【連載】社会学作家・秋嶋亮の「リアリティ・オブ・ジャパン」

秋嶋亮(社会学作家)連載ブログ/32:与野党の「疑似対立」が戦争国家を作る

秋嶋亮

このところS党の憲法案が取り沙汰されているが全く当然だ。

なにせその内容たるや、天皇は元首、主権者は国家、教育勅語を尊重などなど、トンデモのオンパレードであり、これが戦前回帰を目指したファシズム憲法であることは、専門家の意見を仰ぐまでもなく衆目に明らかなのである。

新聞各社は「個人よりも国家を優先した体制への逆戻りだ」、「国民のために国があるという大原則が180度ひっくり返っている」、「国による情報統制に道を開き、表現の自由を脅かす」などと批判的な社説を掲載しているが、すでに選挙は終了しており、彼らが(政党支持率で)野党第一党となった今では全く遅きに失するのだ。

要するにマスコミは、あえて選挙前にはこれに触れず、S党が多数議席を確保できるよう取り計らっていたわけだ。しかし最大の欺瞞は、参政党の憲法草案が自民党の憲法草案のカーボンコピーであること、ひいては統一教会の改憲草案の写しであることに全く言及しないことだ(S党の改憲案と自民党≒統一教会の改憲案が一致することを全く報じていないのだ)。

どういうことかと言うと、S党の憲法案が叩かれることで、自民党の草案が正当であるかのような(軍国化の危険性がないものであるかのような)錯覚が生じているわけだ。

繰り返すが、自民党≒統一教会の改憲案も、天皇の元帥化や国防軍の創設を謳い、戦争の永久放棄や基本的人権を抹消している。つまりこれは憲法の絶対不可侵の原則を解体する「実質的違憲」なのだが、日本にはドイツのような憲法裁判所がなく、違憲性の判断は国会内の議論にとどまるのだ。

ところがこの国の体制は与野党の「疑似対立」で成る覇権政党システムだ。そのため与党の改憲案が「超憲法的改正(限度を超えた憲法の改正)」であること、もしくは「憲法破壊的改正(国民主権、平和主義、基本的人権の大原則を無効にする改憲)」であるという批判が皆無なのである(多少の批判はあるにしても、それは裏庭に掘った穴につぶやくような無気力な抵抗なのだ)。

このところ政界では「創憲」や「論憲」などの造語が用いられているが、いずれも「機能的同等語」ないしは「言説的同等物」である。つまり字面が異なるだけで「改憲」と全く同じ意味と意図を持つ言葉なのだ。

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秋嶋亮 秋嶋亮

☆秋嶋亮(あきしまりょう:響堂雪乃より改名) 全国紙系媒体の編集長を退任し社会学作家に転向。ブログ・マガジン「独りファシズム Ver.0.3」http://alisonn.blog106.fc2.com/ を主宰し、グローバリゼーションをテーマに精力的な情報発信を続けている。主著として『独りファシズム―つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?―』(ヒカルランド)、『略奪者のロジック―支配を構造化する210の言葉たち―』(三五館)、『終末社会学用語辞典』(共著、白馬社)、『植民地化する日本、帝国化する世界』(共著、ヒカルランド)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―15歳から始める生き残るための社会学』(白馬社)、『放射能が降る都市で叛逆もせず眠り続けるのか』(共著、白馬社)、『北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか―国民は両建構造(ヤラセ)に騙されている―』(白馬社)『続・ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―16歳から始める思考者になるための社会学』(白馬社)、『略奪者のロジック 超集編―ディストピア化する日本を究明する201の言葉たち―』(白馬社)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへOUTBREAK―17歳から始める反抗者になるための社会学』(白馬社)、『無思考国家―だからニホンは滅び行く国になった―』(白馬社)、などがある。

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