【連載】ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 メールマガジン
ノーモア沖縄戦

メールマガジン第53号:③進行する琉球列島全域のミサイル基地化

ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会

●対中国の日米共同作戦

ところで、自衛隊の南西シフトの初めての策定は、2010年の新防衛大綱だ。これは、米軍のエアーシー・バトル(2010年QDR)のもとで決定された。この具体的な運用計画が示されたのが「沖縄本島における恒常的な共同使用に係わる新たな陸上部隊の配置」(2012年統合幕僚監部)という文書だ。

この文書では、在沖米軍基地―嘉手納・伊江島航空基地等を含む在沖全米軍基地の、自衛隊との共同使用が明記され、さらにこの後編成予定の陸自1個連隊のキャンプ・ハンセンへの配備も記されている。つまり、このハンセン配備予定の水陸機動団が、辺野古新基地をも使用し、日米共同基地にするということだ(21年1月28日付沖縄タイムスは、これを裏付ける辺野古新基地の水陸機動団との共同使用密約を報道)。
こうしてみると、自衛隊の南西シフトは、初めからエアーシー・バトル下の日米共同作戦として決定されたといえる。

この作戦の特徴は、在沖・在日米軍は中国軍のミサイルの飽和攻撃を逃れ、あらかじめ空母機動部隊のグアム以遠への一時的撤退を予定していることだ。そして、中国軍のミサイル飽和攻撃が終了した後、米空母機動部隊などは、第1列島線に参上し参戦する。

すなわち、米軍は、対中戦略では自衛隊の南西シフトに依拠する。つまり、第1列島線沿いに配備された、自衛隊の対艦・対空ミサイル部隊が、初期の対中戦闘の主力となる。

米軍の初期構想では、これら琉球列島に配置されたミサイル部隊の任務は、中国軍を東シナ海に封じ込め、「琉球列島を万里の長城、天然の要塞」にするとしている。これはまた、中国の軍民艦船を東シナ海へ封鎖する態勢であり、中国の海外貿易を遮断する態勢づくりだ。

しかし、エアーシー・バトルという戦略は、一時的であれ、米海軍の西太平洋の制海権を放棄する態勢である。これは、米海軍においては「制海権放棄」という第2次大戦後の初めての事態になる。

こうして、この状況を全面的に修正する戦略が、「海洋プレッシャー戦略」として提言された(戦略予算評価センター[CSBA]、2019年5月)。

「海洋プレッシャー戦略」とは、端的にいうと、中国の初期ミサイル飽和攻撃に対処する「撤退戦略」を修正し、「対中・前方縦深防衛ライン」を構築し、戦争の初期から「西太平洋の制海権を確保」する戦略だ。

作戦の中心は、第1列島線沿いに分散配置された対艦巡航ミサイル、対空ミサイルなどを装備した日米軍の地上部隊が、中国の水上艦艇を戦闘初期で無力化する。つまり、琉球列島に配備された自衛隊の対艦・対空ミサイルと、米軍の新たな対艦・対空ミサイルとの共同作戦である。

この戦略下、米海兵隊も「フォース・デザイン2030」を提唱し、その構想が「紛争環境における沿海域作戦」(LOCE)、「遠征前方基地作戦」(EABO)としてすでに具体化している。これは、第1列島線上に海兵隊が、地対艦ミサイルなどで進出することが最大の核心だ。2027年までにそれを担う「沿岸連隊」を沖縄に配備するという。

こうして今、日米の南西シフト態勢=琉球列島のミサイル基地化が、無一段として強化され、本格化しつつある。この再び沖縄を最前線とする戦争態勢づくりと、どのように対峙するのかが、今問われている。

小西 誠(軍事ジャーナリスト・ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会オブザーバー)

(「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 メールマガジン第53号」より転載)

 

ISF主催公開シンポジウム(10月29日開催):「コロナ&ワクチン問題を考える~ワクチン接種の安全性・有効性を問う」の申込受付

※ご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。

https://isfweb.org/2790-2/

「独立言論フォーラム(ISF)ご支援のお願い」の動画を作成しました!

1 2
ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会

「ノーモア沖縄戦の会」は「沖縄の島々がふたたび戦場になることに反対する」一点で結集する県民運動の会です。県民の命、未来の子どもたちの命を守る思いに保守や革新の立場の違いはありません。政治信条や政党支持の垣根を越えて県民の幅広い結集を呼び掛けます。

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ