【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年8月6日):「プロパガンダ」という言葉がぴったりあてはまる:ウィキペディアの共同創設者は、ウェブサイトが裕福で権力のある(世論)操作者たちの遊び場に変貌したと述べている

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

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ファイル写真。2012年に提案されたオンライン著作権侵害に関する法案に抗議し、ウィキペディアの冒頭ページが黒く塗りつぶされた。©REUTERS / Yves Herman

ウィキペディアの共同創設者ラリー・サンガーは、ウィキペディアは注目の的となっている話題について適切な視点を反映しておらず、中道左派の支配層の世界観を描いていると述べた。こうした総意に基づく現実は、権力者による悪意ある操作の対象になりやすい。

「記事に誰かが望むことを書かせるために、舞台裏では大きくて厄介で複雑なゲームが繰り広げられている」とサンガーは今週、ウィキペディア内部の現在の文化を痛烈に批判した。「『勝つ』ために、人々はあらゆる策略を駆使するのだ。」

ジミー・ウェールズと共に世界有数の参考資料ウェブサイトを立ち上げたサンガーは、自身の創案したウェブサイトを声高に批判するようになった。彼は冗談めかして自らを「元創設者」と呼び、彼の批判と、ウィキペディアが彼から距離を置こうとする試みの両方を指してこう言った。今週、彼はオンライン百科事典(ウィキペディア)における問題のある変更について、アンハード誌の番組「ロックダウンTV」の司会者フレディ・セイヤーズに語った。

今日、ウィキペディアは「どのような視点であれ、その視点においては非常に信頼できる組織だ」と彼は述べた。しかし、このウェブサイトが「少なくとも当初は記事の中で展開されるあらゆる種類の反体制的な見解に対して非常に寛容でオープンだった数人のリバタリアン」によって設立されたことを考えると、これは皮肉なことだと彼は付け加えた。

ユーザー編集型のこの百科事典は、既知の事実とその解釈に関する主要な見解を提示することを目的としていた。しかし、政治的なものであれ文化的なものであれ、「デリケートな話題」においては、明らかに中道左派の視点を前面に押し出し、他のグループの意見を曖昧にし、軽視しているとサンガーは指摘する。こうしたアプローチは、人々が人生において十分な情報に基づいた意思決定を行う権利を否定するものであり、本質的に欠陥がある。

「私たちは、都合よく操られたくありません。自由な個人として、自ら決断したいのです。もし決断できないなら、私たちに何か問題があると思います」と彼は説明した。

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もちろん、宗教指導者、政党幹部、独裁者など、何らかの権威者から自分の考えを指示されたい人もいる。そして、そのような欲求を満たすような情報源は、人々に害を及ぼすとサンガーは主張した。

それが体系的なものであれば、「プロパガンダ」と呼ぶべきでしょう。そして、まさにそれがウィキペディアで私たちが扱っているものなのです。

このような情報源は、現実に対する世間の認識を操作して自らの利益を図ろうとする者にとって、便利な道具にもなる。顧客に関連するウィキペディアのページを監視し、顧客に代わって編集を進める業界が存在する。ウィキペディアの編集者は身元を明らかにしたり利益相反を明らかにしたりする義務がないため、こうした活動の一部は見過ごされがちになる。

「事実が一つの見方しか認められなければ、裕福で権力のある人々が自らの権力を強化するためにウィキペディアのようなものを掌握しようとする大きな動機が生まれます。そして彼らは実際にそうするのです」とサンガーは指摘した。

問題の一部は、ウィキペディアが記事の内容を裏付けるために、主にメディア報道である二次資料に意図的に依存していることにある。これらの情報源自体が偏っている可能性があり、ウィキペディア編集者たちは、デイリー・メールやFox Newsといった一部のメディアを有効な参考資料として除外することで、こうした偏りを許容する。メディアの二極化が進むことで、この問題はさらに悪化している。

その結果、「主流の中道左派メディアで取り上げられない論争は、ウィキペディアにも掲載されない」ようになったとサンガーは述べた。ジョー・バイデンのページは、ウクライナ問題と息子ハンターのウクライナにおける閑職に関する論争についてはほとんど触れず、現職の米国大統領に対する仕組まれた政治攻撃として片付けようとしている。

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サンガーは、普遍的に受け入れられている人生の事実を列挙した百科事典を持つことは不可能であり、既存の分裂や議論を正直に反映することが期待できる最善のことだと考えている。

「『事実』が、あるテーマについて責任ある研究者全員が同意することを意味するのであれば、『事実の百科事典』は存在し得ません。なぜなら、あらゆる事柄について専門家の間で意見の相違があることはよくあるからです」と彼は述べた。

ウィキペディアにおける「総意に基づく現実」の問題は、政治問題だけには止まらない。東洋医学(ウィキペディアでは「いんちき医療」と揶揄されている)、キリスト教(ウィキペディアではリベラルな学術的観点から説明されている)、あるいは新型コロナウイルス感染症といった話題も、この「総意に基づく現実」の影響を受けているとサンガーは説明する。新型コロナウイルス感染症は、このウェブサイトが、巨大IT企業が公共の議論において好ましくないとみなした声を封じ込めようとする動きに加担した好例だ。

「ノーベル賞受賞者や著名な医師など、多くの人物がウィキペディアで歓迎されないばかりか、その内容が正論とされる見解と真っ向から矛盾するからという理由で、ユーチューブやフェイスブック、ツイッターで文字どおり検閲され、そうした人物へのインタビュー動画は削除されます」と彼は語った。

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サンガーは、シリコンバレーの検閲は不安を抱かせるものだが、ネット上で政府が中立性を強制する方が、政府による検閲と等しくなるため、より背筋がさむくなる選択肢だと言った。政府は検閲を民間企業に委託しているだけで、民間企業は憲法修正第一条のような言論の自由の制限を受けていないと主張する人もいるかもしれない。今週、ホワイトハウスは「フェイスブックに偽情報を拡散する問題のある投稿」をフラグ付けしていることを認めた。

サンガーは、インターネットを分散化し、ウェブの「西部開拓」時代の自由な精神に近づけることによって、反対意見を封じ込めようとする動きに対抗できると期待している。数年前、彼は「デジタル独立宣言」を提案した。これは、インターネット利用者に言論の自由、プライバシー、セキュリティに関する一連の権利を与え、企業の支配を抑制するものだ。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS http://tmmethod.blog.fc2.com/

の中の「「プロパガンダ」という言葉がぴったりあてはまる:ウィキペディアの共同創設者は、ウェブサイトが裕福で権力のある(世論)操作者たちの遊び場に変貌したと述べている(2025年8月9日)

http://tmmethod.blog.fc2.com/

からの転載であることをお断りします。

また英文原稿はこちらです⇒The word for it is ‘propaganda’: Wikipedia co-founder says website has morphed into playground for rich and powerful manipulators
出典:RT 2021年7月16日
https://www.rt.com/news/529378-wikipedia-founder-establishment-propaganda/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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