[講演]広瀬隆(作家) 二酸化炭素地球温暖化説は根拠のまったくないデマである〈前編〉
社会・経済・「ホッケースティック図」と「クライメートゲート事件」
それでは、地球の気温を変化させるのは何かの前に、まずIPCCは「西暦1000年から1900年までの900年間の気温の変化は横まっすぐだけど、1900年頃から過去には見られなかった気温上昇が始まった」と言っていました。この線の形がホッケーのスティックにそっくりなので、揶揄されて「ホッケースティック図」と呼ばれています[図表6]。
そして、このグラフが捏造だったことが判明します。[図表7]は「IPCCの『第一次評価報告書』(1990年)」(202ページ)に記されたグラフです。日本にはこの報告書をきちんと読んだ人がいないようで残念ですが、ここに過去1000年間の地球の正しい気温変化が掲載されているんですね。このグラフが「ホッケースティック図」とはまったくちがうことがおわかりになるでしょう。
[図表7]のグラフを拡大したのが[図表8]です。左が「中世の温暖期」。コロンブスなどの大航海時代が始まるのが中央あたりで、右側から「小氷期」、日本では「小氷河期」とも呼ばれる時期です。
つまり、1990年のIPCC「第一次評価報告書」には正しく中世温暖期と小氷期が明示されていました。気温の変化はまっすぐではないし、中世は現在よりもはるかに高温だったことがわかります。CO2は気候変動に対して無実でした。こんな基本的なことも知らずに騒いでいる人が多すぎます。
では、詐欺師たちはこのグラフをどのように加工したのでしょうか。[図表9]を見ればわかるように、中世の温暖期の気温を下げ、さらに小氷期を消して、1900年までの900年間をまっすぐに変えたのです。これはヨーロッパでよく報道されている事実です。
結局、IPCCが主張してきた「ホッケースティック図」は、本当の科学をしている人たちによって間違いだと実証されました。捏造した人間たちの実名もわかっています。マサチューセッツ州立大学のトーマス・マンたちで、彼らは痛烈な批判を浴びて、2007年のIPCC「第四次評価報告書」以降は、「ホッケースティック図」が掲載されなくなりました。
ところが、2009年にはもっと大変なことが起きます。IPCCの幹部同士がやり取りしていた何千ものメールの交信記録が大量流出したため、「気温グラフを捏造して、全世界をだますことに成功した」と互いに喜び合っていた彼らの恥ずべき行為が暴露されたのです。これが気候スキャンダル「クライメートゲート事件」と言われ、全世界で大騒ぎになりました。[図表10]はその時のニューヨークタイムズに掲載された漫画(Glenn McCoy)です。
世界中のテレビはこの犯罪行為を「世紀のスキャンダル」として一斉に報じました。ところが皆さん、この事件を知らないでしょ。日本のマスコミがまったく報道しなかったからです。日本はテレビと新聞があっても意味のない「陸の孤島」なのでした。
そして、こうしてこの世から姿を消したはずの「ホッケースティック図」が、昨年平然と復活しました。2021年8月9日に発表された、IPCC「第六次評価報告書」に再び登場したんですよ。事件のほとぼりが冷めたんだろうと、極悪人たちが活動を再開したんですね。そうすると日本では、テレビ番組でも、新聞雑誌でも「ホッケースティック図」が大手をふるうようになります。詐欺師たちに舐められているんですよ。
・地球の気温を変化させてきたものは何か?
そこで本題にもどりますと、何が地球の気候を変動させるのかを考えるとき、まずは科学の基礎を頭に入れることが重要です。気候変動の最大の要因をまずは項目だけあげると、
(1)雲をつくる水蒸気
(2)火山の大噴火
(3)太陽と地球の関係
(4)宇宙のミランコヴィチ・サイクル
(5)大西洋と太平洋の海水温度の周期的変動
(6)偏西風の蛇行
(7)南米沖のエルニーニョとラニーニャ
(8)インド洋ダイポールモード現象
(9)海底からのマグマ噴出と地震など
のほかにも、山のような自然現象があります。今日は以上をざっと説明します。
(1)雲をつくる水蒸気
[図表11]の通り、気候を左右する最大の要因となるガス、つまり地球温暖化寄与率が高いガスは水蒸気です。物理学者の計算によって多少のちがいはありますが、水蒸気の温暖化寄与率は最大で95%もあります。対してCO2の温暖化寄与率はたったの3%しかありません。
こんな基礎も知らない熱力学の素人たちがホラー話で騒いでいるんですけど、水蒸気はあまりに複雑な変化をするので、計算ができないのです。
そこで、水蒸気以外で、気候に大きな影響を与える主な要因を紹介します。
(2)火山の大噴火
次に巨大火山の噴火があります。例えば、1991年6月フィリピンのルソン島にあるピナトゥボ火山が20世紀最大規模の大噴火を起こしました。標高1745メートルだった山が噴火後には1486メートルまで低くなった。これでフィリピンから米軍が撤退した。
そこまではよかったけど、噴火の結果、火山灰が上空2万メートルの成層圏にまで達して太陽の光を遮ります。翌92年の地球の平均気温はガタッと下がり、全世界に冷害が広がりました。1980年にはアメリカのセント・ヘレンズ火山が大噴火しました。82年にはメキシコのエルチチョン火山が大噴火します。このように、火山の噴火は地球全体の気候変動に非常に大きな影響を与えます。
後でも述べますが、つい先日の1月15日には、南太平洋トンガの海底火山が大噴火しました。この火山灰が太陽の光を遮って、地球規模の寒冷化が起こらないか、心配しています。噴出した火山灰の量は不明ですが、噴煙はピナトゥボ火山の時よりも高い、3万メートルの成層圏上部まで達したと報じられているからです。
(3)太陽と地球の関係
火山灰がなぜ地球の気温に影響を与えるかといえば、火山灰が太陽の光を遮るからです。だから、地球の気候に最大の影響を与えるのは、太陽活動です。その太陽活動を、宇宙線の測定実験でとらえた素晴らしい人がいます。
デンマークの宇宙物理学者、ヘンリク・スヴェンスマルクという人です。彼とナイジェル・コールダーの共著『“不機嫌な”太陽──気候変動のもうひとつのシナリオ』(恒星社厚生閣、2010年)は素晴らしい本です。私は1カ月、ひとつずつ検証しながら毎日数ページずつ読みましたが、非常に高度な内容です。
副題の「もうひとつのシナリオ」というのは、CO2ではありませんよという意味です。彼は3.11の3年後に日本に来てくれて、14年3月31日に、横浜市開港記念会館で講演をしてくれました。ところが、この大事な講演会に日本の報道界からの参加者はゼロ。テレビも新聞も誰も来ていないのですよ。彼は人格者で、講演会で使ったすべてのパワーポイントデータを私にくれました。
さて、スヴェンスマルクが明らかにした気候変動と太陽の関係について[図表12]、わかりやすく説明します。図の真ん中に銀河系(天の川銀河)があります。すると人類が住む太陽系は銀河系の端、銀河系円盤の半径のほぼ半分ぐらいの位置にあります。この円盤のように見える銀河系を上から見ます[図表13]。
①銀河系の渦も太陽もぐるぐるぐるぐる周回している。②しかし、両者の回転速度は違う。そのため、太陽は白く明るい星座の中に入ったり、外に出たりする。つまりスヴェンスマルクが明らかにしたのは、太陽は銀河系の星の間に入ったり出たりし、これが地球の気温を変えているということです。③太陽が明るい渦に入ると、地球は宇宙線を多く受けて寒冷化する。太陽が渦から出ると温暖化するということです。
①太陽活動が比較的な静かな時には、②宇宙線が大量に地球に降り注ぐ。③すると、地球の大気中にある分子が活性化する。④このエネルギーを受けて、水滴が集まって雲を作る。これがクラスターです。⑤こうしてできた雲が太陽光線を遮る。⑥結果的に曇天・雨天が増えて、気温が下がる──ということを彼は明らかにしたわけです。彼はデンマーク出身。日本と違って宇宙線を測定できるいい国にいたんです。
ところが[図表14]のように、①太陽の活動が逆に活発になると、②太陽風=プラズマ(電離した粒子)が宇宙に吹き、③宇宙線が遮られ、太陽の光がストレートに地球に入ってくる。つまり雲などができにくい。④そのような時には太陽の黒点が増えている。太陽の活動度はこの黒点によって知ることができます。
なぜかというと、1600年代にガリレイが太陽が温度を変えるものだと測定して以来、現在まで宇宙の研究者が太陽の黒点をずっと調べた膨大な記録を残っているからです。太陽の表面温度は6000度ぐらいですが、黒点の温度はその半分の3000度しかない。つまり黒点が増えた時期、太陽活動は活発になって地球は温暖になるのです。黒点は地球より巨大です。
こうした黒点の数と宇宙線の強度の相関性を、スヴェンスマルクが1960年代から2010年までずっと測定しています[図表15]。上が黒点の数、宇宙線の強度が下です。きれいに変化していることがわかります。つまり、黒点が増えると地球に降り注ぐ宇宙線が弱くなる。このように黒点の数と宇宙線の強度にはっきりとした関係があるのです。
太陽の活動とスイス・アルプスの氷河とロンドンの気温の関係をひとつのグラフにしたのが、[図表16]です。太陽の活動が下がると寒くなります。氷河は大きくなります。このように太陽の活動と氷河の関係がぴったり合って、ここに気温のグラフもぴったり合うわけです。
太陽活動と地球の気温変化が一致していて、1600年代~1700年代から地球の温暖化は始まっていたことがご理解いただけたと思います。人類が石炭・石油を使っていない時代から温暖化は始まっていたのですから、「ホッケースティック図」がいかにデタラメだということがわかります。
(4)宇宙のミランコヴィチ・サイクル
太陽の影響はそれだけじゃありません。地球は太陽の周りを1年かけて1周しています。それで春夏秋冬の四季が生まれます。しかし、地球はただ単純に太陽の周りを回ってるのではありません。北極と南極を結ぶ直線が地軸です。地球の地軸は傾いていて、周期的に傾きが変化します。地軸の傾きが21.5度の時は気温の変化が小さい。
ところが傾きが大きくなると夏の暑さと冬の寒さが強くなる。現在23.4度と寒暖の差が強くなる傾きにあります。地軸の傾きが21.5度から24.5度まで変わるのは4万1000年周期です。それに地軸は、太陽と月の引力を受けていますから、公転中地球ゴマが首を振るように約2万6000年の周期で自転軸が回る歳差運動をしています。
もうひとつ、地球が太陽の周りを回る公転軌道も周期的に変化しています。太陽から遠く離れると地球は寒くなる。太陽に近づくと地球は温まる。この地球の軌道は約10万年の周期で、正円に近づいたり、楕円になったりしています。
この間、地球と太陽の距離を1800万キロメートル以上も変化します。1800万キロメートルは月と地球との距離の50倍です。それぐらい大きな変化をしているわけです。
旧ユーゴスラビアの地球物理学者ミルティン・ミランコヴィッチは、この3つの周期的な変化の組み合わせによって、地球に降り注ぐ太陽の日射量が変化し、それで気候の寒暖の変化が生まれると考えて、極めて高度な計算を行っています。
そして、周期的な寒暖の変化が起こることを1920年代に明らかにしました。この説が考古学者のアルプスの氷河調査の年代と合致して、氷河期の周期理論が確立されました。この3つの周期的な宇宙の変化を「ミランコヴィッチ・サイクル」と呼びます。
(5)大西洋と太平洋の海水温度の周期的変動
海では大西洋の海水温度が数十年規模で変化しています。これはAMO(Atlantic Multidecadal Oscillation)と呼ばれ、60年~80年周期で海水温度が変化しています。我々の目の前の太平洋でも海水温度が10年周期で細かく変化しています。これはPDO(Pacific Decadal Oscillation)と呼ばれています。
(6)偏西風の蛇行
地球は東向きに自転しています。自転の速さは赤道で時速1700キロメートルにもなる。そのため地球上で運動してる物体に力が働きます。
これがフランスの科学者、ガスパール・ギュスターヴ・ドゥ・コリオリが提唱した「コリオリの力」で、地球上で動くものには自転の力が必ず作用する。そのため低緯度の地点から高緯度の地点に向かって運動する物体には東向きの力が働き、逆に高緯度の地点から低緯度に向かっての運動には西向きの力が働きます。
だから、日本によくやってくる台風は、いつも反時計周りの渦を巻く。風が中心に向かって進む時に「コリオリの力」を受けるからです。南半球の台風はこれと逆で時計回りに渦を巻く。アメリカのハリケーンも北半球で起こるので日本と同じ反時計周りになります。
そして、地球のこの自転は貿易風と偏西風と極東風を生み出し、これらが気候に大きな影響を与えます。この説明はあまりに複雑なので今日は省略しますけど、昔の船乗りたちはみんなこの風をよく知っていて、帆を張って貿易風に乗ればどちらに行けるとか、今はこういう風が吹く季節とかをわかっていました。
2003年7月、西ヨーロッパでは記録的な猛暑と乾燥が続き、パリでは最高気温が40度を超え熱波で老人を中心に多数の死者が出ました。シベリア東部、中国南部、北米西部も高温。これを利用してIPCC一派は「地球の温暖化だ」と騒ぎましたが、原因は違います。なぜならこの時期、東欧と北欧、中央アジア、北米東部、日本では平年より気温が低かったのです。
では、なぜ高温地域と低温地域が交互に現れたのでしょうか。これは偏西風の蛇行によるもので、北半球の中緯度で平均気温が平年に比べて高い地域と低い地域が交互に並んだからです。
(7)南米沖のエルニーニョとラニーニャ
エルニーニョとラニーニャ現象というのも面白いですね。①南極の深海の冷たい海流が北上する。②貿易風を受けて、③太平洋を温めたり、冷やしたりする。
そこで、貿易風が弱くなると冷水が浮上しにくくなって表層水温が高くなる。これがエルニーニョ。エルニーニョはクリスマス頃に起きやすいので、スペイン語で「赤ちゃんのキリスト」という意味です。
逆に貿易風が強くなると冷水が気流に吸い出されて表層水温が低くなる。これがラニーニャです。
エルニーニョとラニーニャは、たいてい交互に発生します。平均周期は4年ぐらいで、1951年~2017年の67年間に17のペアが発生した。このうち1997年~98年のエルニーニョは20世紀最強で世界各地に高温をもたらしました。2015年~16年も強いエルニーニョが発生して、2015年12月の北半球は大暖冬となった。
しかし、これは後で原因がわかっただけで、そうなることを予見できた人はいませんでした。[図表17]を見てください。1998年の高温ピークが実はエルニーニョによるものだったのです。2015年の高温もエルニーニョでした。つまり、この高温はCO2と関係ないのではないかということです。
(8)インド洋ダイポールモード現象
さらに、インド洋ダイポールモード現象が大きな気象変化をもたらすことが最近わかってきました。これも複雑なメカニズムなので説明は省略しますけれど、これは先ほどのブックレット『地球温暖化説はSF小説だった』にくわしく説明してあります。(9)に挙げたマグマと地震の問題は割愛しますが、これだけの事象が組み合わさって気候変動を起こしているわけです。
そこで皆さんにお尋ねします。このように気候変動を起こすメカニズムはあまりに多様にあり、しかも相互に複雑に組み合わさっています。これらをもとに100年後、いや10年後の地球の気候を予測できますか? いたらバカですよ。
現実には、大地震も火山の大噴火も予想することができないのが人類です。天体での地球の動きやそれによって生じる貿易風、偏西風、しかもそこからさらに起因する、多くの異常気象をもたらす複雑な要因がある。そんなことをシュミレーションで推定しようと考えることができるわけがないのです。
いつ、何が、どこで、どのように、なぜ起こるのかを予測することなんてできないことを知っているのが、科学者です。ところが、「太陽の活動が地球の気温・気候に最大の影響を与える」という常識を完全に無視して、すべてをCO2原因説で説明していることが、IPCC集団の致命的な間違いなのです。
株式会社鹿砦社が発行する季刊誌。「死滅したジャーナリズムを越えて、の旗を掲げ愚直に巨悪とタブーに挑む」を標榜する。