旧統一教会はいかにして政治力を持ったのか、日米の「宗教右派」を分析する
政治・安倍晋三はサタンに魂を売り渡した
日本に目を向けると、2006年に発足した第1次安倍政権は、翌年の参議院選挙で参議院第一党の座を民主党に奪われる大敗を喫した。安倍氏は続投に意欲を示して内閣改造を行なうものの、すぐに政権を放り出してしまう。辞任後に健康問題が本当の辞任理由と公表したが、酷評されている。
続く福田康夫内閣は、2008年9月のリーマン・ブラザーズの経営破綻(リーマン・ショック)による世界金融危機を収拾できずに総辞職。麻生太郎内閣も、自民党内の麻生おろしの末、翌年8月の衆議院総選挙で、70%近い投票率の下、選挙前の300議席から118議席に減らす歴史的大敗を喫して、民主党に政権が交代した。
この間、安倍氏の政治生命は事実上絶たれたと思われ、雌伏の時を過ごしていた。その安倍氏が、12年末に首相に返り咲き、史上最長政権を実現するとは、当時の何人も想像できなかったはずだ。
雌伏期間中の安倍氏は、アメリカにおける宗教右派の政治への影響力に着目していたのではないか。第一次政権の2006年にも「天宙平和連合(UPF)祖国郷土還元日本大会」に祝電を送り、統一教会との関係が指摘されていたが、この頃に関係を聞かれると「向こうから近づいてくるが、関わらないように気を付けている」と答えている。口だけでも、まだ自制心があったのだろう。
だが、権力を失い、自民党が下野すると“背に腹は代えられない”とばかりに、形振り構わずに統一教会の支援を利用するようになった。
安倍氏は、祖父の岸信介元首相から親交を深める統一教会の教義が「エバ国家の日本は、アダム国家の韓国に奴隷として仕えなければならない」とする反日カルト教団であると、知らないはずはなかった。選挙に勝つためには、“悪魔”の力も借りたかったのだ。
一方、統一教会も、2009年6月に摘発された「新世事件」で窮地に立っていた。姓名判断を装い被害者に近づき高額の印鑑を買わせる霊感商法を行なったとして、教団傘下の印鑑会社「新世」の役員に実刑判決が下されている。霊感商法に初めて懲役刑が下された画期的な判決だった。
この時期に、安倍氏と統一教会の両者の思惑がピタリと一致したのだ。
二之湯智国家公安委員長が、8月5日の閣議後会見で「統一教会の霊感商法の被害届(実際は検挙)は、2010年を最後にない」と発言したが、この頃、安倍氏と親しい警察出身の政治家が、捜査介入をしたといわれる。
・神政連・神社本庁と統一教会
日本において、自民党を支える宗教右派の代表格と目されてきたのが、日本会議の中核をなす神社本庁である。
前号で筆者は、神社本庁の事務局に統一教会の隠れ信者がいるかもしれない、という噂を紹介したが、現時点では確認が取れていない。
神社本庁や神道政治連盟の事務局の職員になるには、神職の資格が必要だが、安倍政権支持のデモ行進をしていた勝共UNITE(旧国際勝共連合大学生遊説隊 UNITE)が開催した「改憲2020実現 東京大会2018」には、演説者の中に神職資格がとれる國學院大学の学生もいた。
神道をサタンの教えとする統一教会の信者が神道系の大学に通うのはおかしな話だが、彼らは上から指示されれば、教義上の矛盾など気にしない。
目的遂行のためには計画的・組織的に行動し、手段を問わないのだ。
なお、神社本庁や神政連はともかく、日本会議には、すでに統一教会の信者が入り込んでいるという情報がある。
ところで、神社本庁はいま内紛の真っ最中だ。2010年より総長職にある田中恆清・石清水八幡宮宮司は、今年5月の役員改選で、鷹司尚武統理から総長の指名を受けなかった。だが田中氏は、新総長に指名された芦原高穂・旭川神社宮司の代表役員就任を妨害し、6月の臨時役員会で自らを再任させた。
芦原新総長は裁判所に異議申し立てを行っているが、裁判所がそれを認めても、田中氏は総長を降りず、神社本庁を割って出ると言われる。そうなれば、神社本庁は、2つに分裂することになる。
信者数が多くない統一教会が、政治にこれほど深く食い込んだのは、アメリカでキリスト教福音派を利用したように、神社本庁をはじめ、日本会議に参加する他宗教を利用したからだ。
この統一教会の政治への影響力を削ぐには、まず彼らが反日教義を持つカルト団体であることを明確にし、政治家を含めた全国民に警戒心を持たせることだ。
だが、献金や洗脳では、憲法の信教・思想の自由を盾に、宗教法人資格の取り消しさえ難しいかもしれない。「安倍晋三元首相は統一教会の“天敵”だった」なる珍説を主張する元週刊新潮記者の門田隆将氏のように「洗脳や献金なら、創価学会だってやっている」と、他の宗教団体と一緒くたに論じようとする向きも、すでにある。
こうした統一教会を擁護する動きに対しては、彼らと麻薬の関係を追及せよ、と言いたい。2019年11月に統一教会の傘下団体の南米代表を務めるパラグアイのシンシア・タラゴ・ディアス元国会議員が、米連邦捜査局(FBI)にマネー・ロンダリングと麻薬密売容疑で逮捕拘束され、今年、有罪判決を受けている。
1976年2月4日に発覚したロッキード事件では、衆参両院がアメリカ政府に対し、ロッキード事件の資料の提供を要請する決議を全会一致で可決。当時の三木武夫首相は、全ての資料の提供を求める、いわゆる三木親書を送っている。
岸田首相も、バイデン大統領に統一教会に関する捜査資料の提供を求めたらいい。首相が動かないのなら、野党が国会に決議案を提出すべきだ。
いずれにせよ、「自民党として調査する考えはない」などとヌルイことを言っていたら、いつあるかわからない次の総選挙で、勝ち目はないと覚悟すべきだろう。
(月刊「紙の爆弾」2022年10月号より)
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海外メディア勤務を経て、フリーライターとして活躍中。