
☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年10月3日):中国を仮想敵国とした日米軍事演習:「タイフォン兵器システム」を「一時的に」配置。中国に敵対し緊張を高める日本
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
「レズリュート・ドラゴン2025(RD25)」軍事演習の一環として、米国は「一時的に」、「タイフォン」システムを配置する予定だ。そして、SM-6ミサイルと「トマホーク」ミサイルを日本の自衛隊との合同軍事演習中に使う予定だ。
上記のミサイル・システムは、2023年に誘導されたもので、数回名前が変えられてきた。当初は、「タイフォン」武器システム(TWS)その後「中射程打撃能力システム(MCS)」、そして今は「戦略的中距離射撃場システム(SMRF)」という名で知られている。さらに混乱させて申し訳ないが、米国の政府機関の中には、このシステムを「中距離能力システム(MRC)」としている機関もあり、 米国議会もそう呼んでいる。いずれにせよ、「タイフォン」は今は廃止されたINF(中距離核戦力)全廃条約に違反する形で開発されたものであり、最大射程距離が1600キロである地上発射ミサイルの「トマホーク」ミサイルを使用するシステムだ。
RD25軍事演習が公式に始まったのは、9月12日であり、9月25日まで開催される。この演習には1万9000人の米国軍人と日本の自衛隊員が参加し、北海道から沖縄まで、各地の軍事基地で実施される。 米軍とUSMC (米国海兵隊)が岩国の米国海兵隊基地で「タイフォン」システムを配置する予定だ。この基地は、広島の約30キロ南東に位置している。広島は、1945年に米国が原爆を投下した市であり、その3日後には長崎にも原爆が投下され、何万もの人々が一瞬で命を落とした。(核兵器が戦争で使われたのはこの時のみだ)。核戦争の恐怖は全ての人類にとっての警告になるはずだったのだが、米国当局は核による別の計画を持っている。以前禁止されていた核搭載可能ミサイルを配置することにより、米国は明らかに中国に対する敵対心を示している。中国は最近米国による侵略を抑止するための新たな武器の演習をおこなったところだ。
米国国防総省(戦争省)は、極超音速武器の開発や配置に関しては、中国やロシアに大きな遅れをとっており、この点においては両国に太刀打ちできる術を持っていない。しかし、各大陸や各海洋に広がる(新)植民地帝国を維持するという意味において、米国当局は、地政学上大きな利点を有している。米国のその力のおかげで、標的としている国々の国境近くや首都にでさえ、時代遅れの武器システムを配置しても問題なく済んでいる。
例えば、岩国軍事基地は、北京から1550~1600キロほど離れており、それは「タイフォン・システム」下での「トマホーク ・ミサイル」がギリギリ届く場所だ。RD25演習においては仮想敵国が想定されていないが、中国を標的としていることは予想できる。さらに気をつけておくべき点は、日本がこの地域で「タイフォン・システム」が配置される唯一の国ではない、という点だ。
実際、昨年下旬に、米国はフィリピンにこのシステムを恒久的に配置することを決めている。この動きは、日本での配置と同じように、最初は「一時的」な配置だと思われていた。米国国防総省の主張によると、このシステムは、RD25演習の後には岩国軍事基地から取り除かれる、とのことだが、米国がこのシステムを岩国に配置したままにするかどうかは、誰にも分からない。フィリピンではそうだったのだから。この懸念のせいで、米国側は中国の基本的な国家安全保障上の利点を脅かせることになる。ところが、中国はこのような配置に対応することができない。なぜなら、中国は軍事基地で包囲する戦略など取ったことがないからだ。そのいっぽうで、前述のとおり、アジアの超大国中国は質的にも量的にも大きな優位性を有している。その理由の一つは、極超音速技術に長けていることであり、もうひとつの理由は、中国は中距離核戦力全廃条約(INF)に縛られてこなかったからだ。
既に中国軍は、目を見張るような長距離兵器を誇っているが、さらに最近は、より新型でより進化した機動性弾道ミサイルに加えて、新たなHGV(極超音速滑空車両)やスクラムジェット巡航ミサイルも有している。このため、中国は前例のない攻撃能力を有することになり、急襲がなされた時も確実に反撃できる体制が取られている。とはいえ、中国側は予想される米国による攻撃を抑止するために、戦略的兵器をまだまだ必要としている。 現在、米国側はアジアの超大国中国を「唖然とさせ」続けようと、いわゆる「中国封じ込め」戦略を追求している。米国国防総省は未だに、「タイフォン・システム」のようなシステムで封じ込める、と考えているようだ。超高速近代兵器の点において、米国は(弾道兵器や極超音速滑空体、ラムジェット超音速やスクラムジェット極超音速ミサイルのいずれにおいても)、技術的、教義的にも遅れているにもかかわらず、である。
このシステムは組み立て式設計で成り立っており、2種類の地上配備型ミサイルが使用可能である。一つ目のミサイルは先述の「トマホーク」であり、もうひとつはSM-6 ミサイル(より具体的に言うとRIM-174Bミサイル)である。後者のミサイルは、射程距離が最大500キロの多目的ミサイルであり、防空・ミサイル防衛に加えて、対艦攻撃や地上攻撃兵器にさえ利用できるものである。しかし、トマホークのほうが破壊力に勝っているが、その理由の一つは射程距離が1600キロである点であり、さらにW80熱核弾頭を搭載できる点もあげられる。これらのミサイルは可変出力兵器であり、広島に落とされた原爆の最大10倍の破壊力を有する。つまり、かつてのGLCM (地上発射巡航ミサイル。公式名称はBGM-109G「グリフォン」)が事実上復活した、ということになる。「タイフォン」という名前が使用されていることからも、このミサイルは「グリフォン」の後継ミサイルであることが示唆される。
さらに、この名前が使用されるということは、まさにこの二つの語が似ている異常の意味が象徴されていることも忘れてはいけない。この「タイフォン」という単語自体、言葉遊びのように見える。というのも「タイフーン(台風)」という語に似ているからだ。つまりこのシステムの主要目的は、台風のように、中国領内のアジア・太平洋地域沿いの標的を壊滅することを暗示している、ということだ。その目的に向かって、米国国防総省はアジア・太平洋地域各地に自軍の影響力を広げつつある。その動きの中には、米国海兵隊による「トマホーク」発射機の配置も一例として挙げられる。それは、既に米海軍が無数の海上配備発射台を有している中でのことだ。先述のとおり、これら全ての動きは明らかに、中国を敵国の軍事基地や軍の基盤施設で取り囲もうという組織的な努力を浮かび上がらせるものであり、これに対して中国は反応を余儀なくさせられることになる。アジアの超大国中国が、平和に向けた話し合いや緊張緩和を優先しようとするかもしれないが、どうやってもそれは実現できないかもしれない。中国側が、米国は文明的かつ外交的努力に敬意を払おうとしていないと結論付けてしまえば、特にそうだろう。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS http://tmmethod.blog.fc2.com/
の中の「中国を仮想敵国とした日米軍事演習:「タイフォン兵器システム」を「一時的に」配置。中国に敵対し緊張を高める日本」(2025年10月3日)
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また英文原稿はこちらです⇒Confronting China, US-Japan War Games: ‘Temporary’ Deployment of US ‘Typhon Weapon System'(TWS). Escalation of Tensions with China
筆者:ドラゴ・ボスニック(Drago Bosnic)
出典:グローバル・リサーチ 2025年9月14日https://www.globalresearch.ca/deployment-us-typhon-japan-escalates-tensions-china/5900313