【連載】モハンティ三智江の第3の眼

インド、2重株で世界最悪、酸素欠乏で司法が行政に戒告、再封鎖も

モハンティ三智江

さて、他州の支援に乗り出した当オディシャ州(人口4600万人)とて、例外でなく、ハイペースで増えており、新規数は6600人超(全国17位、第1波の9月25日付最多4356人をはるかに凌ぐ)、実質陽性者数は4万人を超えている(累計40万人超)。それでも、全国の異常な急増に比べればましで、死者も依然少ない(1981人)。

今や、チャティスガール州(Chhattisgarh)との西部州境よりも、三重変異株が見つかった北隣の西ベンガル州との州境(既に封鎖)で厳重な警戒が続いているが、海路の侵入にも神経を尖らせている。

もうひとつ厄介なのは、移民労働者問題。ロックダウン(都市封鎖)州から早晩、60万人、70万人もの帰省者がなだれ込むと想定され、州政府は医療センターを備えた隔離施設の完備に臨戦体制で臨んでいる。コロナ専門病院(現在70カ所)の新設や、病床の補充(現在の1万2000床+新5万8000床)も着々と進められている。

当地プリータウン(Puri Town、プリー地方=1行政区画・11町・11ブロック・1722村=人口約170万人の実質陽性者2000人超)は、ついひと月前まで賑わっていたのが打って変わって嘘のような、異様な静けさが戻り、車の往来も途絶え、通りは閑散としている。週末すら人気がなく、ホテル街はがら空きだ(当聖地のシンボル、シャガンナート寺院=Jagannath Mandir=は5月15日まで閉鎖)。

プリーは、北隣の西ベンガル州民のお気に入りスボットで、日頃から愛顧されている当ホテル街だが、三重変異株を警戒して、陰性証明もしくはワクチン証明の提示がない限り、泊めないようにとのお上からのお達しが下った。

〇身辺こぼれ話/コロナ下の改築

メガ第2波中、改築工事を始めてしまった当ホテル(Hotel Love&Life, C.T.Road, Puri)だが、どうやらビルの屋上の欄干工事は終わった。2019年5月のサイクロンで一部崩落したものを、全策コンクリートの仕切りに作り替えたのだ。次は電気の配線工事が控えているが、お客さん不在のこの時期を利用して、やれる範囲で必要不可欠な小改築を進めるつもりでいる。

コロナ戦況が圧倒的に形勢不利なタイミング最悪のさなか、工事も何もあったものじゃないが、先代オーナーのたっての要請なのだから、従うしかない。

ひと月ほど前、息子の夢に現れた亡父は、遺族がホテルを野放しにしていることを叱咤、ホテルを守り継いでいくのは、後継者であるお前の義務と責任だと、発破をかけたのであった。

以後、息子のホテルに取り組む姿勢が変わり、真剣に対処するようになったというわけだ。私自身は今少し事態を静観したい思いもあったのだが、息子に、自分に任せてくれと言われて、折れた。

ハイデラバード(南隣のアンドラプラデシュ州都)のフセイン・サガール湖で夜の遊覧船ツアーを楽しむ亡父と息子(2017年3月)。2019年11月に逝去したダッドは今も、折々夢に現れて、愛息を諭す。

 

コロナ下客が入らないだけに、ホテルの老朽化が著しく、亡夫が荒廃ぶりを怒り嘆くのも無理はないと思ったからだ。しかし、先が見えない中、改築を進めるのは、精神的にも不安定で落ち着かない。

本日からウィークエンド・シャットダウン(オディシャ州の全30市町)が始まった。禁を冒して、夕刻30分だけ浜に出たが、途上の路も海辺もがらんとしていた。

少し後ろめたかったが、ミッドサマーて蒸し暑い中、磯の涼気に触れるのは心地よく、頭上を仰ぐと、逢魔時(おうまがどき)の紫青の闇に、輝かしいしろがねの円月がかかっていた。無人に近い波打ち際を滴るように照らし出す壮麗さに見とれた。

今日から2日間は、レセプションも閉められるのだ。既にこの2週間ほど、客は皆無とはいえ、開けているだけで気分が違うものだが、致し方ない。

レセプションの遺影、先代オーナーに、家族・スタッフの健康・安全と、将来の商売繁盛を祈願した。隣の神棚のジャガンナート神(当地のヒンドゥ教シンボルの宇宙の主、1化身が仏陀)に、パンデミック終息を改めて、お祈りすることも忘れなかった。

〇こぼれ話・おまけ

英字紙「The New Indian Express」は4月26日より、未曾有の危機を鑑みて、クリケット関連記事の削除を決意、試合観戦で浮かれている場合でなかろうとの警告のつもりだろうが、クリケット狂のインド男性ファンの落胆ぶりが目に浮かぶようだ。

代わりに、酸素マスクを付けて横たわるコロナ患者や、ワクチン接種に並ぶ住民、列を作って帰省バスを待つ移民労働者らの写真で埋められた。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、コロナウイルスには感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人超と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は2020年3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長、17日に5月31日まで延長し、31日をもって解除しました。これにより延べ67日間となりました。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。

2021年4月29日現在、世界の感染者数は1億4963万5392人、死亡者数が315万1064人、回復者が8686万2184人です。インドは感染者数が1837万6421人、死亡者数が20万4832人、回復者が1508万6740人、アメリカ、ブラジルに次いで3位になっています。

ちなみにアメリカの感染者数は3222万9598人、死亡者数が57万4326人(回復者は未公表)、ブラジルの感染者数は1452万1289人、死亡者数が39万8185人、回復者数が1284万9663人です。日本は感染者数が58万3125人、死亡者数が1万0139人、回復者が51万2728人(ダイヤモンド・プリンセス号を含む)。インドの州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。

また、インドでは2020年3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」、18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は2020年5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類しています。編集注は筆者と関係ありません)。

 

※この記事は「モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記」(2021年5月11日)からの転載です。

原文はコチラ→インド、2重株で世界最悪、酸素欠乏で司法が行政に戒告、再封鎖も(67) 

 

ISF主催公開シンポジウムのお知らせ(2023年1月28日):(旧)統一教会と日本政治の闇を問う〜自民党は統一教会との関係を断ち切れるのか

ISF主催トーク茶話会(2023年1月29日):菱山南帆子さんを囲んでのトーク茶話会のご案内 

※コロナ&ワクチン問題関連の注目サイトのご紹介です。

https://isfweb.org/recommended/page-2168/

※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。

ISF会員登録のご案内

「独立言論フォーラム(ISF)ご支援のお願い」の動画を作成しました!

1 2
モハンティ三智江 モハンティ三智江

作家・エッセイスト、俳人。1987年インド移住、現地男性と結婚後ホテルオープン、文筆業の傍ら宿経営。著書には「お気をつけてよい旅を!」、「車の荒木鬼」、「インド人にはご用心!」、「涅槃ホテル」等。

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ