日航123便墜落事故(第25弾):事故当日に信濃毎日新聞が号外を発行した時刻と、テレビ東京が流した第一報の情報源について
社会・経済今回の記事では、事故当日に信濃毎日新聞が号外を発行した時刻と、テレビ東京が流した第一報の情報源について述べる。
・事故当日に信濃毎日新聞が号外を発行した時刻について
まず、事故当日に信濃毎日新聞が号外を発行した時刻について述べる。
私の第一弾目の記事「日航123便墜落事故と時事通信、共同通信、NHK」でも述べたが、事故当日、信濃毎日新聞は号外を出している。
この号外については、2022年に私がワタナベケンタロウ氏に情報提供したところ、ワタナベ氏は自身の動画で取り上げてくださった。(https://m.youtube.com/watch?v=mtbLkL2VDYw)
また、同年、青山透子氏にも同号外について情報提供したところ、青山氏も自身の著書『JAL裁判』で取り上げてくださった。私は両氏に深く感謝している。
さて、同号外には墜落現場について、以下の通り書かれている。
≪臼田署に入った情報によると、墜落現場は、長野県境の群馬県・上野村の山中とみられる。≫
上記の記述から、臼田署と信濃毎日新聞は「墜落現場は上野村の山中とみられる」という情報を事故当日に入手していたことがわかる。
では、双方に当該情報が入ったのは事故当日の何時ごろだったのだろうか。
実は、今回、信濃毎日新聞が同号外を発行した時刻がわかる資料を発見したので紹介する。
1985年8月15日付『新聞之新聞』(新聞業界の業界紙)1面に以下の通り記載されている。
≪信毎は3回、9万余部発行中日など4紙も
地方紙では、信毎、中日、北陸中日、神奈川(朝刊単)、日刊新愛媛(同)などが十三日の夕刊前に号外を発行したが、特に信毎では十二日午後八時(ペラ片面、長野本社八千部、松本本社三千部)、十三日午前七時四十五分(両面、長野三万二千、松本二万六千)、同午後零時五分(同、長野一万二千、松本一万)の刷り出しで三回、計九万一千部を発行した。≫

上記の記述から、信濃毎日新聞は事故当日の20時に号外を発行したことがわかる。
そうなると、当然のことではあるが、臼田署と信濃毎日新聞は「墜落現場は上野村の山中とみられる」 という情報を20時以前には入手していたことになる。つまり、双方ともに、事故当日の19時台の段階で正確な情報を入手していたことになる。
少なくとも臼田署と信濃毎日新聞には、早い時点で正確な情報が入っていたのにもかかわらず、その情報がほとんど生かされなかったのは一体なぜだろうか。偶然、運悪く生かされなかっただけである可能性もあるのかもしれないが、情報統制があった可能性も十分にあるだろう。
信濃毎日新聞が同号外に関する詳しい情報を発信してくださることを願っている。
・テレビ東京が流した第一報の情報源について
次に、事故当日にテレビ東京が流した第一報の情報源について述べる。
私の第七弾目の記事「日航123便墜落事故:他社に先がけて第一報を流したのはフジテレビだった」では、1985年8月20日付『電波タイムズ』5面記事を紹介した。
同資料には、事故当日のテレビ東京に関する情報も書かれている。具体的には、以下の通り記載されている。
≪テレビ東京では、第一報として、午後七時二十八分、「スーパーニュース(テロップ)」で「東京発大阪行の日航123便が長野県佐久市周辺でレーダーから消えた」と報道、その後も午後十時からの「納涼ゆかた寄席」の時間ワクに特別番組を組み、詳細を伝えた。≫

上記の情報から、テレビ東京は第一報として19時28分に「長野県佐久市」という具体的な地名を含むテロップを流したことがわかる。
では、その情報源は何だったのだろうか。
まず、時事通信のフラッシュが情報源であった可能性を検証する。
時事通信の第一報のフラッシュについては、時事ドットコムの記事「御巣鷹の真実 日航ジャンボ機墜落事故」に、以下の通り記載されている。
≪ジャンボ機墜落をすべての報道機関に先駆けて報じたのは時事通信だった。1985年8月12日午後7時13分、「東京発大阪行きの日航123便がレーダーから消えた」の衝撃的なフラッシュ。≫
また、時事通信の第二報、第三報については、『日本記者クラブ会報』第426号掲載の天野岩男氏による記事「日航ジャンボ機墜落① 『レーダーから消えた』 特ダネと知らずにフラッシュ」に、以下の通り記載されている。
≪次いで7時20分、「横田から34マイルの地点で墜落確認」。第3報は「乗員乗客は524人」。≫
これらの情報から、テレビ東京の第一報の情報源が時事通信のフラッシュであった可能性は低いと考えられる。なぜなら、仮に時事通信が「123便は長野県佐久市周辺でレーダーから消えた」とするフラッシュを19時20分から19時28分までのあいだに流していたとしても、そのフラッシュを情報源としたテロップを19時28分に流すのはほぼ不可能と考えられるからである。
次に、共同通信の速報が情報源であった可能性を検証する。
共同通信の第一報については、共同通信の社史『共同通信社50年史』に以下の通り記載されている。
≪共同は12日午後7時25分、防衛庁、警視庁、運輸省担当の記者からの情報に基づき「日航機がレーダーから消えた」と速報*。≫
上記の情報から、テレビ東京の第一報の情報源が共同通信の速報であった可能性も低いと考えられる。その理由は、時事通信のフラッシュが情報源であった可能性が低い理由と同様である。
テレビ東京が流した第一報の情報源が時事通信のフラッシュでも共同通信の速報でもなかったのであれば、その情報源は一体何だったのだろうか。
テレビ東京の記者が運輸省関係者や防衛庁関係者などから直接入手した情報だったのだろうか。
テレビ東京が当時の記録を公表してくださることを願っている。
・付記:日本テレビが放映した武田峻氏の重要な発言について
今年の夏、日本テレビは事故当日に日本テレビで放送されたニュースの映像をYouTubeで公開した。
【あのときのニュース速報】日航機墜落 40年前…突如消えた123便 「御巣鷹」とは報じられなかった
https://m.youtube.com/watch?v=f7RXlfThaoY
実は、日本テレビに関連した貴重な情報が、日本乗員組合連絡会議の公式サイトで以前公開されていたので紹介する。
以前、日本乗員組合連絡会議は『日航123便に急減圧はなかった』というパンフレットの内容を公式サイトに掲載していたのだが、当該パンフレットには以下の情報が記載されている。
≪事故調は毎分28万ftの急減圧があったとすれば、乗員らは減圧を直ちに感知せず、緊急降下もせず酸素マスクを着用しなかった事実は乗員らにとっては考えられないことである。この点については当時の事故調査委員長は「酸素マスクをつけるよりもっと重大なことがあったと考える」と述べ(’94.2.6 日本テレビ放映)、「その理由を明らかに出来なかった」と究明を放棄していた報告書の内容を訂正した。≫
なんと、当時事故調査委員長であった武田峻氏が「酸素マスクをつけるよりもっと重大なことがあったと考える」と述べた映像が1994年2月6日に日本テレビで放映されたというのである。
武田氏の当該発言は重要である。日本テレビがYouTubeで当該映像を公開してくださることを願っている。
【参考文献】
- 小幡瞭介. “日航123便墜落事故と時事通信、共同通信、NHK(市民記者記事)”. ISF独立言論フォーラム. 2024年1月24日公開. https:/isfweb.org/post-32490/(参照 2025-11-24)
- 日航ジャンボ機墜落. 信濃毎日新聞. 1985-08-12, 号外, p.1.
- ワタナベケンタロウ. “【日航機墜落事故86】これまでの定説が崩れる小幡氏の発掘資料”. YouTube. 投稿日:2022-10-07. https://m.youtube.com/watch?v=mtbLkL2VDYw(参照 2025-11-24)
- 青山透子. 日航123便墜落事件 JAL裁判. 河出書房新社, 2022, p.283-286.
- 信毎は3回、9万余部発行 中日など4紙も. 新聞之新聞. 1985-08-15, p.1.
- 小幡瞭介. “日航123便墜落事故:他社に先がけて第一報を流したのはフジテレビだった”. ISF独立言論フォーラム. 2024年8月1日公開. https://isfweb.org/post-40914/(参照 2025-11-24)
- 次々と30分特番打つ 現場は四班で立体取材. 電波タイムズ. 1985-08-20, p.5.
- 安達功. “御巣鷹の真実 日航ジャンボ機墜落事故”. 時事ドットコム. 2010-02-08. https://www.jiji.com/sp/v4?id=ostakanoshinjitu201601130001(参照 2025-11-24)
- 天野岩男. リレーエッセー 日航ジャンボ機墜落① 「レーダーから消えた」 特ダネと知らずにフラッシュ. 日本記者クラブ会報. 2005, 426, p.9. https://s3-us-west-2.amazonaws.com/jnpc-prd-public-oregon/files/2005/08/jnpc-b-200508.pdf(参照 2025-11-24)
- 共同通信社社史刊行委員会. 共同通信社50年史. 共同通信社, 1996, p.441-445.
- 日テレ “【あのときのニュース速報】日航機墜落 40年前…突如消えた123便 「御巣鷹」とは報じられなかった”. YouTube. 投稿日:2025-08-12. https://m.youtube.com/watch?v=f7RXlfThaoY(参照 2025-11-24)
- 日本乗員組合連絡会議. “はじめに”. 日本乗員組合連絡会議 (Wayback Machine).https://web.archive.org/web/20100113125129/http://www.alpajapan.org/kannkoubutu/genatsu/PRE1.HTM (参照 2025-11-24)
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