【連載】モハンティ三智江の第3の眼

コロナ禍、減らない日本に対し印では風土病へ移行か

モハンティ三智江

帰国シリーズが始まったばかりで、続編はまだまだ続くのだが、今回は、帰国して3週間経った今(2022年4月2日)、私が如実に感じたインドと日本の違いについて、コロナ観戦記本題に戻ってお伝えしたい。

私は2年以上帰りたいと祖国に焦がれ続け、やっと念願を達成したわけだが、感情面ではやや誤算があった。それは、こんなはずじゃなかったという、いわゆる現実とのギャップである。

金沢市内の繁華街、香林坊の109ビルの裏手にあるせせらぎ通り。疎水が流れ、風情ある佇まい、洒落た飲食店が軒を並べるが、コロナの影響で客は減っているだろう。

 

日本に帰れば、自由があると焦がれてきたが、実態は、不自由さはあまり変わらない。それは、インドと日本の国民性の相違もあると思うし、パンデミック(世界的大流行)はほぼ終わったと思われているインドと比べ(4月2日付で全土の陽性者数は1200人台、オディシャ=Odisha=州は20人台)、日本の減少が緩やかでここ2、3日はリバウンドの兆しさえ見せ(昨日で全国5万人台)、高止まり傾向が続きそうだからである。

日本の11倍の人口のインドが過去最低水準まで落ちているのに比べ、日本の数字は世界的に見ても高い。

インドを第3波、オミクロン爆発が襲ったのは1月中だったが、日本と違い、ひと月と経たないうちに減少し始め、私がインドを後にする頃には、社会生活がほぼ平常に戻っていた。

東部オディシャ州にあるわがホテル(Hotel Love &Life, C.T.Road, Puri)も、連日満室に近い賑わいを見せ、今現在も、現地の親族から届いた報によると、盛況ぶりは変わらない。

長かったコロナ明けで、観光産業はやっと、活気を取り戻し、3月27日に実に2年振りに国際線が再開され、定期商業便が復旧したことが拍車をかけ、今後外国人旅行者も少しずつだが、増えてくるだろう。

インドは終息モード、東部オディシャ州プリーにあるわがホテル(Hotel Love & Life)は連日満員。

 

それにしても、日本は何故減らないのか。私自身、オミクロン爆発がここまで長引くとは思わず、誤算だった。今少し状況静観、収まるまでは、大っぴらに外出もできないし、友人との飲食など、もってのほかだ。制限をかけているのは自身だが、私と同世代の周りも、真面目な日本人だけに慎重だ。

よって、再会したのは、ごく少数の親族くらいで、友人の誰一人とも顔を合わせていない現状、もっぱらメールや電話で帰国報告と相成っている。

日本の陽性者数が減らないのはひとつには、「まん延防止等重点措置」がゆるすぎて効果をあげないことがあるだろう。「緊急事態宣言」ですら、インドや欧米のロックダウン(都市封鎖)に比べると、ざるで、結局社会活動を効果的に制限できず、接触の機会がほとんど減らないことから、減少もゆるやかで、連休などがあると人出が増えるから、リバウンド、この繰り返しで6波に及ぶ小波を反復してきた(来たる5月の連休の揺り戻しがつとに懸念される)。

インドの場合、波と波の間に半年程の間があり、その都度波は大きく、特に第2波は津波級だったが、厳格なロックダウンが功を奏して、次の波までの期間が日本に比べれば、はるかに長い。その代償に、経済的ダメージは大きかったが、日本のコロナ対策はその場しのぎのせっかちさで、布令と解除を短期に繰り返し、結局のところ、さして効果は上がらす、現第6波が長引いている体たらくだ。

もちろん、経済活動を厳格な都市封鎖で制限することは、先進国である以上、無理があると思うし、インドがほぼ終息に至った裏には多大な犠牲があったことを忘れてならない。第2波のTSUNAMI級爆発で(昨年5月)、何十万人という人が亡くなり(一説には100万人以上)、火葬場に遺骸が山積みになった修羅場の記憶は新しい。

しかし、災い転じて福となすというか、都市部の大爆発で集団免疫を獲得したインドは、弱毒性のオミクロンに強かったとも推測される。元々、不衛生な環境下、インド人は感染症に免疫体質があり、無菌環境でもろい日本人と比べ、有利なこともあげられる。

そうしたもろもろの要素に付け加えること、国民性の違いからくるコロナ対応・反応、鷹揚なインド人に比べ、神経質で真面目な日本人の相違が、数字の歴然たる差異に現れてきているような気がしてならない。

第1、2波はともかくも、インドでは、私の周囲で神経質になっていたのは、日本人の私だけだったが、日本では私の世代はほぼ全員か神経を尖らせている。未接種者の私が敬遠されるほどに。

インドでは、非接種でも肩身が狭い思いをすることはまったくなく、息子や甥は接種者だったが、差別を受けることはいささかもなく、寧ろ私の方が、自己防衛策として、地元民との接触を極力避け、帰国前たまたま訪ねてくれた昔のマネージャー家族にも、挨拶程度の最小限のコミュニケーションで済ませてしまったくらいだ。

後で邪険にしたことに胸が痛んだが、しょうがない。帰国前の大事な体だ、最大限の細心をもって守るしかない。何とも因果な時代だ、私を責めないでくれ、責めるならコロナを責めてくれ、これが息子との会話すら最小限に抑えてきた、私が現地で貫いた、我が身に課した厳格な隔離だった。

日本の社会生活者が私同様の隔離に徹することは不可能で、経済活動と両立させる以上、満員の通勤電車も時間差出勤の効果はほとんど見込めず、最大密を黙認、であれば、陽性者もなかなか減らないだろう。満員電車だけでない、まん防解除後の折柄の桜満開で浮かれ気分で花見密、これではなかなか減らない。

私がベースを持つ金沢も、解除後どっと人出が増えた。観光名所には、着馴れぬ着物で内股に歩く若い女性観光客がぞろぞろ、レストランに入れば、混んでいるし、結局週末の外出は極力避けることになる。

金沢の桜も来週中には満開になると思うが、混雑していると、花見気分で浮かれてという気も殺がれる。実は旅に出たいのだが、ゴールデンウィークは、言語道断。何とかもう少し収まった頃合を見計らって、ふらりと彷徨したい。その前に母の墓参りや、親族との話し合い、夫の遺灰を日本海に撒布するなどの儀式があるが。

接種者でもブレイクスルーで人にうつしているのに比べ、日本に帰っても極力接触を避けている私の方が、感染させるリスクという点では、安全なはずとの自信はあるが、日本ではそれは通用しない。

しかし、何人かの友人に電話、未接種を貫く人も数少ないが見つけた。あと、接種者でも、副反応が強く出たせいで人には勧めないという者も2人、接種派が多数を占める日本でも、まだこういう人がいると思うとほっとした。

ちなみに、インドの接種率は、ほかの第3世界に比べ、1回71%、2回60%と、中進国間では高い方た。ブースター(3回目接種)はまったく進んでないが、終息モードのインドでは当然とも言える。

ただし、国際線が再開して、海外から人が流れ込んでくると、再流行や新変異株の出現もありえ、再燃の懸念がまったくないわけではない。

 

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モハンティ三智江 モハンティ三智江

作家・エッセイスト、俳人。1987年インド移住、現地男性と結婚後ホテルオープン、文筆業の傍ら宿経営。著書には「お気をつけてよい旅を!」、「車の荒木鬼」、「インド人にはご用心!」、「涅槃ホテル」等。

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