
☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年8月15日):50万人のパレスチナ人が殺されても誰もイスラエルとの交易をやめようとしない。
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
食べ物を乞う人間がいる。そして世界の他の国々は何もせずにじっと座っている。
ガザの死者は、かつて文明であった場所の瓦礫の下に横たわっている。50万人ものパレスチナ人――男性、女性、子供、幼児――が、これほどまで残忍で、またその実相がこれほどまで記録に残り、さらにそれがこれほどまでに高解像度でライブ配信されているジェノサイドによって虐殺されている。未来の歴史家たちは、残虐行為そのものよりも、世界がそれに対して抱く卑劣な無関心に驚嘆するだろう。なぜなら、これは人類史上初のリアルタイムで中継されたジェノサイドであるにもかかわらず、世界の大半はそれから視線を逸らせているからだ。
偽りの犠牲者数を繰り返し唱え続けるのはやめよう
ラルフ・ネーダーの最近の分析は、私たちが長年疑ってきたことを裏付けている:この死の月面のような光景から浮上する犠牲者の数は、醜悪なほど控えめだ。40キロメートル×12キロメートルの土地に17万トンの爆弾が投下され、血筋が完全に絶たれ、病院が死体安置所となり、学校が墓地となるような状況下で、死者の数を控えめに計上する行為は、意図的に目をつぶっていること以外の何物でもない。
「死者4万人」「殺害された子ども1万7千人」といった、独立系左翼メディアでさえ繰り返し唱える、美化された数字の繰り返しは、この虐殺の真の規模を覆い隠すだけだ。これらの数字は、西側諸国が理解しやすいように、人為的に低く抑えられ、きれいに加工されている。このホロコーストの全容が、私たちの安楽な共犯意識という泡を突き破り、私たちが何を許してきたのかを突きつけさせないためだ。
実際の数字は、第二次世界大戦中の広島、長崎、ドレスデンでの死者の合計より多く、50万人を超えたパレスチナ人が死亡しているかもしれない。
しかし、これは単なるイスラエルの蛮行の物語ではない。これは、利益と地政学的優位のために魂を売り渡した世界の物語である。ワシントンからアムステルダム、モスクワからリヤドに至るまで、地球上のあらゆる大国が、炎にくるまれた子供たちの叫び声と比較され、道徳的に破綻していることを露呈した物語である。
グローバル・サウスに機会はあった
グローバル・サウスに機会はあった。西洋による5世紀にわたる植民地主義、帝国の足元に何世代にもわたる苦しみを経て、非同盟諸国はついに「もうたくさんだ」と言えるだけの経済的影響力を手に入れた。広大な貿易ネットワークを持つ中国は、イスラエル経済を一夜にして締め上げることができただろう。ロシアは、イスラエルの支援を受けたNATOの攻撃を受けているにもかかわらず、このジェノサイドの立役者たちと親密な関係を維持している。ブラジル、インド、南アフリカ――いずれも婉曲的に「実用主義」と呼ぶ道を選んだが、それは外交用語で装った道徳的臆病に過ぎない。
中国とイスラエルの関係は特に複雑だ。北京はイスラエル最大の貿易相手国の一つであり、イスラエルのハイテク企業に数十億ドルを投資している。これらの企業の多くは、パレスチナ人を追跡し、中国を包囲するために使用されている監視技術や兵器システムを生産している。「倫理遵守と製品の非軍事利用への関与」を表明している「Autel Robotics」のような中国製ドローンは、イスラエル軍が難民キャンプに死を雨のように降らせるために使用されている。中国の国営企業は、占領下のヨルダン川西岸における入植事業から直接利益を得ている企業に投資している。以前にも書いたように、この貿易の1ドル1ドルが、パレスチナの子供の胸に撃ち込まれた銃弾、締結された契約、難民キャンプをブルドーザーで破壊することになりかねない。
帝国に対する南半球の不可解な無能さは、ソーシャルメディアサイトにも及んでいる。TikTokは、元々は、中国のサイトだったが、今やゆっくりと西側のプロパガンダ機関へと変貌を遂げつつある。これは、南半球の技術の覇者と目されていた国々でさえ帝国の命令に屈服し、かつては挑戦すると約束していたプロパガンダ機構の共犯者と化している実態を露呈している。TikTokは現在、イスラエル軍の元将校を雇用して「ヘイトスピーチ」の定義を定めさせており、ジェノサイドへの批判は反ユダヤ主義、大量殺戮の記録は扇動行為と分類されるように仕向けている。
「ようこそアルカイダ!」:米帝国に足にキスをして恭順するロシア
たぶんロシアの裏切りは、もっと腹立たしい。アルカイダの過激派組織をレッドカーペットで迎え入れたばかりのロシア。長年アサド政権下のシリアと同盟関係にあったロシア。そのロシアが、今度はかつてテロリストと呼んでいた反政府勢力を温かく歓迎している。世界の反帝国主義大国と目されているロシアが、パレスチナの子供たちが病院のベッドで焼死させられているのに、自国の戦略的利益を守ることに躍起になっている、単なる日和見主義者であることをさらけ出している。
ネタニヤフ首相率いる勢力が癌のように地域を蝕んでいるにもかかわらず、モスクワはイスラエルとの同盟を維持している。プーチン大統領はネタニヤフ首相をシリアとイランについて協議するために電話をしたが、それはジェノサイドの終結を求めるためではなく、パレスチナ人の血がガザの溝に流れる中で、勢力圏を調整するためだった。かつてアパルトヘイト下の南アフリカに対抗しようとアフリカ民族会議(ANC)を訓練し、武器を提供したロシアが、今や旧体制を聖人のように見せてしまうアパルトヘイト国家の立役者たちと手を組んでいるのだ。
2025年7月31日、モスクワで行われた会談で、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相がシリアのアサド・アル=シャイバニ外相を案内している。シリア内戦中、アル=シャイバニはアハメド・アル=シャラーと共にシリアにおけるアルカイダの支部であるヌスラ戦線の創設メンバーだった。その彼とラブロフは親交を深めたのだ。ヌスラ戦線がハヤト・タハリール・アル=シャーム(HTS)に移行した際には、アル=シャイバニは同組織の外交担当を担った。
多極化への大いなる欺瞞
多極化という大いなる欺瞞が露呈した。新たな世界秩序、BRICS諸国が西側諸国の覇権に挑戦する、より公正な国際システムといった、息詰まるような論評はすべて嘘だった。代わりに我々が目にするのは、冷酷な現実主義、冷笑的な打算、そして大国間の競争という祭壇に弱者が犠牲にされるという、これまでと同じ構図だ。唯一の違いは、冷酷な無関心の中心が一つではなく、複数存在するということだ。
パレスチナ人は私たちの目の前で飢え死にさせられている。シオニスト国家は、白リン弾を兵器化したのと同様に、意図的に飢餓を兵器化している。援助を積んだトラックは国境で拒否され、イスラエル当局は「検証メカニズム」と呼ぶものを実施している。これは、最大限の苦しみを保証するための官僚的な婉曲表現。UAEは、写真撮影の機会のために空のトラックをガザに送り込み、自国の港はイスラエルとの貿易の中継地点となっている。1億人の人口を抱えるエジプトは、ラファの国境を数分で破壊できるはずだが、実際には封鎖から利益を得ており、殺戮の場から逃れようとするパレスチナ人から金銭を巻き上げ、ガザに食糧を運び込もうとする活動家を暴行している。
グローバル・サウスの失敗——ごく一部の例外を除き——は、私たちの時代の最大の道義的放棄の一つとして歴史に刻まれるだろう。彼らはその瞬間——西欧の植民地主義の桎梏を真に脱却し、権力が異なる形で行使され得ることを、経済的優位性が利益ではなく正義に奉仕し得ることを、国際関係が利便性ではなく原則によって支配され得ることを証明する——唯一の機会を手にしていたのだ。
彼らは、ヨーロッパの植民地支配者によって虐殺された先祖を称えるために、イスラエルによって虐殺されているパレスチナ人と共に立つ道を選ぶことができたはずなのだ。しかし、彼らは現実主義を装った道徳的臆病の道を選択し、革命的な遺産とかつて自分たちを奴隷化したシステムの一員となるための席を引き換えにした。
西側は倫理的に息絶えた
そして、この意図的に仕組まれた飢饉に対する西側の対応は何か? さらなる茶番劇。空虚な約束の繰り返し。「二国家解決案」という、私たちの大多数が生まれる前から死んでいる政策へのさらなる呼びかけだ。この虐殺を2年間も容認してきた同じ政治家たちが、人道的な救済者としての姿を装い、援助の残渣を投げ与えながら、武器の輸送は止まることなく続いている。彼らは、飢えた難民に対してイスラエルの「自衛権」を主張しながら、子供たちを塵に変える爆弾を送り続けている。
この堕落は、直接の共謀者だけにとどまらない。イスラエルとの貿易を続けるあらゆる企業、研究提携を維持するあらゆる大学、占領機構に投資するあらゆる年金基金にまで及んでいる。パレスチナ人の被害者は加害者へと、イスラエル人の加害者は永遠の被害者へと変貌を遂げた。これは、ゲッベルスでさえ感嘆の涙を流すほど大胆なプロパガンダの策略である。この現実の歪曲はあまりにも徹底的かつ組織的に行われており、虐殺を記録することさえ憎悪と捉えられ、加害者の名前を挙げることさえ検閲の根拠とされている。
共謀の仕組みは、多国籍企業の役員室から名門大学の講義室、退職基金の投資ポートフォリオから主要メディアの編集方針に至るまで、あらゆるレベルで機能している。ジェノサイドへの批判が組織的に封じ込められ、アパルトヘイトの立案者が道徳的権威の地位にまで上り詰めるとき、私たちは言論の自由の死を目撃するだけでなく、真実そのものが、オーウェル風に捏造された被害者意識と武器化された反ユダヤ主義の非難という層の下に埋もれていくのを目撃することになる。
「二国家」案解決策の口封じ
西側諸国の道徳的破綻は、いわゆる進歩主義者たちにまで及んでいる。彼らはまるで流木にしがみつく難破船の生存者のように、「二国家」案解決策という腐りかけた屍にしがみついている。数ヶ月ごとに、ヨーロッパの外交官やアメリカの政治家がこの外交ゾンビを蘇らせ、平和への関与の証拠としてカメラの前に誇示する。希望の兆しを必死に探し求める左派メディアは、こうした空虚なジェスチャーを「突破口」や「新たな勢い」と息もつかせぬ報道をする。しかし現実は、二国家解決は数十年前から死に体だったのだ。入植地、併合、検問所、そして国家を樹立できるパレスチナの領土はもはや存在しないという単純な数学的事実によって、真実は息の根を止められたのだ。
これらのパフォーマンス的な宣言には、邪悪な目的がある。それは共謀を続けるための道徳的な隠れ蓑となり、その間にもパレスチナ人が絶滅させられている。「交渉再開」や「和平プロセスへの復帰」といったあらゆる言及は、知性への侮辱であり、死にゆく者の頬を平手打ちすることだ。ガザの60%が瓦礫と化し、ヨルダン川西岸地区が70万人の不法入植者によって分割され、東エルサレムが民族浄化された今、二国家体制の維持を主張し続けることは、息を呑むほどの無知か、あるいは計画的な欺瞞のいずれかであることを露呈している。進歩派メディアは、こうした茶番劇をジェノサイド否定ではなく正当な外交として扱うことを厭わない。それは、彼らが反対していると主張する残虐行為そのものに加担していることを意味する。
パレスチナで起こっていることはパレスチナだけにとどまらない
皮肉なことに、グローバル・サウスが反対を唱える帝国主義勢力が、やがて彼らにも銃を向けるだろう。パレスチナ人を対象に完成された監視技術、暗殺の標的を選別するAIシステム、集団懲罰を常態化する法的枠組み。これらすべてが、反対意見がどこで発生しようと、それを鎮圧するために輸出されるだろう。パレスチナで起こることは、決してパレスチナにとどまることはない。
「恥を知れ」という言い方が意味をなさなくなっている。50万人もの人々が虐殺されながらも貿易の流れと外交上の気配りは続く。子供たちがレイプされ、カメラの前で生きたまま焼かれる一方で、その殺人犯は権力の座に迎え入れられる。飢餓が武器として振るわれながらも、世界は犠牲者の生存権を認めるかどうか議論する。このような世界では、人間性という概念そのものの息の根が止められているのだ。
パレスチナ人は国際社会によって救われることはない。なぜなら、国際社会など存在しないからだ。存在するものは、国旗と国歌をまとった競い合うマフィアたちだけであり、それぞれが罪のない人々の血から最も利益を得る方法を計算している。抵抗は続く。なぜなら、そうしなければならないからだ。私たち残された者は、歴史が呼びかけた時、期待に応えなかった、そして試練が訪れた時、その試練を凌げなかった、ということを頭に刻み込んで生きなければならないだろう。そして、死者の叫びは私たちの墓まで追いかけてくるだろう。
カリム・ベターチェ(Karim Bettache)教授
*タリック・シリル・アマール博士とのグローバル・サウスの不可解な麻痺に関する最新の討論をご覧ください。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS http://tmmethod.blog.fc2.com/
の中の「50万人のパレスチナ人が殺されても誰もイスラエルとの交易をやめようとしない。」(2025年8月15日)
からの転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒Half a Million Palestinians Dead, and the World Trades On
出典:Internationalist 360° 2025年8月1日
原典:BettBeat Media(サブスタック)https://libya360.wordpress.com/2025/08/01/half-a-million-palestinians-dead-and-the-world-trades-on/