【特集】ウクライナ危機の本質と背景

日本のウクライナTV報道にはくれぐれも要注意!

安斎育郎

毎日伝えられているウクライナ戦争の映像を見ていると「ロシアはひどい。プーチンは恥を知れ!」「ウクライナ人は可哀そうだ。ゼレンスキー頑張れ!」という気分を誘発されます。

しかし、事はそう簡単ではありません。何しろ、伝えられているニュース報道そのものが検閲によって歪曲され、真実とは真逆の闇へ誘導する意図的な操作が行われている事実がいろいろと明るみに出されているからです。先日お知らせした「ブチャの大虐殺」も、実はウクライナ軍の攻撃によってもたらされた惨状だったということがフランス憲兵隊法医学チームの調査で明らかにされ、国連をも巻き込んでしまった最も悪質なウソだったことが判明しました。

それでも、知人の中には、「国連をだますなどということが出来るだろうか?」と疑問を投げかける人もいなくはありませんが、事実だからどうしようもありません。国連総会は2022年4月7日に開かれた緊急特別会合で、 「ロシアの国連人権理事会における理事国資格を停止する決議案」をアメリカ・イギリス・ウクライナ・欧州連合(EU)加盟国・日本など93カ国の賛成 、ロシア・中国・北朝鮮・シリア・ベラルーシなど24カ国 の反対、インド・エジプト・南アフリカなど58カ国の棄権 、「戦略的コーヒー・ブレーク」 18か国で可決しました 。

採決に先立って演説したウクライナのセルヒー・キスリツァ国連大使は、首都キーウ近郊のブチャなどで 「 ロシア軍が民間人を殺害した疑い 」 に触れ、ロシアが「恐ろしい」虐待を行 な っていると非難しました。

衛星画像まで使った会議の様子に、 私は「バカに手回しがいいなあ」と感じましたが、ロシアのゲンナジー・クズミン国連次席大使が「決議は政治的なもの」だと批判したものの、日本でも、「“ブチャ の大虐殺は意図的なものでした。ロシア人はできるだけ多くのウクライナ人を排除するつもりです。

私たちは彼らを止めて追い出さなければならない とウクライナのドミトロ・クレバ外相は、プーチン軍によって処刑された民間人のイメージを共有した冷静なメッセージで書いた」 などと伝えられ、 ロシア軍の非人道的な戦争行為であることを印象づけられました。確認するすべを持たない私たちは、ついついこうした映像付きのテレビ報道の解釈に引きずられがちです。

ウクライナの元社会党のリーダーで、最高議会議員のイリャ・キヴァ氏は、「ブチャの悲劇は演出されたものであり、事前にウクライナ保安庁(SBU)とM16(イギリス秘密情報部)によって計画されたものだった」と述べました。

「捏造グループ」は あの日の早朝に現地に到着し、エリアを隔離して死体を置いたのだと 言います。キヴァ氏は、「ゼレンスキーのバカもこのために帰ってきて、この悲劇に対する国際的関心 を高め た」と付け加え 、「誰も理解しようとしないが、今のウクライナ政府は脚本家とビデオ編集者で構成されているんだ」とも述べました。

一方、ドネツク州マリウポリのアゾフスターリ鉄工所に多数の市民とともに立てこもるウクライナ軍のアゾフ連隊についても、「祖国防衛のために市民を守りながら徹底抗戦する英雄的部隊」のような印象も誘発されましたが、実態とは遠くかけ離れています。下記URL で人々の証言を見て貰えば、実際にはアゾフ連隊が ウクライナ市民に銃を向け 、市民たちが「人道の回廊」を通って逃げるのを阻止し、時には 250 人近い市民を建物の外に整列させて「人間の盾」にし、アゾフ連隊 がその背後の建物から銃撃するようなことまで起きていました。

ロシアの非人道的な仕業として日本でテレビ放映された映像にはウクライナ軍による破壊映像が少なくないようです。クラマトルスタで何十人もの市民に向けて発射されたトーチカUも、ウクライナ軍の仕業だったと証言されています。 「ブチャの悲劇」流に事実そのものを捏造し、そのすべてをロシアのせいにする作戦のようですが、だんだん現地入りした外国人記者や人道支援関係者などのドキュメンタリー映像や証言 によ って真実が明らかになりつつあります。

https://youtu.be/CaO0VwTkwEc(削除されている)

こうした人々の証言映像はとても大切ですが、上の証言映像でもロシアのドミトリー・ポリャンスキー国連次席大使が提起しているように、西側 報道の中には市民の証言の一部を切り取って都合のいいように編集するようなことも行われているようなので、私たちには非常に厄介な事態です。

前にお送りしたアンヌ・ロール・ボネルさんのドキュメンタリー『ドンバス2016 』は2014年のマイダン・クーデターの後に大統領になったポロシェンコ治世下でウクライナ軍がドンバス地方のロシア系住民に加えた攻撃の惨状を描いたものですが、最後の方で一人の住民が「ポロシェンコ野郎なんか汚物まみれのアメリカで暮らせばいい。オバマのケツの穴でも舐めてりゃいい」というかなり下品な表現だが怒りの程度が伝わる証言などには、余程努力しないとたどり着けないですね、この国では。

まあ、とにかく「鵜のみ禁止」です。

(「2022年5月~6 月ウクライナ戦争論集」から転載)

 

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安斎育郎 安斎育郎

1940年、東京生まれ。1944~49年、福島県で疎開生活。東大工学部原子力工学科第1期生。工学博士。東京大学医学部助手、東京医科大学客員助教授を経て、1986年、立命館大学経済学部教授、88年国際関係学部教授。1995年、同大学国際平和ミュージアム館長。2008年より、立命館大学国際平和ミュージアム・終身名誉館長。現在、立命館大学名誉教授。専門は放射線防護学、平和学。2011年、定年とともに、「安斎科学・平和事務所」(Anzai Science & Peace Office, ASAP)を立ち上げ、以来、2022年4月までに福島原発事故について99回の調査・相談・学習活動。International Network of Museums for Peace(平和のための博物館国相ネットワーク)のジェネラル・コ^ディ ネータを務めた後、現在は、名誉ジェネラル・コーディネータ。日本の「平和のための博物館市民ネットワーク」代表。日本平和学会・理事。ノーモアヒロシマ・ナガサキ記憶遺産を継承する会・副代表。2021年3月11日、福島県双葉郡浪江町の古刹・宝鏡寺境内に第30世住職・早川篤雄氏と連名で「原発悔恨・伝言の碑」を建立するとともに、隣接して、平和博物館「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館」を開設。マジックを趣味とし、東大時代は奇術愛好会第3代会長。「国境なき手品師団」(Magicians without Borders)名誉会員。Japan Skeptics(超自然現象を科学的・批判的に究明する会)会長を務め、現在名誉会員。NHK『だます心だまされる心」(全8回)、『日曜美術館』(だまし絵)、日本テレビ『世界一受けたい授業』などに出演。2003年、ベトナム政府より「文化情報事業功労者記章」受章。2011年、「第22回久保医療文化賞」、韓国ノグンリ国際平和財団「第4回人権賞」、2013年、日本平和学会「第4回平和賞」、2021年、ウィーン・ユネスコ・クラブ「地球市民賞」などを受賞。著書は『人はなぜ騙されるのか』(朝日新聞)、『だます心だまされる心』(岩波書店)、『からだのなかの放射能』(合同出版)、『語りつごうヒロシマ・ナガサキ』(新日本出版、全5巻)など100数十点あるが、最近著に『核なき時代を生きる君たちへ━核不拡散条約50年と核兵器禁止条約』(2021年3月1日)、『私の反原発人生と「福島プロジェクト」の足跡』(2021年3月11日)、『戦争と科学者─知的探求心と非人道性の葛藤』(2022年4月1日、いずれも、かもがわ出版)など。

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