【特集】沖縄の日本復帰50周年を問い直す

琉球弧の悲劇―軍事基地化を止めぬ日米政府―

宮城恵美子

【はじめに】

何でもかんでも沖縄に強いるのか。この前の沖縄戦では、天皇国体護持が戦後も可能なように長野県松代の拠点化を目指し、拠点建設完成を見届けてから終戦を承諾するという時間稼ぎが必要であった。その為に沖縄での戦闘を長びかせた。

圧倒的兵器を所持する米軍を小島の沖縄に留め置かせ、逃げ場のない一般民を盾にしたことで日増しに戦死者を増やした。沖縄の人命損失やむなし、戦闘継続こそお国を守る為に大事と、政府方針を敷いたことを反省した言葉は無い。

Okinawa Prefecture and prefectural capitals, cute hand-drawn style map

 

終戦直後は日本国憲法を設け、民主化が始まる気配があったが、たちまち「逆コース」に向かった。日本は連合国といってもソ連、中国、インドなどを除く米国を中心とする国と「片務的な講和条約」を結び、沖縄を切り離した上で独立した。

そして米国は朝鮮戦争の最中であり、講和条約の他に日米安保条約を国会論議も経ずに吉田茂首相のみの調印で成立させた。後の国会追及をかわしながら安保は定着した。

安保が朝鮮戦争中にしかもマグルーダー陸軍少将という米軍人が原案を書いた条文であること、内実は朝鮮戦争協力体制の維持であること、しかも今も朝鮮戦争自体、休戦で終結していないこと、それにより現在も米軍は日本には戦争協力体制としての安保使用を求めているのである。

戦後、反共主義体制の中に日本を取り込み、その最前線に韓国、台湾、そして日本から離した沖縄を置いたのであって、沖縄が本土「復帰」しようが米軍直接統治であろうが関係なく、沖縄を軍事の場として利用する意思を米軍は捨てていない。

その証拠に、今、沖縄に米軍基地の過重負担を強いながら辺野古新基地建設を強要し、更に強力な軍事要塞化でもって琉球弧全体に襲いかかろうとしている。

辺野古・米軍キャンプシュワブ

 

【台湾有事は作られた危機】

2021年12月24日付の沖縄タイムス、琉球新報、南日本新聞の報道で、私たちの島が再び戦争の危機に直面していることを知った。記者の取材を受けた日米政府関係者が「台湾有事」の際に南西諸島(主に沖縄県)が中国に対する攻撃拠点となると証言したのだ。

China and taiwan tensions and war concept. Fighter aircraft silhouettes over a blurred map of taiwan with Chinese and USA flags on the background. Suitable for tensions between mainland China and Taiwan and Taiwan invasion

 

県民有志は報道のあった当日すぐに記者会見を行い、何らかの運動を作ると提案し、結果的に今年1月末に「ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会」(略称「ノーモア沖縄戦の会」)を結成して声を上げ始めた。

沖縄本島は太平洋戦争において日本で唯一、地上戦の場になり、地獄のような沖縄戦で全てが破壊され、県民の4人に1人が命を奪われた。戦後も長く沖縄の民意無視の軍事的な過重負担の強制に対して抗っている。現在は主に「辺野古新基地建設反対」を約20年近く闘ってきている。ここにきて台湾有事の戦争シナリオ、「日米共同作戦計画」の原案を示されたのである。戦争という直球を沖縄・琉球弧は投げつけられた。

okinawa japanese

 

沖縄等が攻撃拠点になれば、沖縄等は中国の反撃対象になり、県民の暮らす場がミサイル攻撃の標的になる。いわばこの作戦は日米政府が島の人々に対して「ためらわずに君たちの命を奪いに取り掛かるよ」と宣言したのに等しい。

「軍事機密」の中からわずかな手がかりでも得て、事態を把握して政府に軍事行動の停止を呼び掛けねばならない。資料は先にあげた新聞3紙、「台湾有事と日米共同作戦」(石井暁『世界』2022年3月)、「外交の智恵を尽くせ」(河野洋平『世界』2022年4月)、岡田充氏「台湾有事、作られた危機」(2022年6月26日、ノーモア沖縄戦の会講演会)等である。

【沖縄の価値観と逆の米軍政策】

日米共同作戦について石井暁氏は米軍との協議に当たる自衛隊幹部から21年6月に打ち明けられたという。それは「米軍が『台湾有事の日米共同作戦計画を早期に策定すべきだ』と自衛隊に強い圧力をかけてきている」というのである。米軍が圧力をかけて自衛隊は困惑しているということだ。更に「その原案には南西諸島に米軍の攻撃用軍事拠点を置くことも含まれている」という。

そして続けて、「(米軍)の頭の中には軍事的合理性しかない。日本の政策も国内法も関係ない。ましてや南西諸島の住民の存在など、はじめから考えていない」と述べている。

石井氏も述べるように、米軍側には、軍事上の「合理的選択」が優先され、人々の存在も人命への関心もないようだ。あたかもボードゲームを上から見下ろして兵士・コマンド・武器を並べて、ゲームに夢中な少年の姿、興奮している12歳の少年の姿が目に浮かぶ。

沖縄の人々に親しまれている言葉は「命どぅ宝」(ヌチドゥタカラ)である。その精神は平和を希求する強い思いである。「平和の礎」(ヘイワノイシジ)には米国、英国、朝鮮、台湾、中国、日本、沖縄と、沖縄戦関連で犠牲となったすべての人々、24万人余の名前を刻名し、命を尊ぶ、平和の思いを発信し続けている。

また沖縄県広報誌の中にも「心豊かで、安心・安全に暮らせる島」、「世界に開かれた交流の島」という沖縄の将来像を示している。「命どぅ宝」、つまり生命は誰にも譲り渡すことのできない最高の価値である。こうした沖縄の生き方に相反する軍事計画が、日米両政府によって、沖縄県民を犠牲にする形で、進行している。

【台湾危機を作る、米軍部の動き】

21年3月9日、米上院議院議会の軍事委員会で、前インド太平洋軍デービッドソン司令官が「中国が6年以内に台湾侵攻する可能性がある」と述べ、アキリーノ司令官は3月23日に「台湾侵攻は大多数が考えるより近い」と述べた。6年以内の期間についての説明はない。つまり侵攻切迫の具体的な根拠はないのである。だがいかにも中国が台湾に侵攻するかのような証言を2人のインド太平洋軍司令官はしている。

Rearview shot of a young soldier standing at a military academy and saluting

 

この時期は「2プラス2」(21年3月16日)の首脳会談の直前である。そこでまず台湾有事を煽り、日本世論に危機感を高める狙いがあったと考えられる。これが一つの要因ではないか。米国防予算は議会で議論されるから国防費予算増額を議会に承認してもらう必要性がある。中国軍の台湾攻撃が近いとあおることで防衛費増額を狙うのは、軍産複合体の国アメリカらしい予算の分捕り合いの餌に台湾を持ち出していると思える。

また、アメリカの力が相対的に衰退する中で、日本の支援無しには、中国を封じ込めることも容易ではないという米軍の認識もあるという岡田充氏の指摘はその通りだと考える。中国が台湾海峡に接近するのを止める、米の引いたラインから中国軍を封じ込めておくには日本の支援が必要ということだろう。

岡田氏は1番目に、これまで台湾問題で「脇役」だった日本を米軍と一体化させ「主役」に地位に踊り出させる。2番目に、日本の大軍拡と南西諸島のミサイル要塞化を加速し、更に米国の中距離ミサイル配備はまだ行われていないので、中距離ミサイル配備の地ならしをすることも狙っている。3番目に、中国を挑発することによって中国が容認できないとして武力行使を始める「レッドライン」を探ることも狙っていると述べている。

バイデン大統領の「インド太平洋戦略」は対中抑止が最重要課題と言われているが、岡田氏の指定する1番目から3番目まで、いずれも中国を米国が挑発して、「台湾有事」を作ることが確認できる。

日米軍事関係だけなく、対中抑止は、日米豪印4カ国の「クアッド」、米英豪3カ国の「オーカス」もあり、米の同盟国と友好国が共に「統合抑止力」を基礎に固めている。台湾海峡を含めて中国に対する軍事的な対中抑止の要に台湾を置いている。その台湾に隣接しているのが沖縄・琉球弧である。そして沖縄の価値観に真っ向勝負で挑んできている日米政府がある。

 

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宮城恵美子 宮城恵美子

独立言論フォーラム・理事。那覇市出身、(財)雇用開発推進機構勤務時は『沖縄産業雇用白書』の執筆・監修に携わり、後、琉球大学准教授(雇用環境論・平和論等)に就く。退職後、那覇市議会議員を務め、現在、沖縄市民連絡会共同世話人で、市民運動には金武湾反CTS闘争以来継続参加。著書は『若者の未來をひらく』(なんよう文庫2005年)、『沖縄のエコツーリズムの可能性』(なんよう文庫2006年)等がある。

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