権力者たちのバトルロイヤル:第40回 誰が『安倍晋三』を殺したのか
国際・石油ドルシステム
ディープステート(以下、DS)については、この連載でも述べてきたが、簡単に説明をすれば「ドルと石油の利権者」となろう。
戦後の米政権の政策を立案し、ニクソン、フォード政権で国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャーは「石油を支配すれば国家を支配できる」と語っている。
戦後、アメリカは世界各国の重要な石油利権と権益を押さえ、エネルギーを支配してきた。石油利権の確保のためなら産油国に軍事クーデターを仕掛け、ときには「民主化」という国際圧力で強引な手法を使ってまで石油や天然ガスといったエネルギー利権の確保に動いてきた。
この石油の国際決済は、当然、基軸通貨のドルとなる。日々、大量消費されるエネルギーの決済通貨となれば、ドルの需要は拡大し、いくら刷ろうが通貨価値は下がらなくなる。
ドルの新規発行は、米政府が用意した米国債と同額をFRB(連邦準備理事会)が引き受けることで成立する。FRBを構成するのは民間銀行である。そして国債には金利がつく。石油引換券となり大量に発行されるほど、FRBの構成メンバーは、大量の国債から発生する莫大な金利を労せずに得てきた。
大量のドル発行は、大量の国債金利を発生させる。つまり、金利支払いのために米政府はさらなる国債を発行するという多重債務者となり、財政を悪化させる一方で、ドルの利権者たちは笑いが止まらないほど儲かってきた。これが「世界の富の99%を支配する1%」の構図である。
さて、このDSの行なってきた「石油ドルシステム」のビジネスにおいて、最大の商売敵が、冷戦期はソ連、2000年以降はプーチンのロシアだった。
ロシアは世界最大級のエネルギー資源大国。ユーラシア大陸を横断する広大な国土で西は欧州、東は中国と最大消費地に石油・天然ガスを直接パイプラインで送り込むことができる。
その気になれば中央アジアからインド、パキスタンといった人口過密地帯、さらに日本にパイプラインを通すことも可能だ。事実、プーチンは、ノルドストリームなどの天然ガスパイプラインを積極的に欧州に張り巡らせ、安価かつ大量に供給してきた。
その結果、EU諸国のロシア産石油と天然ガスの依存度は、それぞれ30%、40%となる。先のキッシンジャーの言葉ではないが、ロシアにエネルギーを依存すればEU諸国に対するロシアの影響力は高まる。
しかもロシアがユーロと人民元での決済に応じていたことで、ドル決済まで落ち込んだ。昨今のアメリカのインフレは、このドル決済の減少によってドルがだぶついていたためなのである。
この構図を理解すれば、メディアが絶対に報じない、ウクライナ戦争の「実相」が見えてくるのだ。
DSの目的は、この戦争でロシア産のエネルギー資源を国際市場から締め出し、DS系の石油メジャーで一元化、ドル決済の需要を増やすことにあったはずだ。そのために一方的にウクライナに攻め込んだ「悪逆なロシア」「狂気の独裁者プーチン」とメディアを使って徹底的に煽ってきた。
ここで重要なのは、そのターゲットがEU諸国の一般国民という点である。プロパガンダを信じ込めば、各国政府がロシア産のエネルギーを使いたくとも有権者が許さない。メディアの偏向報道は、その状況を作ろうとして行なわれてきたのだ。
そして最終的には戦後賠償にかこつけてロシアのエネルギー利権を根こそぎ奪う。本来ならばヒラリー・クリントン政権で行なうはずだったものが、トランプによって4年ずれ込んだにすぎない。これは必ず起こる「戦争」であったのだ。
・ヌーランドの弔問
そして安倍晋三が暗殺された答えもまた見えてくる。このまま中間選挙で民主党が大敗すれば、この戦争はロシア有利で停戦になりかねない。
すでにプーチンはロシア産エネルギー資源の国際決済をルーブルに限定している。経済制裁が緩和されれば、今まで以上に安価なロシア産エネルギー資源を求める国が増えていくことが予想される。DSが築いてきた「石油ドルビジネス」が完全に破綻してしまうのだ。
もはやなりふり構っていられなくなったDS陣営は、中間選挙で敗北しても西側諸国が足並み揃えて反ロ路線とロシアの経済制裁を継続させるために、安倍をテレビカメラの前で射殺し、その哀れな姿を各国首脳に見せつけたのではないか。
なぜ、安倍だったのか。第2次安倍政権発足時、安倍はDS寄りと見られてきた。それがトランプ政権発足後、トランプに接近し、プーチンのロシアとの関係改善に動いた。2018年には日露首脳会談で北方領土問題解決の合意まで行なう。この合意の背景には、サハリンと宗谷海峡ルートでロシア産の天然ガスパイプラインがセットになっていたといわれている。
DSからしてみれば、安倍は完全な「裏切り者」であったのだ。そう考えれば、安倍の人格を否定しかねない「テレビカメラの前での射殺」にせよ、裏切り者に対する「見せしめ」の意味もあったのかもしれない。
7月25日、安倍の弔問にバイデン政権からビクトリア・ヌーランド国務次官が訪日した。歴代政権の外交官として裏方に徹してきたヌーランドの名が、国際インテリジェンスで広まったのは2014年のウクライナ「マイダン革命」からだった。
親ロ派政権(ヴィグトル・ヤヌーコヴィッチ)を打倒したこのクーデターは、当時、国務次官補だったヌーランドが現場に入り、CIAを使って引き起こした実態を現地のジャーナリストがスクープしている。ウクライナ戦争の「影の総参謀長」であり、歴代米政権のダーディワークの専門家が、わざわざ弔問に訪れたのだ。
岸田文雄が震え上がったのは間違いあるまい。
(月刊「紙の爆弾」2022年10月号より)
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1968年、広島県出身。フリージャーナリスト。