【連載】紙の爆弾

“投資の神様”ウォーレン・バフェットの光と闇

浜田和幸

※この記事は、(月刊『紙の爆弾』2025年8・9月合併号掲載。最新号情報はホームページ https://kaminobakudan.com/)転載です。

 

「投資の神様」が日中企業株を買い増す理由

 「投資の神様」の異名をとり、個人資産は1700億ドルを超えるウォーレン・バフェット氏が、トランプ大統領の関税政策について、「世界を敵に回す暴挙で、政策としても大失敗になる。特に、中国との関税戦争は最悪の結果をもたらしかねない。関税を戦争の武器にするような政策は世界を不安定化させるだけなので、断固反対する」と批判し、「各国が得意の分野で実力を発揮し合うことで、世界経済は発展する。自由貿易こそが最強の武器だ」と主張しています。と同時に、「自分はアメリカに生まれて幸いだった。250年の歴史を通じて、何もない土地を世界最強の大国に変貌させた。それを成し遂げたアメリカ企業にはまだまだ成長余力がある。しっかり見極め、これからも世界をけん引する企業を応援したい」と前向きな姿勢です。

 そんなバフェット氏は、先見性と技術力を有するアメリカ企業の株を長期保有することを投資の眼目に据えています。彼が率いる世界最大級の投資会社「バークシャー・ハザウェイ」は、そうしたバフェット氏のお眼鏡にかなった企業として、アメリカン・エキスプレス、バンク・オブ・アメリカ、アップル、コカコーラ、シェブロンなど200社余りの企業の株を、大量かつ長期に保有してきました。

 しかし、近年、例外的に海外企業の株にも熱い視線を注ぐようになってきたようです。たとえば中国の電気自動車BYDや、日本の5大商社の持ち株比率をこのところ大幅に増やしています。

 バフェット氏夫妻は離婚する前のビル・ゲイツ夫妻と揃って中国や日本を旅行していました。そうした体験を通じて、バフェット氏は中国の潜在的な成長力に注目するようになったようです。いわく「将来、中国はアメリカを抜いて世界最大の経済大国になる。過去50年、60年に中国が成し遂げたことは奇跡といえるほどだ。8億人を貧困の極みから救ったのだから。しかし、理解すべきは、中国人はアメリカ人と同じように刻苦奮闘し、目前の奇跡を手にしている事実だろう」。

 中国の発展を象徴するBYDは、ヨーロッパやアジア市場でも製造拠点や販路を拡大してイーロン・マスク氏が率いるテスラを追い抜き、今や世界最大の電気自動車メーカーにのし上がっています。ハンガリーでも最新の製造工場を立ち上げたばかりです。

 そうした中国の明るい未来を語る「投資の天才」は、中国で絶大な人気を博しています。特に、新興財閥や暗号資産会社の経営陣からは、まさに「神様」のように崇められる有様です。そのことを象徴的に表しているのが、毎年恒例の「バフェット氏との昼食会」における競争入札にほかなりません。これはアメリカでバフェット氏と独占的にランチを共にする権利を巡っての競争入札ですが、過去10年余り、最高値で落札してきたのはほとんど中国の若き大富豪ばかりです。1回の昼食代が1億円を超えることはざらで、5億円を突破することもあります。バブルそのものですが、中国政府も「バフェット氏の長期的な投資戦略は中国企業の追い風になる」と好意的な見方を示してきました。そんな昼食会からは「中国のバフェット」と呼ばれるような投資家が続々と誕生しています。

 一方、バフェット氏は2020年から三菱商事・丸紅・三井物産・伊藤忠商事・住友商事の株を保有するようになり、今年4月の時点で、これら日本の商社株の持ち株比率を10%近くまで引き上げたことを明らかにしました。しかも、同時に総額900億円に達する円建て社債も発行しています。

 一般的には、日本経済はデフレ圧力や高齢化、企業の競争力の低下など、市場での評価が国際的に低迷しているように受け止められています。にもかかわらず、バフェット氏が日本の企業にそこまで肩入れする理由は何でしょうか。バフェット氏によれば、「日本の総合商社は多様な業種の産業に関与しており、世界的なサプライチェーンを保有している強みがある」とのこと。さらには「地政学的なリスク分析に長けており、貿易摩擦に対する高い耐性を備えている。また、自社株買いや株主への配当を積極的に行なっている」とも評価。言い換えれば、日本の商社にはトランプ関税に対する抵抗力が備わっていると分析しているわけです。

 世界的には一方的な“トランプ関税砲”によって不確実性が急速に高まっているように見られますが、「投資の神様」の見方では、日本は例外的にサバイバルする条件を整えていることになります。実際、名目賃金上昇率も過去30年で最高水準に達していることもあり、投資家目線では、日本株への期待値がかつてないほど高まっているというわけです。

 そうした背景もあり、去る5月に開かれたバークシャー・ハザウェイの株主総会では、バフェット氏本人が「日本の商社株を今後50年にわたって保持し続ける」と太鼓判を押していました。日本の投資家にとっては実に心強い応援団といえるでしょう。

突然の現役引退宣言

 先の読めない時代でも、バフェット氏の先読み投資戦略は天才の域に到達していると言わざるを得ません。8月に95歳になりましたが、個人資産は世界のトップ5。ほかの大富豪と比べ、圧倒的に多額の資産を慈善事業に投入しているため、総合的に判断すれば、間違いなく世界一の資産家といえるでしょう。

 しかも、イーロン・マスク氏やビル・ゲイツ氏などの製造業と違い、市場の動向や消費者の関心を分析し、長期的な投資で歴史に残る大成功を収めてきました。毎年恒例の株主総会では、出席者からの質問に自ら答え、5時間でも6時間でも丁寧な対応をすることで知られています。

 ところが、5月の総会では想定外の重大発表がありました。「2025年末をもって会長の座を降りる」との発言です。60年間にわたりネブラスカ州オマハを拠点に投資ビジネスを展開し、「あの世に行くまで現役で働く」と豪語していたバフェット氏の、突然の現役引退宣言には世界中の投資家がビックリしたに違いありません。なにしろ、11歳の時に初めて株を買って以来、83年間、株の売買の世界で生き抜いてきたバフェット氏です。今年3月、彼の会社の資産が1兆ドルを突破する偉業を成し遂げたばかり。

 バフェット氏が引退の決断に至った背景は何だったのでしょうか? 彼は来年以降の経営の舵取りを副会長のグレッグ・アベル氏(62歳)に譲るとも発表。アベル氏はすでに25年以上、バフェット会長を支えてきており、禅譲に問題はなさそうです。

 バフェット氏は冒頭に述べたように、トランプ大統領の関税措置には猛反対しています。根っからの民主党支持者で、株主総会にも顔を出すことの多かったオバマ大統領やヒラリー・クリントン元国務長官に感謝し応援してきた一方で、バイデン前大統領やハリス副大統領とは距離を置いてきました。要は、“政治不信”がかつてないほど高まっているようなのです。これまで所有していたバンク・オブ・アメリカの株式70億ドルを手放したのも、そうした背景があってのことでしょう。優良株の長期保有を投資の大原則にしてきたバフェット氏がアメリカを代表する金融株に見切りをつけたのです。加えて、アップルもほぼ半分にあたる500億株を売却。どう考えても、迫りくるアメリカの経済破綻を回避する手立てを講じようとしているに違いありません。

 さらにいえば、独自のルートで入手している情報で、トランプ大統領の先行きに見切りを付けた可能性もあります。そもそも、すでに分裂国家の様相を呈しているアメリカです。傍若無人のトランプ政権の行方に、これまで以上に危機感を抱いているとしか思えません。日本では想像ができないかもしれませんが、バフェット氏のような先を読み、投資で大儲けを重ねてきた人物の言動には要注意でしょう。

 いずれにせよ、バフェット氏は年内に引退する際に、保有する資産の99%を慈善団体に寄付するとも明言しています。世界一の大富豪でも質素な生活スタイルを続けており、住まいは1958年に3万1500ドル(当時のレートで約1100万円)で購入した地味な2階建て。食生活も贅沢とは無縁で、大好物のピーチ味のコカコーラとUTZのポテトチップスが欠かせないとのこと。「自分は6歳の子どものように食べる」というのが口癖です。

 なお、日本の総合商社の株を大量に保有していても、和食は苦手のようです。かつてソニーの盛田昭夫社長に招かれ、ニューヨークの高層マンションで寿司職人が腕を振るった豪華なメニューを前にして、全く手を付けなかったそうです。「生の魚はとても食べる気になりません。身体が受け付けてくれないのです」と平謝り。呆れる盛田社長に別れを告げると、その足で近場のマクドナルドに飛び込み、空腹を満たしたとのこと。いわく「自分は一生涯、刺身も寿司も御免こうむりたい」。

 また、バフェット氏はビル・ゲイツ氏に誘われて中国にも何度か足を運んでいますが、中華料理にも辟易だそうで、緊急避難場所として各地のマクドナルドに駆け込んでは一命を取り留めたと笑い話のように語っています。

 そこまで自分の食生活にこだわるのも珍しい生き方だと思いますが、それ以外に健康長寿と投資の大成功の秘訣について問われたバフェット氏の言葉は身に沁みるものばかり。第1、よく眠ること。最低8時間は熟睡します。良い眠りは長生きの元です。第2、週2回はトランプでゲームを027楽しむこと。記憶力を維持する上で欠かせません。第3、予定表には常にゆとりを。ギシギシのスケジュールはご法度です。自分の自由になる時間ほど大切なものはありません。第4、読書を欠かさないこと。毎日5、6時間は本を読み、自分の頭で考えます。ビジネスや投資のチャンスを得るヒントを得ることになるからです。第5、感謝の気持ちを持ち読けること。食事や運動よりも大切です。家族や同僚、周りの人々があっての自分ですから。自分が愛する人や自分を愛してくれる人をどれだけ身近に見出せるかが人生の成功を決める最大の要素です。

 1965年に倒産寸前の繊維会社を買収し、失敗と成功を繰り返しながら、今では資産価値1兆ドルを超える超優良会社に成長させたバフェット氏の生き方から、学ぶべき点が多くあるのは事実でしょう。

バフェット人脈と「9・11テロ事件」

 こうして見てくると、天才投資家の投資戦略にしても人柄にしても、世間的には好意的な受け止め方が主流となっているように思えてなりません。しかし、バフェット氏ほどの戦略家であれば、裏の顔を隠し持っていたとしても不思議ではないでしょう。

 そこで、バフェット氏が表向き話題にしない情報を整理してみました。そこからは意外なほど裏の世界と結びついてきた「闇の部分」が浮かび上がってきます。

 たとえば、世界を震撼とさせた2001年の「9・11テロ」。中東のテロリストらがハイジャックした旅客機をニューヨークの世界貿易センタービルに相次いで激突させた事件とバフェット氏が関係していたとすれば、皆さん、どう思いますか?

 あの事件の当日、バフェット氏はオマハの自宅でテレビを通じてテロ行為を知ったといわれています。しかし、偶然かもしれませんが、バフェット氏はあの世界貿易センタービル内に投資顧問会社を構えていたアン・タトロック女史を、9月11日にオマハで開催されたチャリティゴルフイベントに招いていたのです。同大会はオマハにある米空軍の戦略司令本部の基地内で行なわれることになっていました。タトロック社長の会社は2号館の上層階にあり、誘いに応じていなければ、彼女は間違いなく犠牲になっていたはずです。

 また、あまり表になっていませんが、この会社は世界貿易センタービルの所有権を持つニューヨークとニュージャージー両州の港湾局からも顧問契約を得ていました。何やら不思議に絡み合ったバフェット人脈が読み取れます。

 そのほかにも、当日、バフェット氏はニューヨークから親しい友人を何人もオマハに招待していました。そのおかげで友人らは皆、テロの犠牲にならずにすんだとのこと。しかも、テロ事件が発生した直後、当時のジョージ・ブッシュ大統領が身の安全を確保するため、大統領専用機エアフォースワンで飛来したのが、このオマハにある米空軍基地でした。そうした米軍にとって重要な拠点を自らのチャリティ・ゴルフ大会の会場に設定し、長年にわたり利用してきていたわけです。

 その後も、次々と奇妙な事実が判明しました。その1つが、9・11事件の真相究明委員会の責任者に指名されたニュージャージー州元知事のトーマス・キーン氏です。このキーン氏は、タトロック女史の会社役員を長年務めていた人物なのです。しかも、ハイジャック犯たちがサウジアラビアを中心に中東諸国からアメリカに入国し、飛行機の操縦を学んだ訓練学校の「フライトセーフティ・インターナショナル」は、バフェット氏が経営していたのです。

 パイロットの訓練と養成に関して世界最大規模を誇る学校で、登録書類には、ハイジャック犯たちはサウジアラビアの航空会社から派遣されていたと記載されていましたが、真っ赤なウソでした。また、別のハイジャック犯が通った飛行訓練学校もバフェット氏が関与していたことが判明しています。

 さらに疑問が寄せられているのが「サン・トラスト銀行」とバフェット氏の関係です。日本では聞き覚えのない銀行ですが、9・11テロのハイジャック犯のほぼ全員が口座を開設していました。しかも、偽の社会保障番号を使っての違法な口座開設だったようです。ニューヨークタイムズ紙の調査によれば、ハイジャック犯はサン・トラスト銀行に14の口座を開設し、32万5000ドルを本国から送金させていました。注目すべきは、バフェット氏の投資会社が保険業に深く関与していることです。9・11テロをきっかけに、アメリカのみならず世界的に「テロや戦争への予防策」としての保険の売り上げが急増。2001年のテロ直後にはバフェット氏の保険業務も影響を受けたようですが、その後は「テロの再来」や「戦争の激化」に備えた保険のニーズが高まり、バフェット氏の投資会社は大きな利益を生み出しています。

 世界を恐怖に追い込んだ9・11事件ですが、バフェット氏の前後の動きを観察すれば、何やら巧妙に仕組まれた側面も浮かんできます。まだまだ闇の中に隠された真実が日の目を見ることは難しいかもしれませんが、表のきれいごとでは説明できない、裏の取引や利害関係がはびこっている可能性にも目を向ける必要がありそうです。

 

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浜田和幸(はまだかずゆき)

国際政治経済学者、元参議院議員。国際未来科学研究所を主宰。メルマガ「ぶっちゃけ話はここだけで」はまぐまぐ大賞(政治経済部門)を連続受賞。

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浜田和幸 浜田和幸

国際未来科学研究所代表、元参議院議員

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