
登校拒否新聞書評欄:きくちゆみ・童子丸開著『超みえみえテロ&戦争詐欺師たちのマッチポンプ』Ⅱ
映画・書籍の紹介・批評2001年9月11日、8時46分、北タワーに衝突した飛行機の映像は1本しかない。このジュール・ノーデ撮影による映像は事件後に公開されたもので、リアルタイムに放映されたものではない。衝突した面は北東面。爆発の様子からすると、それが南東面を撃ち抜いている印象を受ける。
https://www.youtube.com/watch?v=St7ny38gLp4
操縦していたとされる主犯格のモハメド・アタは翌日に電話をかけてきたと父親がイギリスの『ガーディアン』誌の取材に答えている。犯人とされた一人、アブドゥルアズィズ・アルオマリについては存命であることを事件後にサウジアラビアのアメリカ大使館が発表した。その真実については成澤氏の『9.11の謎:世界はだまされた!?』(2006年)に詳しい。つまり、アルカイダとの間にパキスタンの諜報機関が介在しているとの見方である。その他、アルシェフリ兄弟はサウジ航空のパイロットでモロッコにいた。不明なのは最後の一人、サタム・アルスカミだ。翌日、パスポートが数ブロック離れた所から見つかった。アルオマリのパスポートも落ちていたが盗まれたものと認められた。CNNが報道した11便の乗客リストにアラブ人の名前はない。乗客76人の中に3人、RQ-4(グローバル・ホーク)のセンサー部分の開発に携わっていたレイセオン社の社員がいる。なお、南タワーに激突したとされるユナイテッド航空175便の乗客47人の中にも1人、同社の社員がいる。会社はその91階にオフィスを構えていた。
https://911research.wtc7.net/cache/planes/evidence/cnn_AA11_victims.html
https://911research.wtc7.net/cache/planes/evidence/cnn_UAL75_victims.html
アメリカン航空11便は空港にスケジュールがない。つまり、ボストンのローガン空港を7時59分に離陸した記録がない。ちなみに言うと、ペンタゴンに衝突したとされるアメリカン航空77便もダレス国際空港にスケジュールがない。離陸したとすれば運輸省が把握していない便が飛んだことになる。
テレビ中継が始まるのは早くて8時48分。北タワーが煙を吐いている。175便は8時57分に北東に航路を変えて、8,534キロ上空から急降下して、9時3分に南タワーに衝突。11便が北タワーの北面へと一直線に南下したのに対して、175便は南タワーの南面へと向かって西側からニュージャージー州の上空を迂回して周り込んだことになる。第1ビルの北東面と第2ビルの南西面という真逆の方向で起きた出来事であるからリアルタイムで両方の面を見た人はいない。テレビ中継は例外なく北側からなされる。前日、ハリケーンが迫っていたニューヨークは大荒れだった。台風一過、当日は快晴である。
ABCの中継は8時51分に始まる。数ブロック北側にいたという男の証言では飛行機ではなくミサイルの音が聞こえたという。見てはいないが、プロペラ機ではなくジェット機という話である。映像は9時2分に映像が飛ぶ。ピピッという音がなって17秒後に黒い機影が横から現われる。南タワーは手前に映った北タワーの影になっており、この飛行体がビルに衝突した場面は死角に入る。このヘリコプターからの映像を「映像A」とする。スタジオのキャスターは「第二の飛行機」と言っている。ところが、同じ中継映像を流したABC7のニュースではキャスターが「第二の爆発」と言っている。飛行体が映ったかと思うと画面が乱れて切り替わったから気づかなかったか。それまで、ABC7のキャスターは旅客機だったかどうかを目撃者に聞いていた。マーサー通りにいた女性の証言では旅客機だったが、西7番通りにいた男性の証言では「商業用機よりは小さいが双発機」「セスナではなく小型のジェット機」だった。「ジェットエンジンが後ろにあった」という印象を受けたという。その次に出てきた女性によると「50人乗りくらいの小型旅客機で、セスナではない」と。この中継が始まった頃、ABCは南側からの映像も何度か出していた。北側からの中継映像と比べてクリアに映っていることが確認される。なぜ、この画角で撮影された衝突時の映像がないのか?
ABCの中継映像はFOX系列とCNNとBBCによっても同時放映された。
FNCの生放送はABCの中継映像を用いて開始。北タワーに衝突したのは「小型のコミューター機」と証言されている。そして、9時3分。「映像A」が流れる。「いま、生放送で第二の飛行機が第2ビルに飛び込むのを見ました。世界で起こっていることを考えれば、オサマ・ビンラディンの名前が主だった容疑者として頭に浮かびます」とのキャスターの爆弾発言。そこで、第1ビルの爆発の時は5番街を歩いていたという男の証言が入る。「737型か小型のエアバス」が真っ直ぐ飛んでいったという。続けて、CBSの中継映像――「映像B」が流れる。「ハリウッドのようですが実写です」とキャスターが口走る。しばらくして、自前の「映像C」が流れる。すでに爆発から15分は経過している。それから、映画『911ボーイングを捜せ』に出てきた電話取材の場面となる。FOXの社員が「何かマークを見ましたか?」というキャスターの問いに「たしかに青い丸いロゴが飛行機の前のほうにありました。側面に窓がなかったので商業用機ではないです」と証言。「ということは貨物機のようなものですか?」「飛行場で見るような通常の飛行機ではなくて、青いロゴが前方にありました。この辺の飛行機じゃないと思います。つまり事故ではないということです」ということで、周辺の飛行場の飛行機ではないことを強調している。ナカムラサツマイモ店の飛行機だろうか?
FOX5(WNYW)の中継は8時48分に始まる。二つ並んでいる左側の画面はじつはCBSの中継映像である。8時54分、右側に映り出されていた街頭のカメラが切れる。8時57分、その理由は爆発が起きた第1ビルの天辺にあるアンテナがテレビ局の送信機になっているからとキャスターが説明する。実際、北タワーではテレビ局のエンジニアが6人死亡した。対岸のホーボーケンにいる男の証言では「727型のような大きな飛行機」が「奇妙なターンをして真っ直ぐにビルに向かった」という。話の途中、9時1分に一瞬だけ青みがかった映像が映し出される。これはやはりCBSの中継映像で「映像B」の画角である。9時2分に中継映像がヘリコプターからの映像に切り替わり――ビルを飛行機が突き抜けた!と思ったら画面がブラックアウト。この「映像D」がライブコンポジットの失敗作であることはエース・ベーカーが『The Great American Psy-Opera』で指摘している。なぜ、突き抜けたかと言うと、ヘリコプターからの映像が横にぶれたから。つまり、飛行機を横に飛ばした映像を中継映像に重ねてあるわけだが、カメラがその瞬間に右側にずれたために飛行機の先端がビルの左側に見えてしまったというわけ。エース・ベーカーはこれを「ピノキオの鼻」と呼ぶ。「映像C」と「映像D」は同じ飛行機に見える。つまり「映像A」「映像B」とは異なる。
FOX4(KDFW)では、きれいに西側から飛行体が近づいてくる。衝突したのは南タワーの南西面(この画角では裏側)なのだが。この「映像E」はCBSの画角に似ているが、やや西側から映してある。その後、WNYWの映像に切り替わり「映像D」が映し出される。続けて「映像C」が流れる。生放送されたのが「映像E」で、「映像C」「映像D」が再放映されたということ。
CNNの中継はまったくABC7(WABC)の放送したものと同じ。ただし、5分後に「WABCのニューヨーク系列から入手した最新の、いや失礼。WNYWの中継した驚きの映像」として例の突き抜ける「映像D」が再放送される際、ブレイキングニュースというテロップとCNNのロゴで機影が隠れるようにしている。さすがにまずいと思ったのだろう。この時は「飛行機」と言っているキャスターのナレーションが入らなければ何を見せられているのかわからない。以来、「映像D」が再放送されたことはない。
BBCはABCの中継映像を流しながら自前のスタジオで編集している。1機目は737型らしいと報道。ちょうど2機目の「映像A」が流れる時に「ニューヨークにいるスティーブ・エバンスに電話がつながりました」とスタジオのキャスターが言う。彼は「ビルのベース」にいると言う。おそらく第1ビルの玄関にいるのだろう。時に爆発音が聞こえる。彼の位置からは第2ビルの南側は見えないから「爆発」としか言っていない。不自然なのはキャスターが中継映像に現れた機影について言及しないことだ。5分してから「第二の飛行機がクラッシュした映像を手に入れました」などと言っている。おかしなことに、その映像とは5分前の中継映像――「映像A」に同じ。
CBSの生放送ではビルの上空から降下してくる飛行機が映ったと思うと(煙の上に小さく映っている)――画面が切り替わり(!)――その約10秒後に南タワーに爆発が起こる。ビルに衝突する場面は映像の死角となっているが「別の飛行機がヒットした!」と記者のテレサ・ルノーが叫ぶ。彼女は最初に「チェルシーにいます。8丁目16番街でいちばん高いビルにいます」と挨拶。そこから南を見て、ノースタワーの北側と東側に見える被害を伝えていた。「間違いなく意図的なものだと思います」「飛行機を見たんですか?」「はい!飛行機がビルに突っ込みました」「なぜ、間違いなく意図的と言えるのですか?」「なぜかって、真っ直ぐに飛んでいきましたし、商業用機には見えませんでした。小さな飛行機でした」という証言は重要だ。その後、エンパイアステートビルとWTCの間を斜め奥から飛行機が近づいてくる映像――これを「映像F」とする――が放送される。そして、先ほど降下中に映像が切り替わった飛行機が衝突する映像――これがFNCでも流れた「映像B」――が流れる。先ほどの画面が切り替わる前の映像でビルの上空に見えていた機影が降りてきて側面に映り出されている。つまり、この2本の「映像」は遅れて放映されたものである。進入角度が一致しないのは気のせいか。
CBS2(WCBS)では同じ中継映像を使っているがキャスターが違う。1機目は「セスナかもう少し大型」としつつもプロデューサーからの情報としてボーイング737型と推定。双発機とも伝えられている。エアバスA320という証言も出たところで「別の爆発」とキャスターが報じる。「第二の飛行機」かどうかは「ノーアイデア」としながらもCNNが「飛行機」と報じたことを伝える。
NBCとMSNBCの中継は傾いた映像から始まる。ようやく画面が切り替わり、クリアな映像になったと思ったら画面右上から飛行体――キャプチャではほとんど見えないだろうが黒い点のようなもの――が近づいてくる。それもビルに近づいたところで、ほとんど透明になって見えなくなり、第1ビルの後景に隠れたあたりで画面が切り替わる。記者が「とても大きな飛行機がビルに向かって真直ぐに飛んだ」と言うのに対して、スタジオのキャスターは「2秒前に飛行機がビルの周りを回っただけ」と返す。「DC9か747のようなとても大きな飛行機が窓の外を飛んでいきました。これがビルにヒットしたんだと思います」「正直なところ、大きな飛行機という印象は受けませんでした」とのやり取りがあってから別の記者に代わる。この記者は中継が開始された時にバッテリー公園にいると話していた。つまり、南側にいる。彼女が「ジェットのような大きな飛行機」と言うからキャスターも納得したらしい。NBCは8分後に、MSNBCは1分後(!)にABCの「映像A」を放映している。NBCのキャスターは「間違っていました。ヘリコプターのような小さな飛行機かと思いましたが、この映像を見ると大きな飛行機です」と前言撤回する。
CNBCも別のスタジオから同じ中継映像を用いて報道。やはりキャスターには飛行体が見えなかったようで、飛行機という言葉は使わずに「別の爆発」についてトークしている。NBCとMSNBCでは画面が切り替わった場面で、CNBCでは映像が乱れる。サイモンが指摘しているように、この中継映像が夜に再放送された際、同じ映像であるにもかかわらず機影が異なる方向から飛んでくる「映像G」が放送されている。背景をぼかして飛行体を消した上で、横から飛んでくる機影を入れたか。明らかに生放送で映し出された黒い点のような飛行体とこの機影、あるいは「映像A」のモノクロに見える飛行機は別物だ。
NY1の中継映像はエンパイア・ステート・ビルの屋上から撮影されたものだ。
まず、バッテリートンネルを抜けたところで立て続けに爆発音があり、ホイール(タイヤとも)が目の前に落ちてきたので、車を飛び降りて逃げた。残骸が雨あられと降ってきた、という男の証言に始まる。そうするとノースタワーの北東面に衝突した機体は反対側の南西面に突き抜けて、ビルの西側を通るウェストストリート上へと落ちたことになる。警察が来て非常線を張ったので、今はバッテリー公園にいるという。この証言は興味深い。というのも、第1ビルに衝突した飛行機は北東面から南東面へと突き抜けるような爆発を起こしている。事故直後の映像では北西面と南西面はあまり被害が見られない。であるから、衝突はビルの中心を貫くコア支柱の東側に寄ったと考えられる。西側を南北に通っている道路(それもトンネルのある南方)にホイールが転がってくるというのは地階で起きた別の爆発が関係しているのかもしれない。あくまでもビルから落ちてきたというのであれば、南西面から落ちたとするのが自然だ。
次に、6ブロック北側のビーチ通りにいたという別の男は飛行機が第1ビルに衝突するのを見た。プロペラの音が聞こえたが、とても速かったからジェット機かと思ったと言っている。この特徴的なイメージはRQ-4の旧モデルとなるRQ-1(プレデター)か、その武装型であるMQ-1のイメージに合致する。翼にエンジンがないから単発。そして後部にプロペラがついている。実際に飛行中はプロペラエンジンの音が聞こえる。「大きな飛行機でしたか?」「いえ、おそらく単発のプロペラ機だと思います。最初は近づいてくる音からジェット機だと思いましたが、とても速いプロペラ機がジェット機の音を立てていたんではないかと思います」というやり取りは具体的だ。
時に「別の爆発」とキャスターが報じる。2分後に再放映された際にも「爆発」「第二の爆発」としか言っていない。ところが「別の飛行機」が衝突したとする2人の目撃者が現れた。その1人はバッテリー・パーク・シティ在住の男である。
彼はハドソン川沿いをランニングしていた時にジェット音を聞いて、立て続けに爆発音を聞いた。家に帰ると、テレビでチャンネル1――NY1を視聴。テレビ局に電話をかけた。するとまた頭上を「ジェット機」が飛び、爆発音が聞こえた。男は「第二のジェット機」だと思った。「テープをリプレイしてたけど、そこに第二のジェット機が画面の右から近づいてくるのが見えるはずだ」という彼に「ジェット機とおっしゃいますが、どのようなタイプのジェット機でしたか?」とキャスターは質問。「どちらも見てはいないが聞こえたんだ。ジェット機のような音だった。航空ショーで見る軍用機が低空飛行する時のうるさくて速いエンジンの音と同じだった。ぜったいにプロペラ機やヘリコプターの音じゃなくてジェット機の音だ」「拡大してリプレイしてみます。これが第二の爆発の映像です。はっきりと飛行機が近づいてくるのが見えます」と再放映された映像は生放送された中継映像と同じで、爆発の直後にも再放映されたものを拡大したものだ。その時、キャスターに飛行機は見えなかった。ところが「画面の右から近づいてくるのが見えるはず」と男が言うのを聞いて、改めて拡大した映像を見てみると今度は見えた!たしかに、この9時14分に放映された拡大映像では飛行体が確認できる。進入角度はNBCが中継で最初に流した映像と同じだから実写だ。この男は先の「プロペラ機」という証言を否定しようとしているようだ。彼は最初に放映された映像から飛行機を認めたのか。それとも「画面の右から近づいてくる」ことを知っていたか。
WB11(WPIX)の中継では衝突したのは「双発機かボーイング727型か737型」と報じられている。そして、9時3分――中継開始1分後に「別の飛行機」が映し出される。この「映像H」はNY1と同じ画角なので、エンパイア・ステート・ビルから撮影されたものだろう。だから上に写真を並べておいた。WB11は自社のヘリコプターからの映像を挿入しながらも、この固定カメラの映像を流し続ける。この画角はCBSの「映像F」と似ているが隣のビルの位置関係からして異なる。タワーの間にも少し隙間が空いている。NBC系列の映像と似ているので実写かと思うが機影が大きく画面の色調もおかしいので、ライブコンポジットとしておく。9時27分――約25分後にスローモーションで拡大した映像が再放映される。キャスターが「部分的に突き抜けた」と言っているのは正直な感想だろう。
以上、生放送で飛行機がビルの側面から衝突するようなライブコンポジットを流したのはABCとFOX5(WNYW)とFOX4(KDFW)とWPIXの4局。FNCはABCの中継映像を使用。北タワーの裏に南タワーがきれいに隠れ、側面から黒い機影が近づく例の「映像A」だ。コンポジット映像は技術的な問題から背景となる海の色と対岸の景色が消えている。その上、画角を固定していなければリアルタイムでのコンポジットはできない。それがずれたのが「映像D」だ。NBC系列では飛行体が映ったその瞬間、画面が乱れた。遅れて「映像A」を放映。画面を切り替えたCBSでは遅れて「映像B」「映像F」を放映。CNNとBBCは「映像A」を生放送。CNNはしれっとFOX5の「映像D」を一度だけ再放映した。「映像C」はFOX系列でしか放映されていない。これは「映像D」と同じ飛行機の形に見える。以上、生放送で流れたのはABC「映像A」とFOX5「映像D」とFOX4「映像E」とWPIX「映像H」の4本。
幽霊の正体見たり枯れ尾花――
あなたが飛行機がビルに衝突する場面を「見た」と言うならば、ライブコンポジットを「見せられた」というのが真実である。少なくとも中継映像でユナイテッド航空175便――ボーイング767型を見たと言うのにはムリがある。ただし、NY1とCBS、NBC系列の3局が映していた中継映像には「ボール」とリサーチャーたちが呼んでいる黒い点に見える飛行体が接近している様子が映っている。映像の明るさの違いからしてもわかるように、この何らかの飛行体は実写である。NY1とこの映像を爆発時まで中断せずに放映した。ところが、NY1のキャスターは飛行体が映り込んでいることに気がつかなかった。中継映像が中断したとはいえ、NBC系列のキャスターも直前の映像で接近してきた飛行体と直後の爆発の映像とを因果的に結びつけることがなかった。CBS2も同様である。
ちなみに、サイモン・シャックの映像作品『September Clues』がおもしろい指摘をしている。どうもCBSとNBCの中継映像は同じである。違うのはエンパイア・ステート・ビルの位置と大きさだ。位置はとにかく大きさが変わるというのはおかしい。定規で測るか画像を重ねてみればわかるように、どうやら手前にビルを重ね合わせたコンポジット映像である。それをビルの位置と大きさを変えて別の映像に見せたものだ。CBSとNBCは生放送で飛行機が衝突する「映像」を放映しなかった点において共通している。
サイモンはアポカリプスのような暗い、あるいはパステルカラーにも見える中継映像がそもそも3Dでつくられた人為的なものではないかとの疑いをかけている。さすがに煙を吐くビルの映像が実写でないとは考えにくいがコンポジットということで、実写映像に前景と後景が差し入れられている可能性はある。ここでは紹介しないけれども、11.5キロメートル後方にあるヴェラザノ=ナローズ橋の橋塔の位置がツインタワーの背景で横に移動する映像はショッキングだ。ヒッチコックで有名な「目まい効果」とエース・ベーカーは説明する。なるほど、例えばズームしながらカメラ自体を前か後ろに動かせば前景と後景が違った動きを見せる効果が得られる。しかし、この場合は固定された画角でズームもしていないのに後景の橋塔だけが横に移動するのだ。それから、サイモンが指摘したABCの中継映像に入るピピッという音。その17秒後に飛行機の映る「映像」が流れる。何らかのキューではないかという。たしかに、ABCだけではなく他局の中継映像にも何らかの音が17秒前に入っている。この分析もまた改めて。
錯覚いけない、よく見ろよろし――と将棋指しの升田幸三は言った。サイモンほど当時のテレビ映像を見た人はいない。ヘボ将棋指しの自分も繰り返し見ていて気づいたことが一つある。映像そのものに、ではない。中継に出てくる証言者たちの声に、である。彼らが語っていないことが一つだけある。(続)
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1984年生。文学博士。中学不就学・通信高卒。学校哲学専攻。 著書に『メンデルスゾーンの形而上学:また一つの哲学史』(2017年)『不登校とは何であったか?:心因性登校拒否、その社会病理化の論理』(2017年)『戦後教育闘争史:法の精神と主体の意識』(2021年)『盟休入りした子どもたち:学校ヲ休ミニスル』 (2022年)『治安維持法下のマルクス主義』(2025年)など。共著に『在野学の冒険:知と経験の織りなす想像力の空間へ』(2016年)がある。 ISFの市民記者でもある。