【特集】統一教会と国葬問題

山上容疑者を誰が利用したのか、「国葬」で隠蔽される安倍暗殺事件の真相

青木泰

安倍晋三元首相が参院選投開票日2日前の7月8日、元自衛官・山上徹也容疑者の手製の銃による凶弾に倒れた。日刊ゲンダイは選挙結果を伝える7月11日号の1面に「争点消滅 元首相暗殺と自民圧勝」の見出しを打った。

事件が参院選に与えた影響は大きかった。当初から自公圧勝といわれていた選挙情勢だったが、選挙戦が進むなか、続く物価高騰による生活不安に岸田内閣の支持率は低下し、選挙の行方は見えなくなっていた。現在に続く長期のデフレをもたらしたのは間違いなく自公長期政権であり、参院選でも自公以外は消費税減税・廃止を掲げて、終盤の争点となりつつあった。

消費税の帰趨は、過去何度も選挙結果の大逆転をもたらしてきた。今回の選挙でも野党支持者に期待を抱かせていた。しかし、暗殺事件によって争点が消滅し、岸田政権は“逆転”を止めることができた。

マスメディアは各国首脳から送られた弔辞などを大きく報道し、安倍元首相の“功績”が流布された。選挙後には岸田首相が国葬の実施を宣言する一方、山上容疑者の母親が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の熱心な信者であり、1億円以上の献金によって家庭や生活が崩壊、旧統一教会への遺恨を動機として、山上容疑者が犯行に至ったと報じられた。安倍元首相の祖父・岸信介元首相から続く、旧統一教会との関係に世間の注目が集まった。

こうして暗殺事件は、国葬論と統一教会問題に絞られていった。

しかし、この事件では、現政権の最大派閥のボスが暗殺されたのである。しかも、要人警護のプロが指摘するように、SPがいくつもの失態を重ねていた。安倍氏に限らず、今後どのような政治家が演説会や街頭演説でテロの対象となっても不思議ではない。今回の事件の真相を放置したまま、国葬によって事件に終止符を打つようなことは、あってはならない。

 

・国会での真相究明が必要

山上容疑者は、昨年3月から銃の製造にとりかかり、完成させたという。要人暗殺に使用する銃を自分が作り上げ、実際に殺人を成功させた。まるで絵空事だが、本当に可能なのか?

Close up of shotgun fired and shell ejected from chamber

 

まったくの一から新しくモノを作る時には、あらかじめマニュアルがあったとしても、実際に完成させるまでには驚くほどの関所がある。パイプの穴の大きさ・素材の強度・耐熱性・散弾の挿入数・位置・火薬の量・発火装置の仕組み……。筆者自身、機械技術の部門にいた経験があり、まず不可能と考える。

たとえば劇画世界の天才スナイパー「ゴルゴ13」も、様々な場面で使い慣れた「M16」以外の銃を作り使用しているが、必ずプロに頼んでいる。銃に詳しい作者・さいとうたかお氏の一流のリアリティといえる。

銃をつくるバックアップ体制なくして、山上容疑者に暗殺を試みることは可能だったのか。まず浮かんだ大きな疑問点である。

もっとも重要な点は、仮にそのような凶器が手に入ったとして、警護体制を破り、現場に凶器を持ち込んだり、銃弾が届く距離に接近することができるのか、という問題だ。容疑者は手製の銃の試射を繰り返したというが、実際に使う場面をどのように考え、距離や的の大きさを想定したのだろうか。

しかも、彼にとって本当の標的は、旧統一教会の韓鶴子総裁だった。山上容疑者は彼女に近づくことを想定するも、それを不可能とみて、安倍氏を標的に変更したという。

警備上の失態については、元警視総監が「背後の警戒を怠った」「2発目まで3秒間あったのに、被警護者(安倍氏)に駆け寄ることもなかった」「周囲を道路に囲まれたオープンスペース=背後に遮蔽物の設置なし」「交通規制もなし」「背後の警備員は立ち位置が被警護者から離れすぎていた」との「五つの失態」(週刊文春7月21日号)を指摘している。

山上容疑者の供述として伝わってくることと、実際に暗殺が行なわれた実態を照らし合わせると、山上容疑者は殺意を持って手製の銃の作成に取りかかったが、具体策や標的に接近することの難しさは考慮していなかったようだ。事件前日の7月7日には岡山県での屋内演説会に出かけたが、警備が厳しいためにあきらめていた。

しかし奈良市内の現場では、“偶然”警備陣がありえない失態を重ね、山上容疑者が予定通り殺害を図ることができた、ということになる。話が出来すぎていないか? この点でも疑問が重なる。

もう一つ。今回の暗殺事件は「政治的背景がない」と本当にいえるのか? 暗殺はマスメディアの関心を選挙から遠ざける仕掛けといえないか。その意味で、前述した日刊ゲンダイ「争点消滅 元首相暗殺と与党大勝」の見出しは、事態を的確に捉えたものだと思う。

安倍政権以降、マスメディアによる自公への加担は目に余るものがある。選挙公示直後には大新聞が当然のように1面トップで「与党優勢」などと報道する。大事な選挙戦が始まり、選挙への関心を高めて投票参加の増大を図らなければならない時に、マスメディアは水をぶっかけるような報道を行なってきたのである。それが低投票率を招き、大組織を抱える与党勢力の勝利に大きく寄与してきたことは周知の事実だ。

さらに、最近では国政選挙の最終盤に、選挙報道を押しのける大事件が起きる不思議な現象が続いている。

たとえば前回2019年の参院選、7月21日の投開票日前の18日に、「京都アニメーション」で放火事件が発生。埼玉県に住む犯人が、前日から京都に入ってガード下に泊まり、ポリ容器に入れたガソリンを台車で運んで放火、死者36人、重軽傷34人という大惨事を起こした。

さらに同月20日には、お笑い芸人「雨上がり決死隊」の宮迫博之が“闇営業”について謝罪会見。前日に吉本興業は、宮迫との契約解消を発表していた。二つの事件でマスメディアは、選挙報道どころではなくなった。

今回の“安倍暗殺”の衝撃は、前回の参院選以上のものだ。結果、岸田政権は大勝を得た。もちろん、選挙があったから安倍氏は演説し、事件が起きたわけだが、その警備態勢は、あえて暗殺を許したと非難されても仕方がないほど杜撰なものだった。事件に本当に“政治的背景”はないのか。真相究明が不可欠である。

 

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青木泰 青木泰

環境ジャーナリスト。NPOごみ問題5市連絡会幹事。環境行政改革フォーラム、廃棄物資源循環学会会員。著書『引き裂かれた絆』(鹿砦社)など。

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