
【櫻井ジャーナル】2025.06.19XML: ブッシュ・ジュニア、オバマ、バイデンと同じ帝国主義の道を進み始めたトランプ
国際政治ドナルド・トランプ大統領がジョー・バイデン政権化している。ジョージ・W・ブッシュ化、バラク・オバマ化とも言えるだろう。世界制覇戦争を推進しているということだが、これはロシアや中国との戦争へ突き進んでいることを意味する。広く言われているように、アメリカの選挙は無意味だ。
19世紀以降、ヨーロッパ諸国、アメリカ、そして日本は帝国主義国として生きてきた。見にまとう服装を変えてはきたが、中身は帝国主義のままである。帝国主義国が突如、民主主義体制に変わるなどということはありえない。長い時間をかけて民主主義的な思想が培われていなければ、そうした思想が噴出することはない。
逆に、帝国主義的な思想が噴出することもある。その切っ掛けになったのは、1991年12月のソ連消滅だ。ソ連というライバルが消滅したことで西側諸国は民主主義の衣を脱ぎ捨て、帝国主義という本性を見せることになった。そうした動きを扇動したのがシオニストの一派であるネオコンにほかならない。
アメリカの外交や安全保障をコントロールしていたネオコンは1992年2月、アメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇計画を作成した。リチャード・チェイニー国防長官の下、国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツが中心になって書き上げられたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。アメリカのライバルだったソ連が消滅した後、ロシアを含む旧ソ連圏はアメリカの支配下に入り、自分たちに歯向かう国は存在しなくなったという前提でドクトリンは作られた。
そのプロジェクトが本格的に指導したのは2001年9月11日。この日、ニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎が攻撃されている。この出来事を利用してジョージ・W・ブッシュ政権はイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒したが、イラクに親イスラエル体制を築くという当初の目的は達成できなかった。
正規軍の投入で失敗したことを反省したのか、オバマ大統領は師匠に当たるズビグネフ・ブレジンスキーが編み出した方法を使う。1970年代にブレジンスキーはムスリム同胞団やワッハーブ派を主な戦闘員とする武装集団を編成してソ連と戦わせたが、この時にCIAが訓練した戦闘員のデータベースを作成、それが「アル・カイダ」。そのデータベースに基づいてアル・カイダ系武装集団が作り出される。その手法をオバマは採用したのだ。リビアやシリアはこの手口で破壊された。
ネオコンはヒラリー・クリントンをオバマの後継者に決めていたが、トランプに負けてしまう。ロシアを軍事的に制圧するという戦略をヒラリーは引き継ぐと見られていた。
2015年5月26日の時点で民主党幹部たちがヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆する電子メールが存在、同年6月11日から14日にかけてオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合にヒラリーの旧友であるジム・メッシナが参加していたことから欧米支配層はオバマの次はヒラリーを大統領すると決めたと推測されていたのだ。
ところが2016年2月10日にヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問してウラジミル・プーチン露大統領と会談。その後、流れが変わったとする噂が流れ始めた。2014年3月5日付けワシントンポスト紙でキッシンジャーはウクライナにおけるネオコンの政策は危険だと警鐘を鳴らしていた。ウクライナは複雑な歴史と多言語多文化他宗教の国であり、こうした国で一方が他方を支配しようとすれば内戦、または分裂につながると指摘している。
そして2016年8月9日、チャーリー・ローズはマイク・モレルをインタビューした映像を公開した。モレルはクリントンを支援するためにCIA副長官を辞めた人物で、ロシア人やイラン人に代償を払わせるべきだと主張している。
それに対し、モレルはローズからロシア人とイラン人を殺すという意味かと問われ、その通りだと答えた。「わからないように」と付け加えたが、殺すといったことは消えない。
その発言の直後、2016年9月6日にモスクワでウラジミル・プーチン露大統領の運転手を40年にわたって務めた人物の運転する公用車に暴走車が衝突、その運転手は死亡したが、さらにロシア政府の幹部が変死している。
例えば、2016年11月8日にニューヨークのロシア領事館で副領事の死体が発見され、12月19日にはトルコのアンカラでロシア大使が射殺されている。その翌日、12月20日にはロシア外務省ラテン・アメリカ局の幹部外交官が射殺され、12月29日にはKGB/FSBの元幹部の死体が自動車の中で発見された。2017年1月9日にはギリシャのアパートでロシア領事が死亡、1月26日にはインドでロシア大使が心臓発作で死亡、そして2月20日にはロシアの国連大使だったビタリー・チュルキンが心臓発作で急死した。
オバマ政権は2014年2月にキエフでネオ・ナチを使ったクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒し、ロシアとの戦争を始めたが、その政権で副大統領を務めたバイデンは大統領に就任して間もない2021年3月16日、ABCニュースの番組に登場し、ジョージ・ステファノプロスからウラジミル・プーチン露大統領は人殺しだと考えるかと問われ、「その通り」と答えている。ロシアとの戦争を継承したのだ。
こうした狂気の政策を批判することで支持されたトランプだが、その背後にはシェルドン・アデルソンとミリアム・アデルソンの夫妻のようなシオニストやシリコンバレーの富豪たちの資金が存在した。こうした富豪はネオコンが怒りを引き起こしてきたことを懸念したと言われている。今、こうしたエネルギーを革命へと導くようの集団は存在しないだろうが、富豪たちはトランプを利用して庶民の怒りが暴力的な方向へ流れないように誘導しようと試みたのだろう。
しかし、トランプも人びとの怒りを抑えきれなくなり、結局、ブッシュ・ジュニア、オバマ、バイデンらと同じ道を歩かざるをえなくなっているようだ。ニュアンスの違いはあるものの、皆、同じ帝国主義者に過ぎない。
情報機関の報告として、イランは核兵器を開発していないと3月に述べたトルシー・ギャバード情報長官は現在、世界がかつてないほど核戦争による破滅に近づいていると警告した。そうした彼女の発言をトランプ大統領は気にしないとしている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の言うことを気にするということなのだろう。
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のテーマは「 ブッシュ・ジュニア、オバマ、バイデンと同じ帝国主義の道を進み始めたトランプ 」(2025.06.19ML)
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