【特集】統一教会と国葬問題

中村敦夫が語る50年:旧統一教会『口封じ』の手法

中村敦夫紙の爆弾編集部

7月8日に起きた安倍晋三元首相銃撃事件によりにわかに注目を集め、連日報道が続く旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の問題。霊感商法被害、政界との癒着をはじめ、論点は複数あるが、それらが今に始まったものでないことは言うまでもない。

1993年、テレビでの発言で教会から刑事告訴を受け、1998年には参院議員として国会で追及した中村敦夫氏に話を聞く(談。文責:『紙の爆弾』編集部)。

・迷いの時代に生まれた異形の集団

私が旧統一教会に興味を持ち、取材を始めたのは1970年代のことだ。「木枯し紋次郎」(フジテレビ系)の放送が始まったのが1972年の元日。主に俳優として活動していたが、一方で、社会的なテーマを軸にした映画を自分で作りたいと考えていた。

そんななか、大学の構内や駅前などで「原理研究会」に出会った。路上に黒板を持ち出し、髪を振り乱すようにして行なう勧誘活動の異常さは、衝撃的なものだった。

1972年は連合赤軍が解散するなど、すでに全共闘運動が下火になり、若い人たちの間には白けたような空気が漂っていた。さらに、オイルショックに見舞われ、高度経済成長が終焉を迎えるなかで、それまで会社に尽くしてきたサラリーマンも、自分自身を見つめるようになった。政治的テーマについても、誰もが経済しか語れなくなった。左右の境がぼやけていくような時代だった。

その時に出会った原理研の、異様といえる熱狂的ぶり。調査を進めると、宗教団体を装った新しい手口の職業的詐欺団体であるということが、すぐに見えてきた。ただし、映画化のチャンスには結びつかなかった。

それから20年後の1993年。その前年ごろから合同結婚式をはじめとした統一教会の派手な動きに世間の注目が高まり、元アイドルの桜田淳子や、元新体操選手の山﨑浩子などの名前がマスコミを騒がせていた。

Breaking news on tv. Man watching live television broadcast program. Covid19, coronavirus and medical information or election reporter and presenter in world politics. Financial journalist channel.

 

日本テレビ系の情報番組「ザ・ワイド」に、別のテーマでゲスト出演した私は、番組がたまたま合同結婚式の話題に触れたことで、その意味や統一教会の正体について、知っている限りのことを答えた。「合同結婚式は血分けの儀式」「統一教会は姦通型の布教」。こうした説明が名誉毀損に当たるとして、統一教会は私を刑事告訴した。

November, 2016 photography

 

反社会的なことをしている連中に何の名誉があるのだ、というのが、真っ先に抱いた感想だった。すでに統一教会の問題は、メディアでも明らかになっていた。1992年5月に休刊したものの、「朝日ジャーナル」はもっとも先鋭的で、「サンデー毎日」や「週刊文春」などでも複数のジャーナリストが専門的に取材に取り組み、レポートしていた。

それらに対しては、統一教会側から記者やジャーナリストに対して、無言電話や家族の尾行、おかしな物品を送り付けるといった“反撃”が行なわれていた。特に企業型のメディアは、その対応に手間がかかることを嫌う。さらに、何でもかんでも裁判に訴えられればコストもかかる。メディアの間では、統一教会の問題に対して逃げ腰になっていく雰囲気がだんだんとできつつあった。

私がテレビで統一教会について解説したのは、そんなときだった。それまで、嫌がらせ等による「口封じ」は功を奏してきたのだろう。それだけに、私の態度に教会側は驚き、刑事告訴という手段をとったのだと思われる。

本当に対決するつもりであれば、民事訴訟で損害賠償請求をしたはずだ。しかし、民事だと法廷で論戦になるから、統一教会としては避けたい。

また、放送した日本テレビではなく私個人を対象としたことからも、告訴の意図は見え見えだった。

私は1993年6月21日、反統一教会の主張を明確にしていた作家やジャーナリスト・研究者・弁護士らと会見を開いた。スポーツ紙などは私たちを「七人の侍」などと呼んだ。

私たちが真っ向から反撃したことに、教会はさらに驚いたのではないか。それまで、メディアに批判的に報じられることがあっても、脅せば黙るというパターンがほとんどだった。しかし、今回は勝手が違う。

7人の1人であり、現在も全国霊感商法被害者弁護士連絡会(以下、全国弁連)の代表世話人を務める山口広弁護士らが、ことごとく霊感商法を裁判にかけていった。

当然ながら連戦連勝で、そのうち統一教会は賠償額を払いきれなくなり、差し押さえまで喰らっている。私への告訴も不起訴となった。こんな馬鹿な告訴を検察が取り上げるわけがなかったから、予想通りの結果といえた。

前述したとおり、私が取材した内容は映画にはならなかった。日本の映画界というのは、政治的であったりアブない匂いがすれば、忌避するものだ。アメリカのように、きわどいテーマをあえて商売にしようという映画人魂はない。

そこで小説にしたのが、1994年に文藝春秋から刊行した『狙われた羊』である。私はそれまでにも、取材しつつも映画にならなかったテーマを小説にしていた。

『チェンマイの首』(講談社、1983年)をはじめとした東南アジア3部作も、そうした経緯による。東南アジアを舞台にした映画など、当時の日本映画界は手を出さなかった。

・「不安産業」という詐欺的商法の一大ジャンル

統一教会について調査を進めるなかで、当時として非常に新しい部分として発見したのが、「マインドコントロール」を武器とする手法だった。

image of a hand, that manipulates the mind of another person, isolated and toned

 

最初は正体を隠して何段階かの集会に連れて行き、身体的な拘束をもって最後に“仕上げ”を行なうのである。人間から考える力を奪うということを、科学的に実行していた。

そうして献金を集める一連の作業を、私は「不安産業」と呼んだ。これはその後、統一教会に限らず詐欺的集団の用いる手法として定着することになる。

人は激しい競争社会に巻き込まれて挫折すれば、本人のみならず家庭も不安定になる。拠って立つべき価値観がわからなくなる。当時から今に至り、社会全体はその度合いをさらに強めている。

不安を抱える人々の心の隙間に入り込み、その不安を利用するのが不安産業であり、統一教会の信者たちは、それに従事する社員といえる。ただし、そのほとんどは並みの給料を受け取れない奴隷労働者である。

例の高額な壺を売るにしても、本来ならば、もっとも経費がかかるのが人件費だ。統一教会においては、この部分がほとんどゼロである。つまり売上はまるごと利益。資本主義における最高の形態と言っていい。その手法を発明したのが統一教会で、「不安産業」の一大ジャンルが築き上げられた。

現在では、霊感商法の主流は、会員への献金の強要に向かっている。そこで使われるのが、先祖解怨(かいおん)という脅迫的物語である。

そんな統一教会の実態を明らかにする目的で、1994年に書き上げたのが、前述の『狙われた羊』だった。ある場末の探偵事務所に、宗教団体によりマインドコントロールされた娘を救出してほしいとの難題が持ち込まれる、というストーリーで、どのように熱心な信者を作るか、私が知ったノウハウを詰め込んだ。

ついでながらいうと、この小説は講談社文庫の11月の新刊として発売された。大文豪ならいざ知らず、作家もどきの私の作品が30年ぶりに再販されるとは、これも時代の要請なのだろう。

話を当時に戻す。統一教会の合同結婚式と並行して、1990年代に入るとオウム真理教が総選挙に出馬するなど、話題を独占した。しかも大量殺人事件を引き起こし、世間においてカルトといえばオウム真理教となった。

その結果、メディアでは、いつの間にか統一教会はなかったことのように扱われるようになった。「空白の30年」にもつながることになる。

・宗教でもなく政治団体でもない

マインドコントロールそのものは、統一教会に特有のものではない。あらゆる宗教において、一定程度含まれているものだ。たとえば占い師も、言ってしまえば宗教的な手法で相手の心を動かしてお金を得る職業である。

しかし、統一教会は、“原罪” をでっち上げて献金や商品購入を迫る詐欺的商法である。現在の報道でも、「信教の自由」に絡めて話す人が多いが、私に言わせれば、これは宗教ではない。そこに信教の自由を持ち込むことは、問題に正面から取り組むのを避けるために、あえてハードルを高めているようにも見える。

そもそも統一教会は、宗教として奇妙である。その教義の基本においては、旧約聖書の構図を利用・曲解して、『原理講論』という別の聖典をでっち上げた。韓国語版・英語版・日本語版で記述内容が違うという代物だった。

日本の植民地時代の朝鮮半島では、平壌を中心に、変ちくりんな新興宗教が勃興している。その中に教祖・文鮮明もいた。統一教会は1954年、韓国で誕生したとされるが、韓国は伝統的なキリスト教が、日本などより圧倒的に強いため、まがいものは通用しない。その中で非常に限定的な形で発展を遂げていく。その過程で編み出されたのが、その後、霊感商法と呼ばれる金集めの手法だった。

統一教会はキリスト教の傍流というが、そこに収まらず、仏教にまで手を出している。仏教の「多宝塔」や「五輪塔」、仏像を霊感商法の商材として数百万円で信者に買わせてきた。1970年代には弥勒信仰の「天地正教」という団体も傘下に加えた。つまり、なんでもありなのだ。教義に頓着しない宗教などありえない。

一方、合同結婚式は、目的は献金集めにほかならないが、原罪において汚れた血を清める儀式という点で、統一教会の教義の根幹をなすものといえる。とはいえ、その本質は経済活動である。

さらに政治団体もつくろうと、日本と韓国で立ち上げたのが国際勝共連合だった。韓国の独裁者・朴正煕大統領に近づいた文は、「何でもやります」とばかり、その懐に入り込んだ。続いて日本でも、右翼政治家・活動家を巻き込んでいった。

とくに、日本において勝共連合は圧倒的な成功を収める。ところが、東西冷戦が終わると「反共」は商売にならなくなってしまった。すると、文は故郷の北朝鮮に向かい、金日成主席に多額の寄付をすることで「兄弟の誓い」を結び、同国でビジネスを展開した。私が北朝鮮を訪れたときに泊まった平壌の「ポトンガンホテル」も、経営権を統一教会が握っていた。

言うまでもなく北朝鮮は、共産主義を掲げる国だ。これほどに一貫性を無視するのは、勝共連合は政治団体ではない、ということである。一貫性のない政治団体など存在しえないのだ。

統一教会が宗教でもなく政治団体でもないなら、いったい何なのか。要するに詐欺的経済団体なのである。こんなものがなぜ放置されてきたのか、それこそが、いま解明すべきことなのだ。

 

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中村敦夫 中村敦夫

1940年東京生まれ。東京外国語大学卒業後俳優座に入り、ヒット作を演じつつ監督業・作家業も手掛ける。公式サイトhttps://www.monjiro.org/ 中村氏は福島第一原発事故後、自ら脚本を書き上げた朗読劇『線量計が鳴る―元・原発技師のモノローグ』上演も続ける

紙の爆弾編集部 紙の爆弾編集部

株式会社鹿砦社が発行する月刊誌で2005年4月創刊。「死滅したジャーナリズムを越えて、の旗を掲げ愚直に巨悪とタブーに挑む」を標榜する。

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