参院選後の日本の進路を問う~独立言論フォーラム・シンポ(中):日本が対処すべき外交上の7つの危機
政治元総理大臣・鳩山友紀夫氏は、「世界の危機に対応できない『黄金の3年間』」というテーマで講演した。「参院選で立憲民主党が惨敗し、改憲勢力である自民党が与党になったため、憲法改正が行われるのではないかと多くの人が考えていますが、私は自民党が憲法改正を何としてでも実現したいという話にはならないと考えています。憲法改正を国民の良識で食い止めることができると感じています」と述べた。
岸田政権は経済を持ち直せる方法が見つかっていないため、岸田政権にとっては「黄金の三年間」ではなく、試練の三年間になる可能性が高いというのだ。鳩山氏は、外交や安全保障に関して日本が対処すべき7つの危機を取り上げ、「日本の対米隷属が深刻化し、これらの危機的な状況を乗り越えるパワーが日本にはないことが懸念されます」と語った。
鳩山氏がいう日本が対処すべき7つの危機の1つ目は、新興国が勢いをもつようになると大国が危機を感じて新勢力を抑えようと戦争をしかける「トゥキディデスの罠」だという。「ウクライナ危機」で味をしめた米国には、「次は台湾有事だ」という思惑があるが、勢いのある新興国である中国が米国の挑発に乗ってしまっていることがむしろ問題である。
2つ目は、「民主主義vs権威主義」という価値観の対立が強調されていることだ。西側である欧米諸国が、これらの価値観を軸にした外交を行って中国やロシアとの対立を深めている。「価値観が同じでなければ敵という考え方では、外交は成り立ちません」という鳩山氏の言は重要である。
3つ目は、米国が「兄弟」のような国と捉えてきたウクライナにまでNATOの勢力が広がると、ロシアは脅威に感じる。このことに対して配慮がないことが深刻なのである。
旧ソ連は東側の軍事同盟である「ワルシャワ条約機構」を解散させたが、西側のNATO(北大西洋条約機構)は東側に勢力を広げており、ウクライナのNATO加盟問題のように、ロシアの国境と接するところまで拡大しようとしている。「ウクライナ戦争を辞めさせられるのは、ロシアやウクライナという当事者ではなく、むしろ米国です。しかし、岸田政権では米国に戦争を辞めさせるという議論が出ないことが大きな問題なのです」(鳩山氏)。
4つ目は、軍拡が進み、核兵器が使用される懸念があることだ。世界の軍事支出は2兆ドルに上り、沖縄の石垣島や宮古島などの南西諸島で自衛隊のミサイル基地化が進められている。しかし、岸田首相は米軍のミサイル基地化の要求に対して「ノー」といえないでいる。
5つ目は、格差が拡大し経済が低迷しているため、内政の問題から国民の目をそらすために外交上の敵をつくる「ポピュリズム」の政治を行う政権が増えていることだ。岸田政権もこの傾向があるが、日本では、経済を立て直すか、または経済以外のことに大きな価値を見出す生き方をつくり出していくことが求められる。
6つ目は、国境と民族の自立が相容れない問題であることだ。ウクライナでは、東部の親ロシア派の民族に対する弾圧に対して自治権を求める住民をロシアが支援することで衝突が起こり、「ウクライナ危機」の原因となった。台湾は中国の領土だという中国の主張と台湾の民族の自立とが相容れないので、これも根本は同じ問題である。
鳩山氏は、台湾有事が起きれば戦場になるのは日本であるため、絶対に避けなければならないこと、そのためには、日米は1つの中国という原則を再確認する必要があることを指摘している。
7つ目は、価値観が同じ国のみが手を組む「経済のブロック化」が進んでいること。「価値観が同じでなければ敵という考え方ではなく、価値観の違いを乗り越えて議論するのが外交のあるべき姿です。日本は外国と相互尊重、相互理解、相互扶助を行い、自立と共生の姿勢をもつことが大切です」という鳩山氏を重く受けとめるべきである。
鳩山氏は「残念ながらこの7つの危機を岸田政権では1つとして乗り越えることができません。これらの危機を乗り越えるためにも、私は東アジア共同体を構想し実現に努力することを求めたい」と語った。
(『Net IB-News』より転載)
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