討論するこの番組は、今を生きる私たちにとって見逃せない内容です”とごたくが並べられている。

要するに、ソーシャルメディアが世論形成の舞台となった今時代では、そこでの発信がエレクタビリティ(選挙での勝利の可能性)に直結することから、「インフォメーション・ヘルス(情報的健康)」の建前の下で言論規制する魂胆なのである。

番組は自民、公明、維新、国民の与党連合と、立民、共産、社民などの野党が論戦するというフリー・ディスカッションの形式だが、全体を通じて「言論や表現の自由は尊重されなくてはいけないが、それが多少損なわれるとしてもSNSの規制はやむを得ない」という通奏低音(底流にある主張)が響いていたのだ。

つまりこれは典型的な「論点先取」であり(最初から結論がある八百長の議論方法であり)、視聴者をSNSの規制に合意せしむフォーカル・ポイント(争点の落としどころ)が巧妙に台本化されていたわけだ。

それにしてもひときわ印象深かったのは、自公と最大野党・立民との連携ぶりである。両者は共闘するかのようにSNSの規制を唱え、ダイアド(二個一組の不可分)的な関係をあらわにし、改憲もこのような談合で進められていることを強く示唆したのだ。

かくして改憲に先立ち言論が規制されようとしているのだが、これは直近の選挙よりむしろ国民投票を見据えた措置なのだろう。

つまり国民投票が有権者ではなく投票者の過半数で改憲が決定すること(国民投票が実施されると組織票や莫大な広告費を持つ改憲派が圧勝すること)や、改憲案が基本的人権や戦争放棄の条文を抹消したファシズム草案であることを周知するポストを投票の手前で排除したいわけだ。

このようにとんでもない番組だったのだが、最大の欺瞞は、SNSの規制が「讒謗律」的にエスカレートする蓋然性に全く触れなかったことだ。

どういうことかと言うと、当初は誹謗中傷の取り締まりに限定されていたものがいつしか治安維持法に発展し、全面的な言論統制と国民弾圧に発展した史例に言及する意見がなかったのだ。少し難しい言い方をすれば、「経験的転回(歴史の体験に基づく高度な思考)」の議論が皆無だったのである。

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秋嶋亮 秋嶋亮

☆秋嶋亮(あきしまりょう:響堂雪乃より改名) 全国紙系媒体の編集長を退任し社会学作家に転向。ブログ・マガジン「独りファシズム Ver.0.3」http://alisonn.blog106.fc2.com/ を主宰し、グローバリゼーションをテーマに精力的な情報発信を続けている。主著として『独りファシズム―つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?―』(ヒカルランド)、『略奪者のロジック―支配を構造化する210の言葉たち―』(三五館)、『終末社会学用語辞典』(共著、白馬社)、『植民地化する日本、帝国化する世界』(共著、ヒカルランド)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―15歳から始める生き残るための社会学』(白馬社)、『放射能が降る都市で叛逆もせず眠り続けるのか』(共著、白馬社)、『北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか―国民は両建構造(ヤラセ)に騙されている―』(白馬社)『続・ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―16歳から始める思考者になるための社会学』(白馬社)、『略奪者のロジック 超集編―ディストピア化する日本を究明する201の言葉たち―』(白馬社)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへOUTBREAK―17歳から始める反抗者になるための社会学』(白馬社)、『無思考国家―だからニホンは滅び行く国になった―』(白馬社)、などがある。

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