立憲民主党×日本維新の会〝共闘〞のリスクと目論見

山田厚俊

・両党のお家事情

“ベタ凪”と呼ばれた春の通常国会とは打って変わって、“統一教会国会”となった臨時国会(2022年12月10日閉会)は、雰囲気が一変していた。

旧統一教会との関係が次々と明らかになった山際大志郎経済再生担当相を10月24日、岸田文雄首相はついに守り切れず事実上の更迭とした。

続いて、会合の場で「法相は朝、死刑(執行) のハンコを押す。 昼のニュースのトップになるのはそういう時だけという地味な役職だ」と発言した葉梨康弘法相が11月11日に辞任。

それだけではない。政治資金収支報告書の不適切な記載などが相次いで発覚した寺田稔総務相も同月20日、更迭された。

1カ月で閣僚が3人も辞任するという異常事態。まさに“辞任ドミノ”の様相で、「岸田内閣はもうもたないんじゃないか」との声が自民党内からも噴き出ている。

News headlines. It is written as “replacement”.

 

ふらふらの政権与党と対照的なのが、野党だ。通常国会までは「あまりにも野党がだらしなさすぎる」「岸田内閣の最大の応援団は野党」などと揶揄する声が聞こえていたが、臨時国会ではある程度のイニシアティブを握っているように見える。

その変化の象徴といえるのが、立憲民主党と日本維新の会の「共闘」だ。

時計の針を少し戻そう。9月21日、立憲の安住淳国対委員長と維新の遠藤敬国対委員長は、10月3日からの臨時国会において共闘するとして、6項目の合意項目を明らかにした。

「タッグを組み、緊張感のある政治状況をつくる」(立憲・安住国対委員長)
「野党がいがみ合っても与党がほくそ笑むだけ」(維新・遠藤国対委員長)

その合意項目は、

①国会法に、臨時国会の要求から召集までの期間を20日以内と義務付けるとの改正案を提出する。
②衆院小選挙区10増10減を盛り込んだ公職選挙法改正案を成立させる。
③通園バスで子どもの置き去り防止対策として、安全装置設置を義務付ける法案を共同で作成し提出する。
④いわゆる文書通信交通滞在費について、使途の公表などを定めた法案の成立をめざす。
⑤旧統一教会をめぐり問題となった、いわゆる霊感商法や高額献金被害を防止するため、法整備を含めた措置を検討する。
⑥現下の経済情勢を踏まえ、若者や子育て世代に有効な対策を政府に提案し、実現を求める。

というものだ。

この共闘により、「10増10減」を盛り込んだ改正公選法は可決成立するなど、野党が存在感を増す国会となっている。

 

とはいえ、つい数カ月前まではお互いに批判し合う“水と油”の関係だったはずだ。旧統一教会問題が岸田政権を追い込む千載一遇の好機だったとはいえ、両党が手を結ぶことは与党にとってはもちろん、当事者である両党の議員にとっても青天の霹靂だった。

この背景には、両党の“お家事情”があった。立憲は7月の参院選で、改選23議席を5議席減らす17議席で、非改選22議席と合わせ39議席に落とした。21年の衆院選で敗北を喫した際、枝野幸男前代表は辞任。代表選を戦った泉健太衆院議員が新代表に就いた。

新執行部には代表選を戦った逢坂誠二氏を代表代行に、女性の西村智奈美氏を幹事長、無党派層に人気の小川淳也氏を政調会長に据えた。旧民主党政権時代の重鎮らから一気に世代交代したが、党内は不安定なまま、通常国会では岸田政権の思うままに進められ、存在感を何一つ示せなかった。その結果が参院選に表れた格好だ。

泉代表は、執行部を刷新。逢坂代表代行は広報本部長兼務での留任となったが、幹事長には岡田克也、国対委員長には安住淳、政調会長には長妻昭の各氏が据えられた。幹事長だった西村氏はジェンダー平等推進本部長兼務の代表代行となり、小川氏は無役となった。

 

岡田氏は、民主党政権時代は外相や副総理などを歴任、下野後、民進党が発足した際は代表に就任した重鎮の一人。安住氏も野田佳彦政権で財務相を経験し、長妻氏は鳩山由紀夫政権で厚労相となったベテランだ。党内の舵取りを重鎮が担うことで、安定感を取り戻したい泉代表の思惑がひしひしと感じられる人事だった。

・立憲内でも共闘に疑問の声

そして、立憲の起死回生の一手として打ち出されたのが、維新との共闘だったのである。立憲の中堅衆院議員はこう語る。

「数は力だ。“水と油”と言われるが、混ぜればドレッシングになる。維新との共闘は、将来の政権交代を視野に入れた時、実現可能な政策立案を進める上でメリットが多い」。

その成果が、各法案成立に向けた動きだ。先の通常国会では与党に言われるがままに法案審議が進行し、野党の存在感はほとんど示せなかった。

例外だったのは、AV出演被害防止・救済法(AV新法)における法案審議くらい。ところが、そのAV新法は前号で指摘した通り、現場を無視したいびつな労働規制につながるもので、早くも見直しを迫る声が数多く出ている。

それが一変して、与野党協議でも与党の思惑を封じ込め、野党が主導権を握るような形で進められるケースが見られるようになった。こうして、成果が低迷している政党支持率の向上に寄与すると期待を寄せているのである。

とはいえ、立憲の党内では維新との共闘に疑問を感じている者も少なくない。

「将来の政権交代を見据えた場合、どこかの政党と連立を組まなければ実現しないのは確か。しかし、基本政策があまりにも違う維新と組むことはない。にもかかわらず、ここで共闘しても従来の支持層が離れていくだけではないのか。これで来年の統一地方選や次期衆院選は戦えるのか。ますます支持者が離れるだけじゃないのか」。

別の立憲の中堅衆院議員はこう危機感を口にする。

憲法改正はもとより、エネルギー政策など両党の溝はあまりにも大きい。また、小選挙区は10増10減が決まり、これまでの選挙区ではなくなる。それぞれの議員が、自らの足元を再度固めなければならないうえに、選挙協力の確約がない維新との共闘は恐怖でしかない。

さらに、2023年春の統一地方選では維新は「敵」でしかない。そのようななかでの共闘によって、早くも地元から「永田町での野合は迷惑以外の何ものでもない」と、突き上げを食らう国会議員も散見している。

 

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山田厚俊 山田厚俊

黒田ジャーナル、大谷昭宏事務所を経てフリー記者に。週刊誌をはじめ、ビジネス誌、月刊誌で執筆活動中。

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