【特集】統一教会と国葬問題

日本が「カルト天国」である理由 、「政治と宗教」癒着の裏に2つの事件

大山友樹

・身体調査しきれないほどの関係

安倍晋三元首相の銃撃死事件を契機に、安倍派(清和会)を中心とした自民党国会議員と、世界平和統一家庭連合(以下、統一教会)とのズブズブの関係が露呈。世論の厳しい批判に晒されたことから、岸田文雄首相は9月と見られていた人事を前倒しして、8月10日に急遽内閣を改造した。

改造では、統一教会から選挙支援を受けていたことを自認した安倍元首相の実弟である岸信夫防衛相をはじめ、萩生田光一経産相ら統一教会と関係のあった7閣僚の首をすげ替えた。

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改造後の記者会見で岸田首相は、「国民の皆さんの疑念を払拭するため、今回の内閣改造に当たり、私から閣僚に対しては、政治家としての責任において、それぞれ当該団体との関係を点検し、その結果を踏まえて厳正に見直すことを言明し、それを了解した者のみを任命いたしました」と、あたかも統一教会との関係を断絶したかのごとく大見得を切った。

だがその舌の根も乾かぬうちに、加藤勝信厚生労働相、高市早苗経済安保担当相ら閣僚8人に統一教会と関係があったことが発覚し、7人を辞めさせたものの関係閣僚数は1人増。同様に副大臣・政務官54人についても、4割にあたる23人に、統一教会と関係のあることが判明した。
さらには改造後の記者会見で「私個人は知りうる限り、当該団体との関係はない」と、統一教会との関係を全否定していた岸田首相に、地元広島県の統一教会広島教区・三原教会長とのツーショット写真があることが発覚。

さらに週刊文春(9月1日号)で「後援会長は統一教会系団体の議長だった」という文春砲が炸裂。統一教会との関係を「見直す」とした第2次岸田内閣は発足直後から看板倒れの体たらく。各マスコミの内閣支持率は昨年10月の岸田内閣発足以来、過去最低となった。

それもそうだろう。そもそも統一教会との関係を「厳正に見直す」とした岸田首相だが、閣僚から外した萩生田前経産相や岸前防衛相を、自民党3役である重職の政調会長や安全保障担当の首相補佐官に任命したのだから、その本気度には疑問符がつく。

こうした実態を踏まえて統一教会問題を追及し続けているジャーナリストの鈴木エイト氏は、第2次岸田内閣を「身体検査、不十分内閣」と酷評。改造は国民の関心をそらす「ガス抜き」にすぎないと批判するとともに、内閣改造から見えてくるのは、「統一教会と関わりを持つ自民党議員が、身体検査しきれないほど多いということの証明」だと分析している。

実際、国会議員712人を対象に統一教会との関係を質した共同通信のアンケート調査の結果(8月13日付)によれば、回答した583人中なんらかの形で統一教会と関係があった国会議員は106人。その8割にあたる82人が自民党議員だったというのだから、身体検査をしてもしきれないというのが実情なのだろう。

このうち経産相から政調会長に横滑りした萩生田政調会長については、週刊新潮(8月25日号)が「『萩生田』政調会長がつないだ『カルト』と『生稲晃子』」との記事を掲載。萩生田政調会長は先の参院選の公示直前に、東京選挙区で初当選した元おニャン子クラブの生稲晃子候補を、自分の地元である八王子市の統一教会施設に連れて行き、支援を要請していた事実をすっぱ抜いた。

もともと萩生田政調会長については、統一教会(本体)の集会で挨拶や講演を行なうなど、両者は密接な関係にあったことがわかっていた。さらに、8月20日放送のTBS系「報道特集」では、萩生田氏が日本を統一教会の「神の国」にするために自民党や自分を応援してくれと講演していたことが、元信者の証言で明らかとなった。

“Tokyo, Japan – September 29, 2012 : People at the TBS Broadcasting Center in Akasaka, Minato-ku, Tokyo, Japan. TBS Group is engaged mainly in television and radio broadcasting in Japan.”

 

この統一教会の自民党支援については、萩生田政調会長が側近として仕えた安倍元首相が直接、差配していると言われていたが、伊達忠一元参院議長の証言によってその事実も確認された。

伊達元議長は7月31日放送のTBS系「サンデーモーニング」で、同僚の宮島喜文前参院議員が、2016年参院選では安倍元首相の仲介で統一教会の支援を受けて当選したが、今回の参院選では統一教会票を安倍元首相の元秘書官で落選中の井上義行候補に回したことから支援を受けられず、立候補を見送ったことを具体的に証言。宮島前議員も同番組の取材に対して「安倍氏に2度会って、前の選挙と同様に世界平和連合(教団の友好団体)の支援を依頼しました。安倍氏からは『6年前のような選挙協力は難しいかもしれない』との返答でした」と回答している。

また地元のHTB(北海道テレビ)が7月28日に放送したニュース番組で伊達元議長は、宮島支援の見返りとして、2019年10月5日に統一教会の友好団体の天宙平和連合(UPF)が名古屋市内のホテルで開いた「ジャパンサミット&リーダーシップカンファレンス」に来賓として参加。また韓鶴子統一教会総裁が参加した二十年二月のイベント「ワールドサミット 2020」に出席したことを認めている。

 

このほか、番組では元産経新聞政治部長で、安倍派の北村経夫参院議員が統一教会の支援を受けていることも報道した。北村議員の祖母は、安倍元首相の地元である山口県で“踊る宗教”といわれた天照皇大神宮教を開いた北村サヨ教祖で、統一教会と安倍元首相の祖父である岸信介元首相との接点になった人物として知られている。

・日本は「カルト問題」が起こりやすい

こうした日本の政治と宗教の現状について、宗教学の第一人者である島薗進東大名誉教授は、自身のツイッターで、「日本はカルト天国」と次のように評している。

「今回の統一教会問題は、日本においてこの問題にどう対処するかについて、再考する重要な機会になるだろう。日本では政治家が宗教集団を利用することに慣れてしまって、そのことから生じる人々の苦難についても無関心で、責任を感じないというとんでもない事態に至った。多くの国民があきれ返っている」。

では、どうしてこのような歪んだ癒着関係が生じたのか。島薗氏はその前提として、日本には「『カルト問題』が起こりやすい」宗教構造があると、こう指摘する。

「主要な宗教伝統が組織的にも優位に立ち、新宗教やセクトのような少数派教団が存続しにくい国も多い。欧州大陸はその傾向が強い。ところが日本は米国・韓国とともに新宗教やセクトとその信徒の多い国で『カルト』問題が起こりやすい」。

Cult control, power, authority and manipulation symbolized by control bar with word Cult pulling the strings (chains) of a wooden puppet, 3d illustration.

 

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大山友樹 大山友樹

ジャーナリスト。世界の宗教に精通し、政治とカルト問題にも踏み込む。

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