【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.08.22XML: 米露が関係修復に向かう中、英国の情報機関がテロ作戦を活発化

櫻井春彦

 ここにきてイギリスの対外情報機関MI-6の動きが活発だ。ロシアのスペツナズ(特殊部隊)がオデッサに近いオチャコフでイギリス陸軍のエドワード・ブレイク大佐とリチャード・キャロル中佐、そしてMI-6の工作員ひとりが拘束されたと報道されたたのは8月2日。その日、ウィトコフ特使がモスクワを訪問する予定になっていた。​その報復という意味もあり、MI-6のチームはウクライナ軍と手を組み、クリミア橋を破壊する作戦を進めていた​。

 

フィンランドで製造されたプラスチック爆弾130キログラムを積み、ヨーロッパの5カ国を移動していたシボレーをFSB(連邦保安庁)が抑えたのだが、FSBによると、テロ作戦の首謀者はMI-6だった。

 

イギリスをはじめとするNATO諸国がテロに傾斜しているのはウクライナ軍の敗北が決定的で、テロに頼るしかなくなっているからだと見られている。ハッカー集団のKillNetはウクライナ軍参謀本部のデータベースに侵入することに成功、2022年2月に始まった戦闘で170万人のウクライナ兵士が死亡または行方不明になったことがわかったと主張している。

 

ロシア兵の戦死者はこれを大きく下回る。戦場において発射した砲弾の数は死傷者数に反比例すると言われているているが、発射した砲弾の数は6対1から10対1でロシア軍が上回る。ロシア軍の戦死者数はウクライナ軍の6対1から10対1だと推測でき、17万人から28万人ということになる。ロシア軍は自軍の兵士の死傷者をできるだけ少なくする作戦を立てていることから、さらに少ないだろう。

 

元CIA分析官のラリー・ジョンソンによると、戦闘に参加しているロシア軍の兵力は113万5000人から132万人。2022年2月から徴兵されたり契約を結んだ兵士は、退役、契約満了、死傷などがなかったと仮定するならば242万0500人。足りない人数は128万人から110万人ということになるが、実態は半分程度だと推測できる。​死亡者と負傷者の比率は1対4とされているので、戦死者数は最大で22万人から25万人、実態は12万人強だとみられている。

 

ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、アメリカの軍や情報機関は2022年2月から死傷したロシア兵の数を200万人だとしているようだ​が、これは現実からかけ離れた数字だ。訓練されたロシア軍兵士は農民に取って代わられ、優秀な中級将校と下士官は皆戦死、最新式の装甲車両と戦闘車両はすべてガラクタだというのだが、ウクライナの街頭で男性が拉致されている状況を見ても、これはウクライナ軍の実態。​イギリスの国防相を務めていたベン・ウォレスは2023年10月1日にテレグラフ紙へ寄稿した論稿の中で、ウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘していた。​現在の状況は当時よりはるかに状況は悪くなっている。

 

ドナルド・トランプ米大統領とウラジミル・プーチン露大統領は8月15日にアンカレッジで会談した。ウクライナでの停戦に関する何らかの合意があるのではないかと推測していた人もいるようだが、今後の米露関係に力点が置かれていたようだ。

 

ウクライナの戦況を理解している人なら停戦で合意することがありえないことを理解していたはずだ。そうしたことを期待できる状況ではないのだ。トランプ大統領は会談後、単なる停戦協定でなく和平協定を結ぶことが戦争を終わらせる最善の方法だと語っている。

 

アメリカのスティーブ・ウィトコフ大統領特使は米露首脳会談の前、8月6日に会談した。​その報告書の冒頭、ロシアとアメリカの関係について、これまでと全く異なる、互恵的な基盤の上に築かれるとされていることに注目するべきだと元CIA分析官のレイ・マクガバンは書いている。​問題は、こうした気持ちがあっても状況の認識が間違っていると破綻してしまう。

 

ウクライナでロシアがNATOに勝利したことは明白であり、NATOにしろウクライナにしろ、戦闘を終わらせたいなら、ロシア側の要求を呑むしかない。プーチン大統領がゼレンスキーに会うのはその後のこと。ロシアが求めているのは、ウクライナの非軍事化、非ナチ化、NATOに加盟しないことの保証、ロシア国境付近への西側諸国軍の展開の制限、ウクライナに対する武器供与の制限、ウクライナにおけるロシア語使用の保証、また西側諸国が凍結したロシア資産を返還し、ウクライナの中立を維持するほか、領土の「現実」(ドネツク、ルハンシク、ザポリージャ、ヘルソン)を承認することなどであり、安全はウクライナだけでなくロシアも保証されなければならない。ロシアは領土を広げるために戦っているわけではないのだ。

 

トランプがプーチンとの会談でウクライナでの停戦協定ではなく、和平協定で合意したいと語り、アメリカとロシアの関係修復を望む姿勢を示した。トランプはウクライナ情勢を理解しているように見える。こうした流れに反発しているのはイギリスをはじめとするNATO諸国とウクライナのネオ・ナチだ。

 

トランプはウクライナでの戦闘を「バイデンの戦争」と呼んでいる。実際には、バラク・オバマ政権が2014年2月にネオ・ナチを主力とするクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したところから始まっている。そのオバマ/バイデン人脈はトランプをロシアゲートで攻撃したものの、失敗。ここにきてジェフリー・エプスタインのスキャンダルで攻撃していたが、ロシアゲートのでっち上げでトゥルシ・ギャバード国家情報長官は逆襲した。

 

ギャバード長官は7月18日、バラク・オバマ政権がアメリカをロシアとの核戦争へと向かわせようと意図的に行っていることを示す100ページ以上に及ぶ未編集の電子メール、メモ、高官級の通信を公表。ロシアには2016年の選挙に干渉する「意図も能力も」なかったという結論を下した情報を覆すため、組織的に動いたことをそれらの文書は明らかにした。

 

大統領だったオバマのほか、国家情報長官を務めていたジェームズ・クラッパー、CIA長官だったジョン・ブレナン、FBI長官だったジェームズ・コミー、国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めていたスーザン・ライスたちが行ったことは「物語の構築」にすぎず、ロシアの関与を否定する情報分析をすべて破棄し、捏造された主張に置き換えたことを示唆しているとされている。これをギャバードは「反逆的な陰謀」だと表現している。

 

ちなみに、エプスタインの話は、その真相が明るみに出たなら、世界の支配システムが崩壊してしまう。トランプを攻撃するだけでは終わらない。

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のテーマは「 米露が関係修復に向かう中、英国の情報機関がテロ作戦を活発化 」(2025.08.22ML)
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