男女格差問題―意識の低い日本の政治と社会―
政治日本は、女性の社会的地位においては後進国であると言われてきた。しかし、それは殆ど是正されず、逆に地位を下げてきているという現実がある。
2022年7月13日、テレビで発表されたのは、スイスのシンクタンク、世界経済フォーラム(WEF)による結果だが、各国の男女平等度を順位付けした2022年版の「男女格差(ジェンダーギャップ)報告」で、日本は調査対象146カ国中116位だった。
勿論、主要7カ国(G7)、「東アジア太平洋地域」19カ国のいずれでも最下位である。2018年は110位、2019年は、153ヵ国中121位で、状況は改善されず悪化しているかと思われる。
それは、政治家の発言に顕著に表れている。残念ながら、政権与党である自民党議員の発言が圧倒的に多く、かつ内容も酷い。インターネット上のアンケート調査で、2019年は1位麻生太郎財務大臣兼副総理、2位安倍晋三首相、3位平沢勝栄衆議院議員であった。2020年は、杉田水脈衆議院議員の「女性はいくらでも嘘をつける」がワースト一位である。
「待機児童、待機児童っていうけど、世の中に待機児童は1人もいない。子供は皆お母さんと一緒にいたいもの、待機しているのは預けたい親でしょ」と待機児童問題を揶揄する発言もしている。レイプ被害の女性にとって声をあげることさえ辛く、大変な勇気が要る。嘘つき呼ばわりされてどれほど傷つくことか。
同じ女性政治家が、性被害者の女性や働かなければならない状況にある母親達に投げつける心ない台詞に驚くが、杉田氏が過激なことを言えば言うほど出世していったという事実もあるらしい。男性陣が喜ぶことを言う、男性に媚びる女性が、政治家として出世する地盤が日本の政治界にあるという問題を露呈しており深刻だ。杉田氏に対する市民の抗議署名13万筆の受け取りを自民党は拒否した。
自身の身に置き換えて考えることのできない人間が政治を担っていることは日本に取って不幸なことである。何より問題は、そのように圧倒的に差別発言が多い自民党が国民に支持され続けるという事実であり、日本社会が女性差別に鈍感でそれを許しているという現状を示している。
男女格差世界ランキングで後進国であり続けるのも納得である。ただ、自分自身を省みるに、自分のまわりで常識のように存在する、男性が先で女性があとや、男性がリーダーで女性は従うというような、暗黙の女性差別に対して自分がどれくらい抗議をしてきたかというと、余りしてこなかったと思う。
例えば、高校教員時代に男子が先、女子があとの出席簿に、大学教員時代に委員会の長が殆ど男性であることに、疑問に思うことがなかった。ある意味、男性が女性より社会進出する状況を抵抗もせずに受け入れてきたように思う。特に自分自身のことになると、まぁ、いいか、みたいな許容の仕方をしてきた。
そうした自分では寛容なつもりでいた姿勢が、男女差別を助長するものであったのだが、面倒くさかったり、抗議するエネルギーを他のものに転換することで解消するということが私のなかにあったように思う。これは結局、差別する男性への媚びになることでもあったのだが。抵抗する女性達の足を引っ張る行為でもあったのだが。
男女平等を求める姿勢は多様性を認める姿勢へと繋がっている。上記の自民党議員はLGBT問題に関しても差別発言を繰り返している。弱者の苦しみに鈍感で、差別やヘイトに対処するどころか、逆にあおるような発言を平気で行う、そのような政治家の存在を許さないためにも、自身に対する差別を自分が許容してしまう姿勢を自分に許さないことをこれから意識していかねば、他の人の差別発言に鈍感になってしまうと思った次第である。
男女平等や多様性を阻害する政治家を許さないためにも、女性である私自身が、男女格差問題に対して、自分自身の問題として敏感にならなければならないと思う。
●「ISF主催公開シンポジウム:参院選後の日本の進路を問う~戦争前夜の大政翼賛化」(8月27日)のお知らせ
※ご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
独立言論フォーラム・理事。沖縄県那覇市生まれ。2019年に名桜大学(語学教育専攻)を退官、専門は英語科教育。現在は非常勤講師の傍ら通訳・翻訳を副業とする。著書は「沖縄の怒り」(評論集)井上摩耶詩集「Small World」(英訳本)など。「沖縄から見えるもの」(詩集)で第33回「福田正夫賞」受賞。日本ペンクラブ会員。文芸誌「南瞑」会員。東アジア共同体琉球・沖縄研究会共同代表。