【連載】データの隠ぺい、映像に魂を奪われた法廷の人々(梶山天)

第40回 法律無視が目立つ今市事件捜査

梶山天

今市事件が発生当時、DNA型鑑定は法医学者が行っていた。だとすると、優秀な裁判官なら、一審の裁判で裁判官たちは、検察に対して、「捜査機関以外の、学者である法医学専門家に確認していただいているんでしょうか」と質問するはずだ。

しかも鑑定を裏付ける解析データ(エレクトロフェログラムなど)の提出を行ない、それがわからなければ法医学者ら説明をしてもらうのがアンパイアとしての責務ではないだろうか。そうすれば早いうちに化けの皮が剥がれたかもしれない。

一審では勝又氏逮捕前後に行った検察側が粘着テープの鑑定結果は3回行なわれ、初回は被害女児だけのDNA型だけが検出されたとされていた。あとの2,3回目はいずれも被害女児のほかに鑑定を行った栃木県警科捜研の男性2人の汚染(コンタミネーション)が検出されたとされた。このため、犯人追及は難しいと説明したが。それは言い逃れではなかったか。真犯人は被疑者ではないと分かって証拠から外したのか、どうかだ。

ISF独立言論フォーラム副編集長の梶山天は敢えて断言すると、裁判官は法律のプロでありながら、自らの出世を優先させたことで道理に反した状況を作り出したといわざるを得ない。一審判決時、3人の裁判官のうち裁判長を含む2人が異動だった。粘着テープに多数のDNAがあろうが、汚染があろうが地道に型を見つけて引き算すれば答えは出てくる。

この裁判は殺人罪という人ひとりの人生と家族の名誉がかかったとても大事な裁判なのです。DNA鑑定は例え汚染があったとしても、その汚染を引き算をすれば真犯人がわかることも知らずに検察の噓の説明に騙されました。それが分からなければ恥をかいても、科学者である専門家に聞いてみればいいじゃないですか。知ったかぶりをして無実の人間の一生を破滅させるより、私は立派だと思う。

しかし、一連の裁判の訴訟指揮を見ると、警察の暴力も見て見ぬ振りをして、結果として容認してしまう裁判官たちにそれを期待するのは無理ということなのでしょうか。

連載「データの隠ぺい、映像に魂を奪われた法廷の人々」(毎週月曜、金曜日掲載)

https://isfweb.org/series/【連載】今市事件/

(梶山天)

 

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梶山天 梶山天

独立言論フォーラム(ISF)副編集長(国内問題担当)。1956年、長崎県五島市生まれ。1978年朝日新聞社入社。西部本社報道センター次長、鹿児島総局長、東京本社特別報道部長代理などを経て2021年に退職。鹿児島総局長時代の「鹿児島県警による03年県議選公職選挙法違反『でっちあげ事件』をめぐるスクープと一連のキャンペーン」で鹿児島総局が2007年11月に石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞などを受賞。著書に『「違法」捜査 志布志事件「でっちあげ」の真実』(角川学芸出版)などがある。

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