メールマガジン第52号:現実味帯びる沖縄の戦争、立候補者は真剣な議論を
ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会メルマガ琉球・沖縄通信●今週の南西諸島軍事強化トピックス(8月22日~28日)
8月22日(月)http://nomore-okinawasen.org/2513/
◇長射程弾1000発超検討 政府 防衛費の膨張懸念も 事項要求100項目規模(沖縄タイムス 2022.8.22)
◇南西諸島防衛の実戦想定 継戦力重点 野党は警戒(沖縄タイムス 2022.8.23)
◇防衛費、6兆円半ば視野 長射程弾や無人機強化 概算要求5兆5947億円 (沖縄タイムス 2022.8.23)
◇概算要求110兆円規模 23年度 防衛費は過去最大 「事項要求」で上積みも(沖縄タイムス 2022.8.24)
南西諸島の軍備増強に関する予算やミサイル開発の記事が相次いでいる。沖縄の戦場化に直結する問題として詳しく知る必要がある。防衛省の2023年度予算概算要求は過去最大の5兆5947億円。金額を示さない「事項要求」が100項目に及び、「最終的な予算額は6兆円台半ば」とある。
本年度の防衛費は5兆4000億円。1兆円ものかつてない大幅な防衛費増額となり、その多くが南西諸島の軍備強化に投入される。中国との戦争準備予算にほかならない。
「相手の射程外から攻撃できる『スタンド・オフ防衛能力』を強化の第一に掲げる」という。中国本土にも届くミサイルの長射程化だ。「陸自の12式地対艦誘導弾を長射程化」。「地上発射型は早期配備へ量産を開始する」。12式ミサイルは宮古、石垣、うるま市勝連に配備される。
読売新聞によると「射程を現在の百数十キロから北朝鮮や中国沿岸部に届く1000キロ程度に延伸」。洋上の「地対艦ミサイル」をなぜ、中国内陸に届く1000キロに射程を延ばすのか。記事は「敵基地攻撃能力」への転用を解説する。しかも「長射程弾1000発超」保有へミサイル大増産に走り出す。
「音速の5倍以上で飛び、迎撃が困難な極超音速ミサイルの研究開発費」も要求。「攻撃が可能な無人機」を整備。ドローンを想定するという。宇宙、サイバー、電磁波の新領域へ「領域横断的作戦能力」を強化。最新鋭ミサイル、先端科学技術を投入する武器開発の大軍拡に突き進む。
関連記事は「南西諸島の実戦想定」の見出しが踊る。戦争を想定し「弾薬の製造・保管・輸送をてこ入れし戦闘継続能力(継戦能力)向上を図る」とする。戦争が長期化することを見据えミサイル・弾薬の備蓄増、「製造ラインを強化」。「弾薬保管場所の設置も必要になる。沖縄が想定されるが反発は必至。『攻撃の目標になる』との懸念もある」とする。
沖縄南西諸島が対中国のミサイル攻撃基地、大量のミサイル弾薬地域となり、「攻撃目標になる」というのである。
産経新聞「離島防衛 弾薬20倍必要」の記事もあった。陸自が「中国との有事を想定し、迫撃砲やロケット弾といった弾薬が現状より20倍以上必要と見積もっている」という。沖縄戦でおびただしい量の爆弾が撃ち込まれ県民が犠牲となった沖縄に、中国との長期の継戦能力のため大量の弾薬を備蓄しようというのだ。
1000発超の長射程ミサイル、迎撃不能ミサイル、大量の弾薬を配備し中国とミサイルを撃ち合う。防衛省、自衛隊が描く沖縄の未来予想図が目に浮かぶ。
米下院議長の訪台と中国の軍事演習以降、日米政府は台湾有事対処の「防衛力強化」を打ち出し、防衛省概算要求に反映された。本土各紙がさながらスクープ合戦のように南西諸島の軍備強化を報じているが、共通認識は「沖縄が攻撃目標になる」ことだ。当然ながら沖縄県民の「保護」「避難訓練」の記事も増えている。
日経新聞「10万人(宮古、石垣の)をいちどに避難させるのは難しい。保護シェルターの整備も課題だ」。産経新聞は「沖縄県は今年度末までに武力攻撃予測事態を想定した図上訓練を行う」。「県の担当者は『国にはなるべく早く事態認定してほしい。いきなり事態認定されては避難できるものも避難できなくなる』と話す」と生々しいやり取りを記している。
沖縄の戦場化を想定する記事に強い憤りを禁じ得ない。ミサイルが雨と降る中で「シェルター」など役に立つものか。産経記事には「先島の住民約10万人が本島を経由して県外に退避するには15~16日が必要」と記してある。安全な住民避難などあり得ない。犠牲は不可避だ。
沖縄の犠牲を前提に防衛強化、中国との戦争が報じられている。沖縄の犠牲は人ごとなのか。「日本を守る」防衛の「日本」に沖縄県民の命は入っていないのか。防衛強化論の前に「戦争の選択肢はない」ことが強調されるべきではないのか。新聞報道のありように疑問を拭えない。
◇演習は高度 衝突回避を 元米攻防総省高官・シェフ氏に聞く(琉球新報 2022.8.23)
◇「核先制不使用」を削除 NPT文書案 大幅後退(沖縄タイムス 2022.8.26)
オバマ政権下で米国防総省東アジア政策上級顧問を務めたジェームス・ショフ氏がインタビューに答えた。
ー米軍は中距離ミサイルを南西諸島から台湾、フィリピンを結ぶ「第一列島線」に配備すべきか。「中国が沿岸部に持つミサイル発射能力を考えると、短距離、あるいは中距離ミサイルは必要だと思う。いくつかは沖縄県を含む南西諸島に配備することになると思う」
核搭載も可能な中距離ミサイルの沖縄配備を明言した。「南西諸島だけでなく3000キロの日本列島が米国を守る防波堤」(国際政治学者・羽場久美子氏)の指摘がある。
中距離ミサイル配備は大きな議論となろう。抑止論者、防衛省は首都圏防衛のため東京・横田などへの配備もご検討願いたい。沖縄だけとはいかない。
国連の核拡散防止条約(NPT)会議が決裂した。文案調整段階で核保有国の「核の先制不使用」も削除された。日本政府が削除を後押しした。
琉球新報社説は「核軍縮の後退は沖縄にとって死活問題」「米国は対中戦略の一環で沖縄はじめ日本列島に核弾頭を搭載可能な中距離弾道ミサイルを大量配備する計画がある。台湾を巡る米中の緊張が高まり、台湾有事の可能性が叫ばれている。もし有事が起きれば、沖縄は真っ先に核攻撃の対象とされる可能性がある」と書いた。
安倍元首相は「核共有論」の遺言を残した。バイデン米大統領は「核の使用を含めた日本防衛」を日米首脳会談で宣言している。国葬を機に、有事となれば原発が標的となる懸念なども含めて「核共有」、核の傘を議論してはどうだろうか。
長射程弾1000発超検討 政府 防衛費の膨張懸念も 事項要求100項目規模(沖縄タイムス 2022.8.22)
8月23日(火)http://nomore-okinawasen.org/2522/
南西諸島防衛の実戦想定 継戦力重点 野党は警戒(沖縄タイムス 2022.8.23)
防衛費、6兆円半ば視野 長射程弾や無人機強化 概算要求5兆5947億円 (沖縄タイムス 2022.8.23)
論壇 変わらぬ米国隷属政治 変質する日本の「平和」思考(琉球新報 2022.8.23)
演習は高度 衝突回避を 元米攻防総省高官・シェフ氏に聞く(琉球新報 2022.8.23)
「一つの中国」破った米 寄稿 台湾当局者への反論 訪台強行こそが主権侵害 律桂軍氏 中国駐福岡総領事(沖縄タイムス 2022.8.23)
8月24日(水)http://nomore-okinawasen.org/2531/
概算要求110兆円規模 23年度 防衛費は過去最大 「事項要求」で上積みも(沖縄タイムス 2022.8.24)
意見広告 復帰50年 沖縄を再び戦場にさせない 真の復帰 基地のない平和な島へ(沖縄タイムス 2022.8.24)
8月25日(木)http://nomore-okinawasen.org/2545/
防衛費財源巡り 有識者会議新設 9月にも初会合(沖縄タイムス 2022.8.25)
8月26日(金)http://nomore-okinawasen.org/2556/
防防衛費財源巡り 有識者会議新設 9月にも初会合(沖縄タイムス 2022.8.26)
防衛費過去最大 概算要求を了承 与党 抜本的に強化へ(沖縄タイムス 2022.8.26)
オスプレイ訓練「順次実施する」 陸幕長、時期言及せず (琉球新報 2022.8.26)
「核先制不使用」を削除 NPT文書案 大幅後退(沖縄タイムス 2022.8.26)
8月27日(土)http://nomore-okinawasen.org/2563/
北大東で防衛省 土地利用を調査 村役場でインフラ確認(沖縄タイムス 2022.8.27)
海自と米空母が沖縄東方で訓練 13〜24日 計6隻参加(沖縄タイムス 2022.8.27)
文責 新垣邦雄(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会発起人)
(「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 メールマガジン第52号」より転載)
※ご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
「ノーモア沖縄戦の会」は「沖縄の島々がふたたび戦場になることに反対する」一点で結集する県民運動の会です。県民の命、未来の子どもたちの命を守る思いに保守や革新の立場の違いはありません。政治信条や政党支持の垣根を越えて県民の幅広い結集を呼び掛けます。