
6月17日のウクライナ情報
国際クライナ情報
安斎育郎
❶ハルキウに過去最大の攻撃、市内が「巨大爆炎」に包まれた瞬間映像…ロシアの報復で40回以上の爆発(Newsweek, 2025年6月15日)
<ウクライナが6月1日に行った大規模なドローン攻撃で甚大な被害を被ったロシア。第2の都市ハルキウを標的に猛反撃を行ったときの映像がSNSで拡散している>
ウクライナ第2の都市ハルキウは6月6日夜、ロシアのドローン、ミサイル、爆弾による大規模な攻撃を受けた。ロシアによる本格侵攻以来、同市に対する最大規模の攻撃とされている。この攻撃の様子を捉えた映像がSNSで拡散しており、集合住宅が建ち並ぶ地区で巨大な爆発が起きる瞬間も収められている。
ハルキウのイーホル・テレホフ市長は、「ハルキウは全面戦争開始以来、最も強力な攻撃に直面している」とテレグラムに投稿した。別の当局者によると、この攻撃により少なくとも3人が死亡し、19人が負傷した。
ロシアは前日夜に、首都キーウや西部地域を含む主要都市を標的とした大規模なミサイルとドローンの攻撃を開始した。
ウクライナは6月1日に大胆なドローン攻撃「クモの巣作戦」を実行し、ロシアによる報復が予想されていた。クモの巣作戦では、爆撃機部隊の3分の1を無力化したとウクライナは発表している。その後の攻撃では、ロシアとクリミア半島を結ぶケルチ橋を損傷させた。
■負傷者には生後1カ月の乳児を含む子供2人も
ウクライナ北東部のハルキウ州は、戦線沿いに位置し、常にロシアからのミサイル、ドローン、滑空爆弾攻撃の標的となっている。当局者によると、6日夜にハルキウ全域で少なくとも40回の爆発が報告され、9階建ての住宅ビル、企業、民家などの民間標的に対するドローン攻撃が実施された。
テレホフ市長は、シャヘド型ドローン48機、ミサイル2発、誘導爆弾4発が、ハルキウ市のオスノビャンスキー地区とキーウ地区に向けて発射されたと発表。この攻撃で、少なくとも3人が死亡、18人が負傷したとされている。地元当局によると、負傷者の中には生後1カ月の乳児を含む子供2人も含まれていた。
テレホフは、「これは平和なハルキウに対するあからさまなテロだ」とロシアを批判した。翌7日朝には、救助隊ががれきの下に埋もれた犠牲者の捜索活動にあたり、ソーシャルメディアにはその様子が投稿された。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、5日の夜間にもキーウとウクライナ全土の主要都市を標的とした攻撃があり、少なくとも4人が死亡、80人が負傷したと明らかにした。
ロシアの猛攻は、ウクライナのクモの巣作戦に対する報復が予測される中で起きた。この作戦は、4つの主要なロシアの軍用飛行場に対して実施され、重爆撃機や希少なA50偵察機を含む航空機41機が損傷したとウクライナは発表している。
■国民の懸念は攻撃激化ではなく、生き残れるか
シンクタンク、欧州政策分析センターのエリナ・ベケトワ研究員は、クモの巣作戦のような攻撃に対する報復に関して「ウクライナ人は通常よりも必ずしも警戒しているわけではない」と本誌に語った。
ロシアは日常的に民間人やインフラを標的にしており、ウクライナ国民が恐れているのは、攻撃のエスカレーションではなく生き残れるかどうかだとベケトワは指摘する。そのため人々は、シェルターを利用したり、ウクライナ軍を支援したりするなど、慎重だが断固たる行動を取っているとベケトワは述べる。
このようにロシアによるウクライナの都市への攻撃は激化しているが、和平への道のりは依然として遠いようだ。米議会ではロシアに対する超党派の制裁法案が提出され、プーチンに対する圧力が強化されることが期待されている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e96c912d619b75bfa5ffc427175b604d82bc1e9c/images/000
❷解説】 ロシアの記録的規模のドローン攻撃、戦争の「危険な転換点」か(2025年6月11日)
ポール・アダムス外交担当特派員、BBCニュース(キーウ)
ウクライナ各地の都市に対する、ロシアの大規模なドローン(無人機)攻撃が増加傾向にある。
ロシアは9日夜から10日かけて、またしてもウクライナに空爆を仕掛けた。記録的な規模ではなかったが、「新常態」を象徴するものだった。
首都キーウ上空をドローンが絶え間なく飛び回った。こうした状況は、真夜中を過ぎて数時間にわたり続いた。
ドローンはほぼすべての方角から飛来しているようだった。探照灯が空をくまなく照らし、街中に配備された防空部隊から、オレンジ色の曳光(えいこう)弾が打ち上がった。
ドローンが接近するたびに、重機関銃の低い発射音が街中に響き渡った。
私たちがいるホテルからは、遠くの方で燃え盛る炎が見えた。満月に近い、燃えるようなオレンジ色の月が、まるで競うのを拒むかのように、ゆっくり見えなくなっていった。
大きな爆発音がした。迎撃が成功したか、あるいはドローンが目標に到達したのだろう。
こうした劇的な状況下にいると、大局的な判断力を保つのは難しい。
■ドローン攻撃が急増
公式の声明ではいつも決まって、「大規模」という言葉が使われる。
しかし、統計データを見てみると、疑いようのない状況がうかがえる。前線から離れた場所において、ロシアによる全面侵攻の初期以降で最も継続的な爆撃が実施されており、ドローン攻撃も急増しているのだ。
ウクライナ軍参謀本部の報告によると、昨年7月までの3カ月間に、ロシアは計1100機のドローンを発射した。
そして、昨年8月には818機、9月には1410機、10月には2000機以上と、発射されるドローンの数は急増した。
その後も、ドローン攻撃は増え続けている。
今年5月には、初めて4000機を超えた。そして、今月はその記録を上回る勢いだ。
ウクライナ空軍がまとめたデータによると、ロシアは今月に入ってから、24時間あたり平均256発の飛翔体を発射している。
飛翔体の大半はドローンで、シャヘド型攻撃ドローンや、ウクライナの防空システムを混乱させるための、さまざまなおとりも含まれる。
ロシアは2022年末に、イランが提供したシャヘド・ドローンを使い始めた。「シャヘド」は「殉教者」を意味する。
しかし、ロシアは2023年夏ごろまでに、中部タタールスタン共和国エラブガにある経済特区で、「ゲラン」という名の独自のシャヘド型ドローンを製造するようになった。
ウクライナ保安庁(SBU)のアルテム・デフチャレンコ報道官によると、ロシア国内ではこれまでに2万5000機のドローンが製造された。また、それ以前に提供されたイラン製部品を使い、2万機が組み立てられたという。
9日夜の空爆で検知されたドローン315機のうち、実際に攻撃を仕掛けられるのは250機だったと、ウクライナ空軍のユーリ・イフナト報道官は述べた。
「その大半はキーウを標的としていた」と、イフナト報道官はウクライナ・メディアRBCに語った。
■国内でドローン製造、継続的に改良か
9日の攻撃では、ドローンに加えて、計7発の弾道ミサイルと巡航ミサイルがキーウに向けて発射された。
それは、長期にわたり苦しんでいるキーウ市民にとって、またしても眠れない夜を告げるものとなった。
「激しさを増している」と、キーウ在住のカティアさんは私に語った。
「前はもっと、感情的に楽だった。なぜか今は、これまで以上にしんどくなっている」
ウクライナでの戦争における変化は、ロシアの攻撃の強度だけではない。ロシアは戦闘能力を向上させている。9日のような夜を数百回も経験してきたキーウ市民は、ロシアの技術のわずかな変化を感じ取っている。
「以前とは違う音のするドローンが増えている」と、カティアさんは話した。
SBUのデフチャレンコ報道官は、ロシアが継続的に改良を加えていると指摘する。
「ロシアのエンジニアたちは、破壊力を強化し、破壊の規模と民間人の被害を最大化するよう命じられている」と、同報道官は説明する。
「加えて、ウクライナの防空システムに対するゲラン・ドローンのぜい弱性を改善するよう、取り組んでいる」
9日の空爆では、複数の集合住宅やオフィスビルなどが被害を受けた。キーウ政府は、軍事目標とみなされる可能性のあるものが損害を受けたかどうか、言及を避ける傾向にある。
ウクライナ文化省は声明で、キーウ市内の聖ソフィア大聖堂が初めて被害を受けたと発表した。
ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に登録されている聖ソフィア大聖堂は、ウクライナで最も重要な文化的・宗教的遺産の一つだ。11世紀の壮大なモザイク画やフレスコ画で知られる。
爆発の衝撃波で、大聖堂の東側のファサードの、漆喰(しっくい)のコーニス(帯状の装飾)が損傷したが、内部は影響を受けていないとされる。
しかし、「爆発で起きる振動は、構造物の健全性に重大な脅威をおよぼす可能性がある」と、文化省は声明で述べた。
(英語記事 Record number of drone attacks signals dangerous shift in war)
https://news.yahoo.co.jp/articles/1a9dfd4fce2aa72e1a1dfc15711affba9bc65017/images/000
❸ スコット・リッター:壊滅的な消滅 ― 史上最悪の一撃が最前線を破壊(2025年6月14日)
爆発もニュースの見出しもなし。ただ冷えたトラックが、6,000人以上のウクライナ兵を、認知も書類も得られず、壊滅的な状況下で帰還させているだけだ。スコット・リッターが説明するように、これは人道的な行為などではない。心理戦の極みだ。ロシアは1年間準備を重ね、ウクライナの領土ではなく、信頼、士気、そして国民の結束を揺るがすまさにその瞬間を待ち望んでいた。これは、これまで誰も耳にしたことのない、最も静かで、最も巧妙なエスカレーションだ…今のところは。
https://youtu.be/MLZCcyyqDI4
https://www.youtube.com/watch?v=MLZCcyyqDI4
❹ウクライナ兵士がメディアが隠す残酷な真実を暴露(2025年6月14日)
https://youtu.be/huzSU8LJ1UE
https://www.youtube.com/watch?v=huzSU8LJ1UE
❺グレン・ディーセン教授:ヨーロッパは本当にロシアを恐れているのか?(2025年6月12日)
動画では、アンドリュー・ナポリターノ氏がグレン・ディーゼン教授と、イランの核兵器開発、ロシアと西側諸国(特にイギリス)との関係、そしてヨーロッパの安全保障について深く議論しています。
ヨーロッパは本当にロシアを恐れているのか? グレン・ディーゼン教授が語る地政学的分析
最近の議論で、グレン・ディーゼン教授は、イランの核開発、ロシアと西側諸国との関係、そしてヨーロッパの安全保障の複雑な状況について、彼の見解を共有しました。彼の分析は、既存の物語に異議を唱え、これらの差し迫った地政学的問題に対する異なる視点を提供しています。
イランの核兵器開発に関する神話
ディーゼン教授は、イランが核兵器開発を意図しているという主張に異議を唱え、国際原子力機関 (IAEA) がその証拠を確認していないことを指摘しました。彼は、米国がイランの核開発疑惑を交渉の口実として利用しているが、それを弾道ミサイルや地域における提携といった他の問題と不当に結びつけていると示唆しました。
さらに、教授はイランが核拡散防止条約 (NPT) の署名国として民間原子力計画を開発する権利を強調し、NPTに署名していないイスラエルのイランの核計画への反対の矛盾を指摘しました。彼は、イランが自国の安全保障上の懸念に対処されることなく、自国の軍事力を放棄することはできないと主張しました。
ロシアと西側諸国の関係:代理戦争の解明
議論では、ロシア外務大臣ラブロフ氏が、ロシア軍へのドローン攻撃の背後にイギリスがいると確信していると述べたことに焦点が当てられました。ディーゼン教授は、イギリスがロシアとの代理戦争において最も攻撃的な国であると強調し、ウクライナの諜報機関の再構築におけるアメリカとイギリスの深い関与を示す証拠を挙げました。
彼は、ロシアの核抑止力への攻撃は無謀なエスカレーションであると警告し、西側諸国がロシアの安全保障上の懸念に対処しないことが、ロシアの軍事力増強につながっていると主張しました。
教授は、ロシアの軍事力増強が、西側諸国、特にフィンランドのNATO拡大への反応であると説明しました。彼は、フィンランドはかつて中立国の成功例であったが、現在はNATOのロシアに対する最前線となっていると述べました。
リンゼイ・グラハム上院議員の戦争に関する見解への反論
議論は、リンゼイ・グラハム上院議員がロシアのウクライナへの軍事作戦を不当に拡大解釈し、ロシアがウクライナを解体し、他のヨーロッパ諸国を侵略することを望んでいるという根拠のない主張を批判しました。
ディーゼン教授は、ロシアが2014年までクリミアに対する領有権を主張したことがなく、ウクライナの領土保全を認めていたと反論しました。彼は、クリミアの占領がウクライナでのクーデターへの反応であったと説明しました。さらに、教授はミンスク合意がドンバス地域のウクライナへの再統合を前提としていたが、それはNATOの拡大を阻止し、ロシア語を話す人々の文化的な権利を保証するためであったことを指摘しました。
動画は、イランの核問題、ロシアと西側諸国の間の代理戦争、そしてヨーロッパの安全保障アーキテクチャの現状について、ディーゼン教授の見解を深く掘り下げており、これらの重要な地政学的トピックに関する重要な洞察を提供しています。
https://youtu.be/cisMO31dbSY
https://www.youtube.com/watch?v=cisMO31dbSY
❻ダグラス・マクレガー大佐 「ロシアがキエフに進軍するまでウクライナ・ロシア戦争は終わらない」 (2025年6月15日)
ウクライナ紛争の深層:ロシア、ゼレンスキー、そしてNATOの視点
ロシア・ウクライナ紛争の複雑な側面、主要な関係者の動機、そして西側同盟が直面する課題について深く掘り下げ内容を分析します。
ロシアの「勝利」の定義とウクライナ紛争
ロシアにとっての「勝利」が、ウクライナのゼレンスキー政権と「犯罪者集団」の排除を意味すると解説されています。
コメンテーターは、ゼレンスキー氏が交渉に応じる意思がないため、ロシア軍が介入して政権を排除する必要があると考えています。
ロシアの元大統領メドベージェフ氏の過去の発言からは、イスタンブールでの交渉が「妥協による和平」のためではなく、「迅速な勝利とネオナチ政府の完全な破壊」のためであったことが示唆されています。
これは、ロシアがゼレンスキー政権を存続させる形での交渉を望んでいないことを明確にしています。2022年4月の交渉ではより「合理的」な条件(限定的な領土獲得とNATO非加盟の保証など)が提示されていましたが、現在の条件は「無条件降伏」を意味するとも指摘されています。
最終的に、ロシアがキエフに侵攻し、現在のウクライナ政府を排除する以外に戦争を終わらせる方法はない、という結論が動画内で示されています。
ゼレンスキー氏の姿勢とトランプ氏への批判
ゼレンスキー氏は、トランプ元大統領の意見を「個人的な意見」とみなし、ロシアのメンタリティをアメリカ人よりもよく理解していると主張しています。
彼はプーチン大統領が戦争を止めたいと思っていないと確信しているとも述べています。
ゼレンスキー氏は以前にもトランプ氏を直接批判しており、プーチンの操り人形であると示唆したり、ロシアの偽情報の影響を受けていると発言したりしています。
西側指導者の動機とメディア批判
コメンテーターは、マッコール下院議員やマーサ・ラディッツ氏のような政治家やメディア関係者が、個人的な経済的利益のために行動していると示唆しています。
彼らは、ワシントンやメディア界の人間は皆誰かの「給料」をもらっており、真実を語っているわけではないと主張しています。
NATOの「現実からの乖離」と弱点
NATOのマーク・ルッテ氏は、現在の安全保障環境が「数十年来最も危険」であり、全面的な「戦時態勢」への転換が必要だと述べています。
しかし、コメンテーターは、西側の防衛産業基盤を強化するには少なくとも10年はかかると指摘し、ルッテ氏の発言は現実離れしていると批判しています。
NATOが「虚飾」であり、「ガラスの家」のように簡単に崩れる可能性があると見られています。
NATOがこれまで真に挑戦されたことがなく、バルカン半島での介入も、対戦相手が合意するまで直接的な軍事衝突を避けてきたことを例に挙げて、その脆弱性が指摘されています。
さらに、西側社会の人々は戦争に興味がなく、志願兵もほとんどいないため、NATOの軍事力が不足しているとも述べられています。
歴史的・文化的背景の重要性
リンゼイ・グラム上院議員とリチャード・ブルーメンソール上院議員がキエフの修道院の地下にある洞窟の絵画の前で会談した際、コメンテーターは、ウクライナ側がその絵画を背景に置くことで「我々は諦める前に全てを破壊する」というメッセージをロシアに送っていたと推測しています。
これは、ロシアの正教会とウクライナの歴史におけるその場所の重要性を理解している人々には明確なメッセージだったと説明されています。
アメリカの外交政策と信頼性の欠如
コメンメンテーターは、トランプ元大統領が情報ブリーフィングにほとんど参加しておらず、ツポレフ爆撃機への攻撃の詳細を把握していなかった可能性があると指摘しています。
また、グラム氏やブルーメンソール氏のような議会の議員が、大統領の権限なしに外交政策を遂行しているように見えることを批判し、ロシアがアメリカの指導者を信用できない状況にあると述べています。
動画は、ウクライナ紛争が持つ多面的な課題と、その背景にある政治的・歴史的要因を深く考察しています。
https://youtu.be/IZmRgEkdpVA
https://www.youtube.com/watch?v=IZmRgEkdpVA
❼ロシア経済が奇跡の回復 戦争資金を絶つために欧米は一致団結を(Forbes, 2025年6月16日)
「スパイダーウェブ」と名付けられたウクライナの大規模な無人機(ドローン)作戦が1日に実施され、ロシア国内の戦略爆撃機資産が損害を受けた。ウクライナ軍はさらに、ロシアが2014年にウクライナ南部クリミア半島を併合後、同半島とロシア本土を結ぶために多額の資金を投じて建設したケルチ海峡橋をも攻撃し、実質的にも印象の上でもロシアに大きな打撃を与えた。
他方で、ロシア経済は徐々に改善し、ウクライナに対する攻勢を強めており、ロシア大統領府(クレムリン)はドナルド・トランプ米大統領の仲介による停戦交渉をも拒否するに至った。国内の経済低迷を脱し、戦場で勝利を収めることに全力を尽くすロシアのウラジーミル・プーチン大統領にとって、景気の改善は朗報だ。
天然資源の輸出から得た資金はロシアの軍資金となっている。すなわち今こそ欧米は協力し、クレムリンの蛇口を閉めるべき時だ。戦争を継続するために必要な資金をクレムリンから奪うことでのみ、戦場に平和を取り戻すことができる。
しかし残念ながら、事態はまったく逆の方向に進んでいる。欧米の制裁にもかかわらず、天然ガスパイプライン「トルコストリーム」を通じたロシア産天然ガスの欧州向け輸出は4~5月にかけて10%以上増加したのだ。これにより、2023年には70億ドル(約1兆円)の損失を計上していたロシア国営天然ガス企業ガスプロムは今年第1四半期、予想外の84億ドル(約1兆2000億円)の利益を上げた。
欧州連合(EU)は10日、ロシア産原油の価格上限を現行の1バレル60ドル(約8600円)から45ドル(約6500円)に引き下げるほか、第三国によるロシアの銀行の利用を禁止し、EUの事業者によるロシアの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」の利用を禁止するなど、一連の追加制裁を検討していると発表した。EU加盟国がこの追加制裁案を承認すれば確かに影響が出るだろうが、それが保証されているわけではない。実際、ハンガリーとスロバキアの政権はロシア寄りで、EUによる対ロシア制裁に真っ向から反対している。だが、米国とEUが協力して対ロシア制裁の強化に踏み切った場合、形勢を一変させる可能性があり、最終的にはクレムリンに交渉を迫ることになるだろう。
一方、大西洋の反対側では、米政府が、ロシアがエネルギー産業から利益を得られないよう動いている。トランプ大統領に近い米共和党のリンゼー・グラム上院議員が提出した2025年対ロシア制裁法案には、米企業によるロシアのエネルギー産業への投資や輸出を禁止し、米国に輸入されるロシアの製品やサービスに500%の関税を課すとともに、ロシア産の原油、ウラン、天然ガス、石油製品、石油化学製品を販売、供給、輸送、購入する国にも同じ税率の関税を課す措置が含まれている。これらの措置は、ロシアの輸出力を弱めると同時に、欧州諸国を含むロシア産天然資源の輸入停止をためらう国々が積極的な対策を取らない場合に圧力をかけるという2つの目的を果たすだろう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/15f94c2b0bbbc12e534efae665577c9de18c27ba/images/000
❽ウクライナ用を中東に振り向け 米国防長官「防衛環境変わった」(2025年6月16日)
【キーウ共同】ヘグセス米国防長官は15日までにFOXニュースの番組で、ロシアの侵攻を受けるウクライナに送る予定だった対無人機関連の防衛支援を中東に振り向けたことを認めた。「防衛を取り巻く環境が変わった」と理由を説明し、米議会でも証言したことを明かした。中東情勢の緊張がウクライナにも影響を与えている。
ヘグセス氏は中東にいる米国民を守るため、あらゆる資源を活用する姿勢を強調した。
支援の詳細は不明だが、ウクライナのゼレンスキー大統領はこれに先立つ米ABCテレビのインタビューで、バイデン前米政権下で提供の決まった対無人機用のミサイル2万発が中東向けに転用されると明らかにした。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9cad81312eee29be2691843c703a2551d3ff22c8/images/000
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1940年、東京生まれ。1944~49年、福島県で疎開生活。東大工学部原子力工学科第1期生。工学博士。東京大学医学部助手、東京医科大学客員助教授を経て、1986年、立命館大学経済学部教授、88年国際関係学部教授。1995年、同大学国際平和ミュージアム館長。2008年より、立命館大学国際平和ミュージアム・終身名誉館長。現在、立命館大学名誉教授。専門は放射線防護学、平和学。2011年、定年とともに、「安斎科学・平和事務所」(Anzai Science & Peace Office, ASAP)を立ち上げ、以来、2022年4月までに福島原発事故について99回の調査・相談・学習活動。International Network of Museums for Peace(平和のための博物館国相ネットワーク)のジェネラル・コ^ディ ネータを務めた後、現在は、名誉ジェネラル・コーディネータ。日本の「平和のための博物館市民ネットワーク」代表。日本平和学会・理事。ノーモアヒロシマ・ナガサキ記憶遺産を継承する会・副代表。2021年3月11日、福島県双葉郡浪江町の古刹・宝鏡寺境内に第30世住職・早川篤雄氏と連名で「原発悔恨・伝言の碑」を建立するとともに、隣接して、平和博物館「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館」を開設。マジックを趣味とし、東大時代は奇術愛好会第3代会長。「国境なき手品師団」(Magicians without Borders)名誉会員。Japan Skeptics(超自然現象を科学的・批判的に究明する会)会長を務め、現在名誉会員。NHK『だます心だまされる心」(全8回)、『日曜美術館』(だまし絵)、日本テレビ『世界一受けたい授業』などに出演。2003年、ベトナム政府より「文化情報事業功労者記章」受章。2011年、「第22回久保医療文化賞」、韓国ノグンリ国際平和財団「第4回人権賞」、2013年、日本平和学会「第4回平和賞」、2021年、ウィーン・ユネスコ・クラブ「地球市民賞」などを受賞。著書は『人はなぜ騙されるのか』(朝日新聞)、『だます心だまされる心』(岩波書店)、『からだのなかの放射能』(合同出版)、『語りつごうヒロシマ・ナガサキ』(新日本出版、全5巻)など100数十点あるが、最近著に『核なき時代を生きる君たちへ━核不拡散条約50年と核兵器禁止条約』(2021年3月1日)、『私の反原発人生と「福島プロジェクト」の足跡』(2021年3月11日)、『戦争と科学者─知的探求心と非人道性の葛藤』(2022年4月1日、いずれも、かもがわ出版)など。