【特集】沖縄PFAS問題

琉球/沖縄における有機フッ素化合物(PFAS)汚染

祖慶真行

有機フッ素化合物(PFAS)は、「永遠に残る化学物質」と呼ばれており、除去や浄化が困難な物質である。低出生体重、免疫システムへのマイナス影響、がん、甲状腺ホルモンへの影響をもたらすことがすでに立証されており、21世紀の公害とも言われている。欧州の潮流は、規制強化の流れである。

米軍基地を多く抱えさせられている沖縄県においても基地からのPFAS流出が深刻な問題であるが、自衛隊基地からのPFAS流出事故も無視できない。

1.在沖米軍基地からのPFAS流出

沖縄県企業局は、2016年1月に水道水の取水源である米空軍嘉手納基地内を通る大工廻川や、比謝川でPFOSを検出。大工廻川では「1㍑あたり(以後、省略)」183~1320ナノグラム(以下、ngと表記)を検出。また、同年11月、沖縄県環境部は、米軍普天間基地下流の地下水から1300ngの高濃度のPFOSを検出した。20年4月、普天間基地の格納庫から、PFOSを含むドラム缶約720本分の泡消火剤混合液が基地外に流出したが、格納庫近くで米兵がバーベキューをしていたことが原因と判明した。

Okinawa Aerial View

 

21年6月、うるま市の米陸軍貯油施設から国の暫定指針値の約1600倍のPFASを含む汚染水が下水に漏出した。漏出先には沖縄県の取水源である天願川があり、県民に強い衝撃と不安を与えた。

同年7月、米海兵隊キャンプ・ハンセンに近い金武町で、飲料水の水源から暫定指針値の1.8~8.2倍のPFASを検出したため、取水を一部停止。しかし、2020年時点で水道水から国の暫定指針値を超える70ngが検出されたことが分かっており、それ以前から住民が高濃度のPFAS汚染水を飲用していた可能性が指摘されている。

同年8月、在沖米軍は独自に処理したとされるドラム缶320本に相当するPFOSを含む汚染水を日本側の了解を得ず普天間基地(宜野湾市)から排水溝に強行放出した。地元自治体が直後に採取した結果、下水から暫定指針値の13.4倍のPFASが検出された。

沖縄大学の桜井国俊名誉教授は、「PFASの排出に関する規制値は日本にはなく、米軍の主張には根拠がない。海に流されたPFASは生物の中に濃縮される」と反論し、警鐘を鳴らした。

2.世界におけるPFASの環境規制値と沖縄での高異常値

米海兵隊は、20年5月28日制定の日本の暫定指針値(PFOS、PFOAの合計値が50ng以下)を参考にしているが、米海兵隊基地があるカリフォルニア州は、21年7月に公表したPFOS、PFOAの環境基準値の草案をPFOSが1ng、PFOAが0.007ngとしている。また、米国の世界的な環境保護団体(EWG)の規制値は、PFAS全体の総量を1 ngに厳しく設定している。これらの環境規制値に照らし合わせても、沖縄で起きているPFAS汚染は、強く警鐘を鳴らすべき事態であり、決して看過できるものではない。

3.日米地位協定による立ち入り調査の大きな壁

日米地位協定の他的管理権のため、水道水を管理する県企業局は、米軍の合意なしには米軍基地への立ち入り調査ができない。日本側に米軍基地への立ち入り権がないことは、米国が他国と締結している地位協定と比較した場合、はなはだ異常である。独、伊、ベルギー、英国などの国々の場合は、ホスト国に立ち入り権が確保されているが、日本の地位協定は、基地への立ち入り権を認めておらず、また、締結後60年の今日にいたるまで一度の改定もされていない。

4.自衛隊によるPFAS流出と無責任・不誠実な住民対応

21年2月26日、航空自衛隊那覇基地で泡消火剤の流出事故が発生。泡は風に流され、遠くは事故現場から2.2kmまで飛散し、住宅地や保育所の敷地内への付着が確認された。

事故発生後、自衛隊側は、当初、県や那覇市、新聞社などに対し、「飛散した泡に有機フッ素化合物のPFOSは含まれてない」と発表した。しかし、地元紙が独自に採取したサンプルの泡から高濃度のPFASが検出されたと報じた事により、当初の自衛隊発表の内容との違いが明らかになった。それにもかかわらず、自衛隊が泡消火剤が付着した住宅の住人への謝罪と、汚染箇所を洗浄したのは、事故発生4カ月後であり、加害者意識が全く感じられなかった。

事故発生の後、航空自衛隊の井筒俊司航空幕僚長は記者会見で、「健康調査の実施について環境コンサルタント等に意見を求めていく」と明言した。これに対して自衛隊に複数回電話でその回答を求めたが、たらいまわしや虚偽の調査方針を伝えられた末、航空幕僚監部広報室から回答を受けたのは事故からほぼ1年後であった。環境コンサルタントからの回答は「健康を損なわないと判断される」であったが、会社名や意見照会日、意見回答の受理日、回答の根拠も不明なままである。

他方、京都大学の原田浩二准教授は、事故以前から周辺の土壌にもPFASが蓄積している可能性が高いと地元新聞にコメントしている。これらの経緯から、自衛隊の対応は米軍同様、地域住民の人権や健康、環境保全への意識が低く、不誠実で無責任と言わざるをえない。

 

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祖慶真行 祖慶真行

「那覇市民の命を守る会」共同代表

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