鳩山友紀夫・孫崎享・前川喜平・植草一秀著『出る杭の世直し白書―「なんでも官邸団」に成り下がった政財官を斬る!―』

高橋清隆

カルト権力による謀略によって社会の表舞台から引きずり降ろされた4人の有能な政治家・官僚・学者による対談をまとめた本。現下の日本社会の問題点を挙げ、世直しの方策を提言する。

扱う主題は、感染症対策や外交問題、脱酸素と脱原発、経済政策、教育など多岐にわたる。各分野の第一線にいた4人だから、裏事情まで知り尽くしていて説得力がある。ただし、新型コロナウイルスの脅威とCO2温暖化説を信じる立場から書かれており、私の見解と前提を異にする。

しかし、財政問題を論じた第4章「日本の財政と経済政策」と教育政策を論じた第5章「変わりゆく教育」には、共感する部分が多々あった。特に経済論では植草氏の本領が発揮され、「財政規律そのものは軽視しない方がいい」との立場を取りながらも、今回のコロナのように国民生活が打撃を受けるような局面では「必要に応じて財政政策発動も選択すべし」との主張が展開されている。

大規模な財政支出が可能だとする根拠は、政府のバランスシート(貸借対照表)。日本政府の債務残高は1100兆円を超えていると言われ、財務省が発表しているパンフレットでは592兆円の債務超過にあると説明されている。一方、内閣府の発表資料では99兆円の資産超過になっている。

両者の違いは、財務省の数値が中央政府だけなのに対し、内閣府の数値は地方政府と社会保障基金が含まれていることからくる。公共事業によって建設される道路や橋などの建造物の所有区分は、地方政府に入っている。「日本政府全体の財務バランスは、国と地方を合わせて見なければ、本当のところが分からない」と説き、この隠蔽(いんぺい)を財務省による「偽装的な工作」と指弾する。

教育論で前川氏は、多様性ある教育制度を提案する。小学校と中学校の不登校は第2次安倍政権から増え続けており、2020年では20万人を超える勢い。「学校で普通教育を受けることが適切でないと自ら判断する子供に対しては、別の場で普通教育を受ける機会の確保を保障することが必要」と主張する。

植草氏もこれに同調し、「憲法が定める教育の義務とは、子女に普通教育を受けさせる義務であって、子女に学校教育を受けさせる義務ではない」と指摘。普通教育法を制定し、学校を受け皿の1つとして位置付けるべきとの考えを示す。

第1章「新型コロナ対策は機能したのか」でも、注目すべき部分がある。植草氏は菅政権のコロナ対策を「後手後手」「小出し」「右往左往」と不徹底ぶりを批判しながらも、一方でジョンズ・ホプキンス大学などが19年10月に開催した「イベント201」やビル・ゲイツの「新ワクチンや保健医療、生殖関連で十分な成果を収めれば、(世界人口の増加を)10~15%に抑えることができるかもしれない」という発言を紹介する。

コロナ騒動について「その大きな目的がワクチンによって巨大な売上を確保するということがあっても、おかしくない」と述べ、計画的なものである可能性を否定していない。

前川氏もGo Toキャンペーンが「感染を拡大したことは間違いない」としながらも、安倍元首相による全国一斉休校について「感染拡大阻止に効果がなかったばかりか、的外れで非常に弊害が大きかった」と批判。「10代以下でコロナによって亡くなった子供は、今のところ日本では変異株も含めて1人もいない。学校を閉じないと子供の健康や安全を守れなかったかというと、そんなことは全くなかった」と両断している。

日本の主権者が政権交代の偉業を成し遂げた09年の総選挙から同年9月16日の鳩山政権誕生までの間、植草氏は身に覚えのない罪で東京拘置所に収容されていた。「おわりに」で植草氏は、「私は選挙の日程に合わせて身柄を拘束された」と政治謀略だったとの見方を示し、「鳩山氏に私信を繰り返し発信した」と明かす。

さらに「私は人物破壊工作によって社会的生命に甚大な攻撃を受けたが、全ての事案が正真正銘の冤罪(えんざい)事件である。真実は必ず明るみにしなければならないと考えている」と記す。私は06年9月の「京急事件」から同事件の取材を始め、裁判を全て傍聴した立場から、植草氏が無実であることを知っている。

第6章「政治と行政の再建」の中でも、「いずれ政権刷新を実現した暁に真実を明らかにしたい」と胸の内を吐露する。俗世の天国と地獄、権力の表裏を見てきた植草氏には、三権分立が虚構であることが身をもって分かっているからだろう。政権交代にかける並々ならぬ思いに心打たれる。

優秀すぎて日本社会の表舞台から葬られた4人の思いに耳を傾け、混沌とする今の日本政治を考察する一助として、ご一読を進める。

(※「高橋清隆の文書館」21年10月16日より転載)

高橋清隆 高橋清隆

反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。元ローカル新聞記者。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&K プレス)、『山本太郎がほえる~野良犬の闘いが始まった』(Amazon O.D.)など。翻訳にデーヴィッド・アイク『答え』第1巻[コロナ詐欺編](ヒカルランド)。2022年3月、メディア廃棄運動を開始。 ブログ『高橋清隆の文書館』http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/

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