【特集】統一教会と国葬問題

〝ステルス信者〞が政治家支援、旧統一教会と自民党現在も続く癒着

片岡亮

・進みつつある信者離れ

「政府が10月に、解散命令にも繋がる質問権を行使すると言い出したあたりから、しばらくは目立った動きをするなよと幹部から言われました。だから最近、私は礼拝に行かなくなったんですよ。それでも何も言われなくなったんです」。

こう話す30代女性は、幼少の頃からの二世信者。父親がすでに他界したが、母親は現在も信者である。これまで首都圏のある教会で、日曜日などに礼拝をする定期的な集まりがあったが、10月9日を最後に礼拝に行かなくなった。

彼女に言わせると、「参加者がどんどん減っていて3割くらいいなくなったと感じていた頃に自分たちも行かなくなったんですが、いまはさらに人が来なくなって、半分以下に減ったと聞きました」という。

A news headline that reads “Right to Ask” in Japan.

 

ただ、礼拝離れの理由は人それぞれのようだ。ステルス信者の指示を受けた者だけでなく、単に教団に不信感を募らせた人も少なくないからだ。彼女も後者で、以前から連絡用に使っていたZOOMなどの動画会合で、信者同士の私的会合をするようになった。

「日頃から気の合う信者同士、友だちのようになっていて、ZOOMでの集まりはあったんです。コロナ禍でそれが増えて、ちょうど緊急事態宣言が出たときに、礼拝に行かなかった時期もあったので。以前なら礼拝に行かないと幹部の人に注意されましたが、いまはその幹部の人も、マスコミから逃げたり行方がわからなくなった。それで、礼拝に行かない人同士がZOOMで信仰について話すようになっているんです。そんな少数グループは、今かなり増えていますよ。

ある意味、コロナ禍が家庭連合の問題から私たちを助けた感じで、それも神の御意思じゃないかっていう人もいるくらい。母はZOOMはやっていませんが、私のグループは6人で集まっていたのが、最近8人に増えた。信仰についての意見交換や、信者であることで困ったこととか雑談みたいな感じですが、最近の家庭連合がおかしいといった意見も少なくありません」。

そうした傾向の背景には、元二世信者が顔を出して記者会見し、涙を見せつつ被害を訴えたこと、それを教会側が中止するよう働きかけていたことなどがある。「私たちも、異様だって思いましたよ」と同女性。

「これまで知らなかった被害者がたくさんいたことはショックでした。母から聞く限り、ウチはまとまったお金を献金したことこそなかったんですが、この10年ぐらい、母と私の世帯収入から2割ほどを定期的に家庭連合に寄付してきました。

それ自体は、ジムに通ったりピアノを習ったり、エステに行ったりするのと同じ自由なお金の使い道なので、特におかしいこととは思いません。しかし、若い頃からずっと厳しく言われ続けた恋愛禁止や携帯電話禁止などには反抗心がありましたし、合同結婚式の参加は私だけでなく母も思いとどまっていたんです。

安倍さんが亡くなってからは、信者間で目立った動きはしない方がいいという話があって、献金もしなくなりました。信仰心はあっても家庭連合はおかしいって意見が母と一致して、礼拝に行くのもやめました」(同前)。

・カルトの跋扈を許す現代政治

一方、このZOOM等の小規模会合は、教団への反発とは限らず、従属を強めることが目的のグループも多数存在しているという。彼女がほかの信者から入手したZOOMの録画では、こんな風に演説していた信者もいた。

Video conference concept. Telemeeting. Videophone. Teleconference. Remote work.

 

「いまこそ聖戦のときです。家庭連合を批判する連中は悪魔、ここで戦わないと神に背くことになるんです。少しでも連合に対して不信感を持ったら、それが悪魔の囁きです。このサタンを阻止すること、悪魔に魂を乗っ取られた世間の連中の意見は見るな、読むな。彼らの目的は愛の破壊、これに勝たなければ、これまでの信仰がすべて無駄になってしまうんです!」。

そこで指示された“対策”は2つ。ひとつは「フェイスブックやツイッター、ヤフーニュースのコメント欄など」と具体的なネットの場を指し、「信教の自由を訴えて、教団批判は差別だという意見を書き続けること」。もうひとつがステルス支援で、窮地の政治家を助けることとされた。

これはそのまま、統一教会と癒着する自民党政治家たちの本音であり、50代の元信者男性は、「応援してきた議員が教団との関係を追及されて絶縁宣言をしました。でも、その議員の関係者からも11月12日に電話があって、次の選挙では人手不足になるし、人集めも厳しくなるので、信者ではなく一般人の扱いで助けてほしいと言われました」と明かす。

渦中の議員たちは口々に教団との絶縁と言うが、裏ではこれが実態のようだ。

こうして信者の間でも分断が起きているということは教団側も承知。信者たちの私的なZOOM会合に紛れ込み、「世間に負けたらダメ」とか「抜けるのは地獄に落ちること」と、脱会を食い止める動きも活発化している。

「幹部クラスの信者が突然、家に来て、私のパソコンでZOOM画面を開かせて、そこで信仰に背くと不幸になるとか脅しみたいなことをしゃべっていたことがあったんです」(ある女性信者)。

統一教会は、前述のように関連団体が散らばった性格から、分裂しやすい傾向が以前からあった。特に文鮮明教祖の死後、「第4の父」の存在を巡って意見が対立、一部グループが組織から分派したこともあり、その分裂のたび、一部の熱心な信者がヒステリックに引き止め工作に走ることが繰り返されてきた。

テレビ番組のコメンテーターに訴訟を起こすなど反撃姿勢を強めるのもその反応のひとつで、「殺伐とした空気になってしまった」と前出の女性信者。

さらに、統一教会問題の表面化は、他の教団にも影響を与えはじめている。幸福の科学では秋ごろから急に、ネットなどで「自殺防止相談窓口」の宣伝を繰り返している。「死にたい。と悩んでいるあなたへ気軽にご相談ください」と、教団の相談窓口を紹介するのだ。

宗教ウォッチャーは「弱った人に対する露骨な勧誘」と、こう解説する。

「以前から駅前などで優しそうな中年女性などが、自殺を減らしましょうと言って紙袋を配っていました。その中身は入会案内。信者の獲得が難しくなってきて、巧妙なことを始めている」。

幸福の科学も政治活動が盛んなのは周知のとおり。「政教分離は、宗教団体が政治に参入してはいけないという意味ではありません。正しい民主主義には宗教が欠かせない」という解釈を掲げているが、いびつな布教活動を許すのは、そこに基準を作ってこなかった政治の怠慢だ。

日本がかつての一億総中流でなくなり、貧困が増えても大増税路線。人々が幸福感を大幅に下げている中で、救世主みたいな顔をした詐欺師のような連中が政治と宗教を悪用し、さらに国民の財産を食い物にしている。

カルト教団への信仰を心の拠りどころとしていた信者でさえも路頭に迷っている現代。われわれ国民の手でこの政治状況を変えない限り、ステルス信者が増えただけ、という皮肉な事態にしかならないだろう。

(月刊「紙の爆弾」2023年1月号より)

 

ISF主催公開シンポジウムのお知らせ(2023年1月28日):(旧)統一教会と日本政治の闇を問う〜自民党は統一教会との関係を断ち切れるのか

ISF主催トーク茶話会(2023年1月29日):菱山南帆子さんを囲んでのトーク茶話会のご案内 

※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。

ISF会員登録のご案内

「独立言論フォーラム(ISF)ご支援のお願い」の動画を作成しました!

1 2
片岡亮 片岡亮

米商社マン、スポーツ紙記者を経てジャーナリストに。K‐1に出た元格闘家でもあり、マレーシアにも活動拠点を持つ。野良猫の保護活動も行う。

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ