歴史の本質から目を背けるな、日本人を蝕む同調圧力と社会的病理の正体

木村三浩

・踏みにじられ続ける沖縄県民の意志

ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者でユーチューバーのひろゆき氏が、沖縄県名護市辺野古で米軍新基地建設に反対する住民らの座り込み運動をツイッターで揶揄して騒動になった。

 

「新基地断念まで座り込み抗議 不屈3011日」と書かれた看板の横でピースする写真とともに、「座り込み抗議が誰も居なかったので、0日にした方がよくない?」と書いたツイートが“ 炎上” すると、 ひろゆき氏は「『座り込み』の辞書的な意味の問題」と逃げる無責任ぶりを見せた。一方、ネトウヨたちは28万超の「いいね」とともにひろゆき氏に便乗し、新基地建設に反対する人々を罵倒した。

現地で座り込みによる抗議運動が始まったのは平成26年7月。辺野古基地建設予定地の埋め立てのための土砂が搬入されるのを食い止めるのが目的だ。

重要なのは、そこに沖縄県民の意志があるということだ。その意志は、住民投票や、9月の県知事選をはじめ、数々の選挙でも明確に示されてきた。

しかし、それは、わが国の政府によってずっと無視されてきた。令和元年の県民投票における埋め立て反対多数の結果に対しては、当時の安倍晋三首相が「基地移転をこれ以上先送りすることはできない」と、県民の意思を真っ向から拒絶した。こうして政治の不作為が放置されているのは、体制の側に過剰な権力が集中していることを意味する。

そこでは、すでに軟弱地盤の問題をはじめ、不合理な事実が明らかになっている。沖縄戦を戦った日本人のご遺骨も存在する。それら論理や人間としての倫理を無視して埋め立ては強行されているのだ。

これら事態の本質をあえて逸らして、看板の記述だけを採り上げ冷笑してみせたのがひろゆき氏だった。本人は論理的な人間のように振舞っているつもりでも、言っていることはただの屁理屈にすぎない。そして、彼に便乗するネトウヨたちは、さらに「沖縄の反対はゴネ得だ」、抗議者たちを「基地外(=基地の外)だ」と、ヘイトをばらまきながら権力側に阿(おもねろう)としている。

冷笑はやる側が知的優位に立てたと一瞬の錯覚をもたらす作用があるが、実際には何の解決にもならない。それがウケてしまうのは、現在の日本人の間に蔓延する社会的病理といえる。

Portrait of funny Asian man laughing hard and pointing forward, bully expression against white background

 

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木村三浩 木村三浩

民族派団体・一水会代表。月刊『レコンキスタ』発行人。慶應義塾大学法学部政治学科卒。「対米自立・戦後体制打破」を訴え、「国際的な公正、公平な法秩序は存在しない」と唱えている。著書に『対米自立』(花伝社)など。

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