立憲民主党×日本維新の会〝共闘〞のリスクと目論見

山田厚俊

・維新にとっては渡りに船

一方の維新はどうか。2022年3月、維新は「党の中期経営計画」を策定した。それによると、①2022年夏の参院選において改選議席で参院は計21議席に、②2023年春の統一地方選で現在400人の地方議員、首長を1.5倍の600人に、③次期衆院選で野党第1党――という3つの柱を打ち出した。

①については、改選6議席が倍増の12議席となり、非改選の9議席と合わせ計21議席で“公約達成”となった。当選2回の若手ながら、要職に就いた藤田文武幹事長は語る。

「具体的な数値目標を立てることは、責任論に発展するので政党では見られないが、民間では常識。こうやって一つ一つハードルをクリアすることで、党勢の拡大を図っていく。そんななかでの今回の共闘は、あくまでも臨時国会での“時限共闘”。今後はどうなるか、わかりません」。

これまでも他の野党とは一線を画した独自路線で、安倍晋三政権、菅義偉政権では首相とのパイプも強かったことから与党寄りと見られ、与(よ)党と野(や)党の間をもじって“ゆ党”と揶揄されてきた。しかし、“自民党との蜜月”もここまでで、岸田政権になってからは官邸とのパイプはなくなったに等しい。

是々非々を謳いながら、法案成立の実績を訴えてきた手法が途絶えようとしているなか、立憲との共闘は渡りに船だったといえよう。しかも、若返りを図った維新では、規制緩和・行政改革などを謳う従来の路線に加え、セーフティネットの強化も打ち出すようになった。このような政策の広げ方をしていくうえで、立憲との共闘は得るものが多いといえるのではないか。

しかし、維新といえば、いまだ“大阪ローカル政党”という目で見られていることが多い。藤田幹事長もこう認める。

「国会議員はおろか、地方議会で議員が一人もいない地域がまだまだある。だから、“テレビ画面の中での政党”としか見られない。まずは2023年の統一地方選で首長や地方議員の数を増やさなければならない」。

つまり、両党にとって統一地方選は譲れない決戦の場だということだ。

維新の問題はまだある。当選しても失言や行動などで問題を起こし、除名処分を受けたり、議員辞職をする者が後を絶たないという点だ。いわゆる“身体検査”をしっかり行なっておらず、公認を乱発しているのではないかとの見方もされている。今後も問題議員が続出すれば、他党が連携や共闘に二の足を踏むのは当然のことだろう。

その点も考慮してのことか、維新関係者によれば、公認についての作業も標準化され改善はされているという。また、問題が起こった際の懲罰に至るスキームも整備したという。

This is the election poster board of the Governor of Tokyo in Japan.

 

・これからの立憲に求められるもの

一方、立憲はこれまで共産党と共闘を進めてきた。立憲との共闘の“元祖”を自認する共産は9月26日、両党の国会対策委員長が会談し、旧統一教会の問題などで政府・与党を追及していく方針で一致した。その後で共産党側が記者団に配布した文書には、「さらに共闘を強めていく」と明記されていた。共産党関係者は語る。

「当然、不快感はあります。しかし、今はこちらの立場、立ち位置をしっかり示したうえで推移を見守るだけ」。

敵意を隠さないのは、国民民主党関係者だ。

「立憲は、あからさまにこちらを潰そうと動きだしたってことでしょう。そんなことをして、党がバラバラにならなければいいけどね」。

2017年の希望の党問題で旧民進党が分裂し、立憲と国民は誕生した。再結集を模索した2020年、国民の多くの議員は立憲に合流したが、そのウラでの駆け引きや工作がいまだ尾を引いているかのような発言だ。

いずれにせよ、現在の政治の停滞は、野党にも責任がある。

第1党の立憲は、今後どのような方向をめざすのか、改めて党のビジョンを打ち出すべきではないか。また、連合をはじめとした支持団体などへの過剰な配慮などが有権者を遠ざけている要因の一つになっていないか、今いちど検証する必要もあるのではないか。

そのうえで、許容の幅を広げて他党との共闘を進めていくことが今求められていることではないだろうか。でなければ、今回の共闘は有権者にしてみればただの“永田町遊泳術”にしか見えない。政党支持率の回復や党勢拡大は、夢に終わるかもしれない。

立憲のベテラン衆院議員の政策秘書はこう語る。

「今の立憲の議員は自分の保身(当選)だけを考えている人ばかり。もっと有権者に寄り添う、かつての輝きを思い出してほしい」。

(月刊「紙の爆弾」2023年1月号より)

 

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山田厚俊 山田厚俊

黒田ジャーナル、大谷昭宏事務所を経てフリー記者に。週刊誌をはじめ、ビジネス誌、月刊誌で執筆活動中。

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