【寄稿】嶋崎史崇(MLA+研究所研究員):東京で「コロナワクチン被害者慰霊デモ行進」が開催、約100人が参加―ワクチン接種後死亡者は現代の「ホモ・サケル(死に追い込んでも誰も罰せられない人間)」なのか?

嶋崎史崇


東京都心で4月20日、日比谷公園から銀座にかけて、コロナワクチン被害者を慰霊するデモ行進が行われ、主催者発表で約100人が参加しました。同様の趣旨のデモは、昨年10月に京都でも開かれました。

CBC:「夢は『すべて奪われた』ワクチン接種後に妻が死亡『接種やめてほしい』と夫はデモに参加した【大石が聞く】」、2023年10月28日。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/cbc/803989?display=1

晴天の下、私も厚生労働省前の官庁街から、繁華街に向けて歩きました。ISFに縁のある方では、宇田桜子・流山市議会議員や、長嶋竜弘・鎌倉市議会議員も参加されていました。以下の動画で、デモの様子を知ることができます。
石井一弘さん:https://twitter.com/kazu_uracorona/status/1781848057006743841

事前に配布されたチラシや、掲げられた横断幕によると、「戦後最大の薬害」の真実を知らしめることや、コロナワクチンの即時接種中止を求めることが、慰霊と並ぶ目的です。

主催は一般社団法人・ノーシープ/日本と子どもの未来を考える会です。お経を上げる僧侶とコロナワクチン接種後死亡のご遺族が先頭を歩き、時に皆で荒井由実「ひこうき雲」を歌いながら、街頭の人々に向かって―過少報告により氷山の一角とも推定されますが―2100人を超えた接種後死亡者への追悼を呼び掛けました。私はこの往年の流行歌が、鎮魂の歌としても理解できることを、意識していませんでした。
「ひこうき雲」の歌詞:https://www.uta-net.com/song/3786/

接種後に母を亡くした子供が父と共に行進し、他にも涙を拭いながら進む人もいました。華やかな銀座の街では、巨大な異物として感じられたかもしれません。けれども、多くの人の目に触れ、中には主催者側からのチラシを受け取って読む人もいました。不可視化された被害を可視化する周知効果があったと思います。

行進の終着点で、長嶋市議から、鎌倉市内で接種後死亡した男子の救済認定が決まった、というご報告がなされ、拍手が湧き起こりました。無論、遺族に補償金が払われるのは正当ですが、どれだけ充実した補償がなされようとも、失われた命は二度と帰ってきません。若い世代であれば、その人から生まれるはずだった未来の子供の命も、予め奪われることになります。

ご存じの通り、コロナワクチン接種後死亡者はほとんどが、副反応検討部会により、厳密な「因果関係評価不能」として片付けられてきました。主要メディアの報道は少なく、いわば「不可視化」され、なかったことにされてきました。
報道界の至高の権威とされるNHKが、2023年5月放送の「ニュースウオッチ9」で、コロナワクチン薬害で亡くなったとされている人々を、コロナによって死亡したかのように演出する番組の編集を行うという、「放送倫理違反」事件まで起こりました。

NHK:「“NHK ニュースウオッチ9 放送倫理違反あった” BPOが意見公表」、2023年12月5日。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231205/k10014278561000.html
4月13日のパンデミック条約に反対するデモですら、1万人超ともされる異例の参加者数にもかかわらず、時事通信くらいしか報道した大手メディアがなかったようです。そのため、今回の小規模な行動を取材した報道陣がいなかったのは、当然なのかもしれません。

時事通信:「パンデミック条約反対でデモ―東京・池袋」、2024年04月13日。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024041300474&g=soc
私が接種後死亡者の方々について想起するのは、イタリアの哲学者、ジョルジョ・アガンベン(1942年~)が重視した古代ローマの「ホモ・サケル」(「聖なる人間」)という概念です。ホモ・サケルについては、「この者を殺害する者が殺人罪に問われることはない」、と規定されています。アガンベンは、移植のための臓器摘出の対象となる脳死状態の人や、ナチス時代の強制収容所に抑留された被害者らを、ホモ・サケルの化身とみなしています。その上で、権力者が生と死を恣意的に定義してしまうことを、批判的に論じています。
アガンベン『ホモ・サケル 主権権力と剝き出しの生』、高桑和巳訳、2007年、第3刷、以文社、103、218、224-225頁。

アガンベンには『私たちはどこにいるのか? 政治としてのエピデミック』(高桑和巳訳、青土社、2021年)という著作もあります。日本に比べてはるかに強硬なイタリアのコロナ政策と、コロナへの恐怖の誇張を痛烈に批判し、「医学がいま、病気よりもさらに大きな悪を生み出す恐れがある」と指摘しました(106頁)。コロナワクチンの本格展開前の著書ながら、示唆的な言葉です。現代医学への無批判な信仰を指す「医学教」(122頁)という概念も、このデモでお経が上げられたことと、間接的には関係があるように思われます。福島雅典・京都大学名誉教授は、「mRNAワクチン推進は無知蒙昧な“ワクチン教”」と語りました。今回のデモ行進は、犠牲を顧みず接種を推進する“ワクチン教”の非合理的な「安全神話」に引導を渡す効果もあるといえるでしょう。

『紙の爆弾』編集部:「『3回接種で特定のがんが多発』ワクチン問題研究会が明かすメッセンジャーRNAの真実」、2024年3月6日。
https://isfweb.org/post-34321/

もちろん直接的に“殺された”というわけではありませんが、私はコロナワクチン接種後死亡者の方々も、事実上このホモ・サケルに近い状態に置かれてしまっている、と考えています。確かに、相対的に緩い因果関係を問う接種後死亡者の救済認定は既に500人を超え※、遺族に補償金は支払われています。けれども、国からの強い要請を受けてワクチン接種を受けて数日内に死亡し、中には遺体を解剖した医師が、ワクチン接種が大元の原因であろうと明記した場合すらあるのに、誰も責任を取らない状態が続いています。しかも、コロナワクチン接種は定期接種として今後も続行され、同じ遺伝子操作型のmRNAワクチンの工場が、福島県南相馬市(メイジセイカ・ファルマ/アルカリス社)や福岡県久留米市(VLPセラピューティクス・ジャパン合同会社)で整備されています。いずれも新型のレプリコン(自己増殖)型ワクチンの生産拠点でもあります。コロナワクチンの問題点については、拙著『ウクライナ・コロナワクチン報道にみるメディア危機』(2023年、本の泉社)や、ISFの特集「新型コロナ&ワクチン問題の真実と背景」も、参照してください。
コロナワクチンだけで、過去45年間の他の全てのワクチンの死亡認定件数を超えています。「戦後最大の薬害」は、決して大袈裟ではありません。

サンテレビ:「【健康被害救済制度】新型コロナワクチン 過去45年間全てのワクチン被害認定数累計を超える~厚労省は「申請・認定件数の公表を控えるように」都道府県にメール~」、2023年9月6日。
https://sun-tv.co.jp/suntvnews/news/2023/09/06/71393/

※4月17日現在、計561件で死亡一時金または葬祭料が支払われました。
疾病・障害認定審査会 感染症・予防接種審査分科会 新型コロナウイルス感染症予防接種健康被害審査第三部会 審議結果
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001246550.pdf

アルカリス社:「新型コロナウイルス感染症に対するレプリコンワクチン「ARCT-154」の国内生産・供給に関するMeiji Seika ファルマとの協議について」、2022年8月25日。
記事はこちら

VLPセラピューティクス・ジャパン:「【ニュースリリース】新型コロナウイルス変異株レプリコン(次世代mRNA)ワクチン追加接種第1/2相臨床試験で安全性と有効性の改善を確認」、2024年1月23日。https://vlptherapeutics.co.jp/press/4694/

こうした不条理な状況の中、ジャニーズ問題で悪名を馳せた「マスメディアの沈黙」が破られる事態が起きました。4月17日に東京地裁で、計13人の接種後死亡者の遺族らや後遺症患者らが、副反応や後遺症のリスクの広報が極めて不十分だったとして、計約9100万円の賠償を求めて国を提訴しました。ドイツでは、既に2023年7月時点で、ファイザーワクチンの共同開発者であるビオンテック社に対して、後遺症患者が300件以上の訴訟を起こしていました。日本でも呼応する動きが出てきた、ということでしょう。
日本テレビ:「コロナワクチン後遺症の賠償裁判始まる ドイツ」、2023年7月4日。
https://news.ntv.co.jp/category/international/90d3d04140004c04a16fafae96dcaeb9

今回の東京地裁への集団提訴については、毎日新聞、NHK、フジテレビ、共同通信等の主要メディアが相対的に大きく、しかも趣旨を歪曲することなく、一斉に報道しました。このような本来は当たり前であるはずの仕事がなされたことが怪しく感じられるほど、接種後死亡者の方々は、不可視化されてきました。

毎日新聞:https://mainichi.jp/articles/20240417/k00/00m/040/067000c
NHK:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240417/k10014424721000.html
フジテレビ:https://www.fnn.jp/articles/-/687250
共同通信:https://www.47news.jp/10804449.html

もっとも、主要メディアにおいてこうした変化が見られたのも、遺族の方々や、後遺症当事者の方々、市民運動家や弁護士、CBCのような一部の地方メディア、そして大学名誉教授を中心とする研究者らによる不断の運動と働き掛けの賜物でしょう。

あったことをなかったことにして、国ぐるみで逃げ切りを図るようでは、同じ過ちを何度でも繰り返し、いずれは破局に至ることは避けられないでしょう。これ以上の新たなホモ・サケル、もしくは不可視化された国策被害者を出さないため、思想や所属の違いを超え、引き続き幅広く連帯していきましょう。それこそが、非業の死を遂げた方々の無念に、私達が少しでも応えることができる道ではないでしょうか。

– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –

★ISF(独立言論フォーラム)「市民記者」募集のお知らせ:来たれ!真実探究&戦争廃絶の志のある仲間たち

☆ISF公開シンポジウム:小沢事件とは何であったのか ~司法とメディアの共犯関係を問う~

☆ISF主催トーク茶話会:孫崎享さんを囲んでのトーク茶話会のご案内

☆ISF主催トーク茶話会:吉田敏浩さんを囲んでのトーク茶話会のご案内

※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
ISF会員登録のご案内

「独立言論フォーラム(ISF)ご支援のお願い」

嶋崎史崇 嶋崎史崇

しまざき・ふみたか 1984年生まれ。MLA+研究所研究員。東京大学文学部卒、同大学院人文社会系研究科修士課程(哲学専門分野)修了。ISF独立言論フォーラム会員。著書に『ウクライナ・ コロナワクチン報道にみるメディア危機』(本の泉社、2023年6月)。記事内容は全て私個人の見解。主な論文は、以下を参照。https://researchmap.jp/fshimazaki 記事へのご意見、ご感想は、以下までお寄せください。 mla-fshimazaki@alumni.u-tokyo.ac.jp

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ