【特集】新型コロナ&ワクチン問題の真実と背景

中国の社会と経済:陰の米中競争―日本に欠けている視点と論点の紹介―(上)

朱建栄

この間の最大の国際問題はウクライナ戦争であろう。ロシアによる越境侵攻で始まった戦争は4か月も続いたが、まだ出口が見えていない。一方、それが「中国」(「ロシアと同類」)、「台湾」(同じような「侵攻」があるかも)にリンクされ、中国人の多くは「躺槍」した(とばっちりを食う)と自嘲している。

「ウクライナ」をめぐる真っ二つに分かれた報道や分析、予測が続き、「食傷」気味になる中、安倍元首相の銃撃死亡事件が起き、まことに驚いた。お悔やみ申し上げます。何度もテレビ討論番組で出会い、スタジオでも厳重に警備されていたのを見て、日本の政治外交におけるその重みを知っているだけに、人生や世界の軌道が明日どうなるか分からない「無常」さを感じた。

日本政治の行方は岸田さんに暫く任せよう。ウクライナ問題については関連の記事や分析を山ほど集めたが、どうせドラマチックな変化や進展はないから、それも次回に譲りたい。今回は中国の社会と経済を中心に取り上げ、併せて米中経済「競争」の最新の動向も紹介したい。

一、コロナ対応に手こずる中国

この2年間、中国はコロナ対策の優等生であった。しかし、オミクロン株になってからは、重症者数・死者数が大幅に減少したことに伴い、大半の国は「ウィズコロナ」(共存)路線に切り替えた。それに対し、中国は「ゼロコロナ」を堅持している。だがそれは中国に大きな試練を突き付けている。

故郷の上海は、中国のなかでもコロナ対策の優等生だったが、2か月以上も事実上の「ロックダウン」を行ったことで、経済・雇用・生活面で大きな打撃を受けただけでなく、精神面や他の地域との関係、さらに社会あるいは政治にも大きな影響を及ぼした。

海外では、上海市民の不満、さらににこれらの不満が抑え込まれた状況が多く伝えられており、以下のドイツ放送の中文サイトの記事はその代表的な記事である。

中国动态清零 网民抱怨:越清越不灵 德国之声DW 220402

それより、中国国内の声と反応を紹介したい。上海の人はプライドが高いが、今回の件で深刻な挫折感や不満を経験している。中国国内の多くの地域から「上海人は受け入れ禁止」にされてプライドが傷つけられただけでなく、北朝鮮からも笑われているとの漫画がSNSで拡散された。

金正恩書記が上海を望遠鏡で見て喜ぶ漫画。

 

横の将軍の言葉:「一年も立たないうちに、上海は我々より貧しくなるぜ」。

この自嘲の漫画はそのやるせない気持ち、ある種の苛立ち、憤慨の心境を現している。

「ゼロコロナ」政策そのものを揶揄する書き込みも拡散されている。

 

「人類の四大(不可能な)プロジェクト」漫画。

解説:この中で挙げた前の三つとも、中国人が熟知する「不可能」「やっても無駄」を意味する神話の話。それに並べて四つ目に「ゼロコロナ」が挙げられた。

上海対策の失敗に関する辛辣な批判もSNS微信を通じて転送された。

 

書き込み220628

大上海保卫战应该由上海市民来写。上海市民从一开始相信市政府逐渐对政府的失望。在整个疫情过程中是我们上海市民从邻里互助,到靠高价团购生活用品,从一开始政府保供的缺位,到保供量不够三口之家嚼谷。从基础病无处投医直接导致死亡,到即便居委会开了出门就医证,到到了医院依然得不到入院就治。凄惨的求救的哭声,换来的是医院冷漠的无视。硬隔离使消防车无法及时赶到火灾现场救火。从封城前,老人密接者可以居家隔离到封城后再老的老人也必须去隔离点隔离,造成年迈老人得不到应有的照顾而死於非命……。这一笔一笔的账,上海市政府你给算算,你哪点尽责了。

最让人无语的是从3月28日到5月31日,上海明明是世界上最严厉的集中营式的足不出戶的封城,现如今,上海市政府却说市政府没下过封城令,说这话不怕雷劈吗?动态清零的尚方宝剑悬挂在基层组织头上,逼得基层组织防疫层层加码,基层干部的乌纱帽是保住了,但我们老百姓的权利一而再再而三地被严重侵犯。

中央防疫政策自相矛盾,对国家各部门下发的自相矛盾的防疫政策,上海市政府你们在干什么?你们有没有向中央为上海市民请命?你们不是上海市民的政府,你们是在上海吃瓜的瓜客。上海保卫战的总结上海市政府没资格写,因为,你们不但没有保护好上海市民,相反你们毫无科学依据地让市民频繁地做核酸,掏空了上海市民的医保钱,任由利益集团胡作非为在核酸检测中大发横财。在这场保卫战中,是我们上海市民力排万难保护着自己。在这次大疫情中,上海市政府你们啥都不是。

 

要旨:

1.上海市民はこの間、裏切られっ放しだった。高い生活用品と食品を買わされ、病院に自由に行けず、濃厚接触者とされる老人も隔離スポットに強制的に収容された‥。

2.世界でも最も厳しい制限・隔離だったのに、市当局は「ロックダウン」を指示したことがないと責任逃れをしている。天罰を受ける嘘ではないか。

3.中国政府の政策も、各部門に下された指示も矛盾だらけだが、上海市当局は実情と住民の声を北京に申し入れたか。それどころか頻繁にPCR検査などをさせ、医療保険の費用を無駄にし、利益集団に暴利を稼がせた。今回のコロナとの闘いでは市民自身が万難を排して自己防衛策をしただけで、市当局は何もしてくれなかった。

以上の中国語の書き込みはもっと憤慨と細部を示しているが、全訳すると2頁に及ぶので、ご自身で、翻訳エンジンにかけて読んでみてください。自分は無料で8割以上の正確さを保つ「子牛」アプリ(https://niutrans.com/trans?type=text)をいつも使っているが、試してみてください。

ロックダウン中の上海政府の報道・与論対策の失敗についても、元区党書記の肩書で実名が挙げられる人(未確認)の厳しい分析と批判もSNSにあがっていた。

 

抗疫中的宣传工作为什么如此失败?220419

原虹口区委书记孙卫国认为:

宣传舆论工作者也奔波在抗疫第一线,同样競业、疲惫、焦虑,也有怨恨、委屈和叹息。可是,群众依然不买帐、不相信,甚至吐槽、讽刺。抗疫中的宣传效果与建党100周年无法比拟。究其原因:

一是领导层的决策朝三暮四、朝令夕改,一步错步步乱,导致丧失公信力;

二是,专家的指导各持己见,民众难以信服,无所适从;

三是,对民情、民意、民愤和民怨置若罔闻、南辕北辙,甚至粉饰太平;

四是,传播正能量的宣传找错切入点,民众更加反感,大型电视宣传活动流产;

五是,不敢揭露、批评抗疫中不良社会倾向,反而引起民众不满;

六是,与社会信息严重不对衬,认为只要辟谣、删贴就会保持社会稳定,然而不少谣言却是真实的;

七是,持续不断的新闻发布会,领导藏而不露,空话、套话,百姓已经厌烦。

 

こちらもご自身で翻訳して読んでみてください。

2022年6月に入って、上海は次第に「日常」を取り戻しているものの、不満な気持ちはくすぶり続けている。ロックダウンの解除後、吉林省長春市の中国共産党と政府は市民に「謝罪文」を出したのに対し、上海市幹部は市民に「感謝状」を出した。

それぞれの市の対応を比較して、ある上海市民が同市当局に対する容赦のない批判をSNSで行った。以下の書き込みもネット上で出回った。

上海市と長春市のリーダーの比較に関する書き込み(2022年6月3日)

(邦訳)

長春市幹部は市民に謝罪し、コロナ期間中に露呈した問題について謙虚に自己批判し、不足を総括した。こうしたリーダーは少なくとも自分を正し、今後の挑戦に立ち向かう勇気と能力を見せた。上海市はどうか?民間人を部外者・使用人扱いし、上からの目線で適当に褒めて感謝する言葉をかけ、民衆のやむを得ない自助努力を当然とし、失敗や乱政が民衆に与えた傷害と上海の損失を全く言及せず、依然として自分を主として傲慢に発言し、自己反省、経験の総括、強力な懲戒が微塵も見られない。このような官僚が我々と一緒に挑戦を迎え、共に困難を克服することを期待できるものか?

 

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朱建栄 朱建栄

東洋学園大学 教授

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