
【櫻井ジャーナル】2025.07.18XML: ダマスカスをイスラエル軍が空爆、トルコを後ろ盾とする現シリア政権に揺さぶり
国際政治イスラエル空軍は7月16日、シリアの首都ダマスカスにある同国軍の司令部と大統領官邸付近のほか、ISNAテレビ局を攻撃した。バシャール・アル・アサド政権が倒されてからシリアではアラウィー派だけでなくシーア派やキリスト教徒を含む少数派が殺戮の対象になっていたが、ここにきてドゥルーズ派の武装勢力とアフマド・アル-シャラア(アブ・モハメド・アル-ジュラニ)暫定政権の部隊が軍事衝突している。
アル-シャラアはダーイッシュ(ISIS、IS、イスラム国などとも表記)の指導者だった人物で、アサド政権を倒した当時はHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャム)を率いていた。このHTSはアル・カイダ系のアル・ヌスラ戦線を改名した組織で、その前身はAQI(イラクのアル・カイダ)だ。HTS時代、彼はカタールから資金を、トルコから軍事的な支援を、アメリカからは情報機関の支援を、そしてイスラエルからはプロパガンダの支援を受けていた。そのイスラエルがアル-シャラア政権を攻撃し始めたのだ。
2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された直後、ジョージ・W・ブッシュ大統領は「アル・カイダが実行した」と主張、そのアル・カイダとイラクのサダム・フセイン政権を結びつけることどえイラクへの先制攻撃を正当化した。
フセイン政権がアル・カイダ系武装集団を暴力的に弾圧していたことは有名で、アメリカ政府が主張していた「大量破壊兵器」のはなしも嘘だということも明確だったが、西側の有力メディアはブッシュ・ジュニア政権の「御伽話」を世界に振り撒き、それを信じた人もいたようだ。
そもそも、「アル・カイダ」なる組織は存在しない。イギリスの外相を1997年5月から2001年6月まで務めたロビン・クックが05年7月に書いているように、「アル・カイダ」とはCIAの訓練を受けた「ムジャヒディン」の登録リストを意味し、プロジェクトが決まると、そのリストから戦闘員を選ぶだけだ。
アル-シャラア政権はトルコとの関係が強く、イスラエル政府はドゥルーズ派を利用してトルコの影響力を弱めようとしていると見られている。イスラエルはゴラン高原を不法占拠してきたが、隣接するシリア南西部に軍事侵攻、支配地域を広げようとしている。アル-シャラアはこれまでイスラエルを攻撃せず、パレスチナでの住民虐殺も容認してきたが、ここにきて自分たちもイスラエル/欧米帝国主義国に攻撃されるようになった。
ウラジーミル・ジャボチンスキーがはじめた「修正主義シオニスト世界連合」はユーフラテス川とナイル川に挟まれた地域をシオニストが支配するという「大イスラエル主義」を掲げてきたが、アメリカ時代のジャボチンスキーが秘書にしていたベンシオン・ネタニヤフの息子で現イスラエル首相のベンヤミン・ネタニヤフもこの構想(妄想)を抱いている。
第1次世界大戦当時、イギリスやフランスはオスマン帝国を解体して中東全域を支配しようと目論み、1916年にはイギリスの外交官だったマーク・サイクスとフランスの外交官だったジョルジュ・ピコが秘密協定を結んでいる。いわゆる「サイクス-ピコ協定」だ。
おそらくイギリスが支配の拠点として作り上げることになるのがイスラエルであり、そのためのバルフォア宣言。フサイン-マクマホン協定はオスマン帝国を解体するための出まかせのように思える。
そして現在、アメリカ、イギリス、フランスはトルコを抑え込み、イスラエルを利用して中東全域を支配するつもりなのかもしれない。イランの現体制が存続することも彼らは容認できないはずだ。
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