
【櫻井ジャーナル】2025.07.21XML:東アジアにおける軍事的な緊張を高めるアメリカ軍
国際政治海上自衛隊の「あぶくま」型護衛艦(駆逐艦)をフィリッピン海軍へ売却する話が進んでいるようだ。8月にはフィリピンから専門家チームが日本へ派遣されるという。東アジアにおける日本の軍事的な存在感が高まっている。
5月15日にエグザビエル・ブランソン在韓米軍司令官は、対朝鮮だけでなく中国を牽制するためにも在韓米軍の役割を拡大する必要があると主張、韓国は「日本と中国本土の間に浮かぶ島、または固定された空母」だと表現している。中国やロシアとの関係を修復しようとしている韓国政府に対する圧力も強めるつもりなのだろう。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は5月22日にドナルド・トランプ政権が韓国から約4500人のアメリカ軍を撤退させ、グアムを含むインド太平洋地域の他の地域に移転させる可能性を検討していると伝えているが、5月23日には国防総省のショーン・パーネル報道官は、アメリカが在韓米軍の削減を検討しているという報道を「事実無根」と否定していた。アメリカにとって台湾も「不沈空母」だ。
中曽根康弘は1983年1月にアメリカを訪問、その際にワシントン・ポスト紙の編集者や記者たちと朝食をとっている。その席上、彼はソ連のバックファイア爆撃機の侵入を防ぐため、日本は「不沈空母」になるべきだと語ったと報道されている。
中曽根は発言を否定しようとしたものの、インタビューが録音されていたことを知ると、「不沈空母」ではなくロシア機を阻止する「大きな空母」だと語ったのだと主張したのだが、このふたつの表現に本質的な差はない。日本列島はアメリカ軍がロシア軍を攻撃するための軍事拠点だと中曽根は認めたのである。
中曽根は首脳会談で日本周辺の「4海峡を完全にコントロールし、有事にソ連の潜水艦を日本海に閉じ込める」、また「ソ連のバックファイアー(爆撃機)の日本列島浸透を許さない」と発言。また「シーレーン確保」も口にしたが、要するに制海権の確保だ。
アメリカは第2次世界大戦後、日本列島から琉球諸島を経て台湾に至る弧状列島はアメリカにとってユーラシア大陸の東岸を侵略する拠点である。
アメリカのSAC(戦略空軍総司令部)は1956年に核攻撃計画を作成したが、それによると、ソ連、中国、そして東ヨーロッパの最重要目標に対しては水爆が使われ、ソ連圏の大都市、つまり人口密集地帯に原爆を投下することになっていた。
攻撃目標とされた大都市にはモスクワ、レニングラード(現在のサンクトペテルブルク)、タリン(現在はエストニア)、キエフ(現在のウクライナ)といったソ連の都市だけでなく、ポーランドのワルシャワ、東ドイツの東ベルリン、チェコスロバキアのプラハ、ルーマニアのブカレスト、ブルガリアのソフィア、中国の北京が含まれている。
そうした攻撃を実行する出撃拠点のひとつが沖縄。その沖縄では1950年代に「銃剣とブルドーザー」で土地が強制接収され、軍事基地化が推し進められた。1953年4月に公布/施行された布令109号「土地収用令」に基づいて武装米兵が暴力的に土地を接収、55年の段階で沖縄本島の面積の約13%が軍用地になっている。沖縄の軍事基地化はアメリカの先制核攻撃計画と結びつていた。
アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が発表した報告書によると、GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画を彼らは持っている。
専守防衛の建前と憲法第9条の制約がある日本の場合、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたとされていた。自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させている。その間、韓国へTHAADを持ち込んだ。
南西諸島にミサイル発射基地が建設されつつあった2017年11月、アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更した。
ソ連が消滅した1991年12月、ネオコンを含む西側の好戦派はアメリカが唯一の超大国になり、好き勝手なことができる時代になったと考えたようで、92年2月には国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画が作成された。作成の中心は国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツだったことから、このDPG草案は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。
そのドクトリンには、ドイツと日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に統合し、民主的な「平和地帯」を創設すると書かれている。ドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込み、アメリカの支配地域を作り出すということだ。
また、彼らが目指す第一の目的は、旧ソ連の領土内であろうとなかろうと、かつてソ連がもたらした脅威と同程度の脅威をもたらす新たなライバルが再び出現するのを防ぐことだとしている。西ヨーロッパ、東アジア、西南アジアが成長することを許さないということだが、東アジアには中国だけでなく日本も含まれている。1990年代以降の日本を見れば、その意味がわかる。
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のテーマは「東アジアにおける軍事的な緊張を高めるアメリカ軍 」(2025.07.21ML)
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