【特集】統一教会と国葬問題

中村敦夫が語る50年:旧統一教会『口封じ』の手法

紙の爆弾編集部中村敦夫

・国会議員との関係は30年前から指摘

そんな教団になびいた日本の保守政治家も、思想や政策が一致するかどうかは関係なかった。なにしろ統一教会の側に主張の一貫性がないのだから。

9月8日に自民党が発表したところでは、統一教会と関係する国会議員として名前が挙げられたのは121人、少しでも関係があったとされるのは179人。その後も名前が後出しされているが、実態はもっと多いだろう。

というのも、国会議員の地元の選挙区で活動する地方議員の存在があるからだ。さらに、すでに指摘されているとおり、議員たちには教会から秘書が送り込まれている。

政治家にとって統一教会は、ある程度の票をまとめてくれたら神様だ。少なくない国会議員にとって、政治の中身などどちらでもいいのである。就職先の確保がもっとも重要なのだ。

それが反共だろうが勝共だろうが、深く考えるべきことではない。その場その場で手を握り、世話になったら感謝する。呼ばれたらどこへでも行き広告塔になる。政治家にも、主張の一貫性や節操を投げ捨てた連中が、国会に多数いるということである。

私は1998年から参院議員を一期務めたが、何年も議員を続けていても、基本的な素養に乏しい者を何人も見た。外国で暮らしたことがない人が、重要な外交問題を担っているのだから怖いことだ。

さらに、前述のように、文鮮明が北朝鮮で金日成と手を結び、ずっと同国と二人三脚でやっているのだから、日本の情報はずっと北朝鮮に筒抜けだったということである。自民党の政治家たちは、外国を本拠とする非常に謀略的な団体と密接な関係を結んで選挙を戦い、政策をも共有している。

そうした問題意識をもとに、当選直後に参議院法務委員会で、統一教会に関する質問を行なった。当時の高村正彦外務大臣は、統一教会の代理人弁護士を務めた人物だ。さらに、教団の霊感商法の元締めである「ハッピーワールド」という会社から、時価380万円のセドリックを提供されていた。そんな人物が外務大臣を務めているのは危険きわまりなく、罷免すべきだと主張した。周囲が驚いた顔で私を見ていたことを記憶している。

ほかに、文鮮明の日本入国に関する問題も指摘した。文はその犯罪歴から、入管法5条により上陸拒否事由に該当していたが、1992年に同法12条の「特別の事情」をもって入国。しかも「北東アジアの平和を考える国会議員の会」という、6人の国会議員(うち1人は元職)によって直前にでっち上げられた政治団体が招待主だという。6人はいずれも統一教会から献金や秘書の派遣を受けている者ばかりだった。

入国に当たっては金丸信・自民党副総裁が法務省に圧力をかけたとされ、来日中には中曽根康弘元首相と会談していた。

公安調査庁の不作為についても指摘したが、職員一人一人にはメリットはなく、役所としては危ない橋を渡りたくないのが本音だっただろう。ただし、公安委員長には、統一教会と関係のある議員が座っていた。

これらの指摘の背後にある問題は、現在と変わらないものだ。

・今回の問題から知るべきこと

それにしても、現在において統一教会と関係が明らかになった議員たちは、どうして安倍派に集中しているのか。安倍晋三氏が祖父・岸信介元首相以来の3代にわたり繋がりがあることが指摘されているが、それは理由の一つにすぎないのではないか。

安倍氏は在任期間こそ歴代最長だが、目を見張るような政治的な成果はない。むしろ社会に与えたマイナス効果の方が大きい。にもかかわらず長期にわたり政権を維持できたのは、安倍氏の代わりすら出てこないほど自民党がダメになったからだ。

それでも、なんらかの手柄を示すことは必要である。それを演出するべく、安倍氏がすがったのが拉致問題だった。

One of The Asian country North Korea

 

ところが彼には外交的な力もなければコネもない。周囲にいるのはろくでもないスタッフばかり。それで、北朝鮮に影響力を持っている統一教会にすがりたい気持ちがあったのではないか。

もちろんこれは私の推測だが、現在に至る安倍氏と統一教会の関係が明らかである以上、それを拉致問題に利用しなかったとすれば、かえって不自然とはいえないか。

権力のある政治家に官僚が忖度する現在の政治構造は、安倍政権がその基本を作った。その下では、能力や見識のある官僚ほど身動きがとれなくなる。だから、おべっかを使う安物の人間だけが出世する。議員は不祥事が起きても、彼らに助けてもらえる。安倍一強時代における数々のスキャンダルの背後には、この傾向が共通している。

また、個々の議員は自分の地位を維持することしか興味を示さない。それが、統一教会の政界侵入の手法と見事にマッチした。

その間、メディアの注目をかわした統一教会は蔓延を続け、信者たちには奴隷的搾取と献金強要が続いた。そして、今年起きたのが「安倍事件」であった。“過度の献金”によっていくつもの家族を破壊してきたことが恨みを呼び、歪な形で爆発した。

これまで述べた経緯を見れば、政治家自身に自浄作用を期待することはできない。結局のところ、国民が諦めずに決起するしかない。国民まで忖度を始めたら、もう終わりである。いい加減目を覚まさなければ、何回選挙をしても変わらない。

今回の事件から国民が学ぶべきは、一枚皮をめくれば、この国はまともではないという事実である。しかし、政界を是正できるのは政治家だけだ。本当に国民を助けてくれる政治家を探すこと、そこから作業を始めなければならない。

自民党政権は、どさくさ紛れの強行が常套手段である。「安倍国葬」もその一つだろう。唐突に危機をでっち上げ、国民が良いのか悪いのか判断がつかないうちに数の力で強行する。このパターンが、いくつものケースで繰り返されてきた。コロナ騒動もそうである。国民がよくわからないうちに勝手に政策を決めて、不可解な方向へ進んでいくことが続いている。

それゆえに、統一教会の問題は、ただの小さな宗教団体の話ではない。同じ構図が大小の形で、政治のあらゆる局面に存在しているということを理解してほしい。

(月刊「紙の爆弾」2022年11月号より)

 

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紙の爆弾編集部 紙の爆弾編集部

株式会社鹿砦社が発行する月刊誌で2005年4月創刊。「死滅したジャーナリズムを越えて、の旗を掲げ愚直に巨悪とタブーに挑む」を標榜する。

中村敦夫 中村敦夫

1940年東京生まれ。東京外国語大学卒業後俳優座に入り、ヒット作を演じつつ監督業・作家業も手掛ける。公式サイトhttps://www.monjiro.org/ 中村氏は福島第一原発事故後、自ら脚本を書き上げた朗読劇『線量計が鳴る―元・原発技師のモノローグ』上演も続ける

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