【連載】沖縄の戦場化を断固拒否する(山城博治)

沖縄・再びの戦場化を拒否する運動の構築を

山城博治

3.新しい局面で求められる沖縄の大衆運動

私たち沖縄は戦後この方、米軍の軍事支配に、また復帰後の日米両政府一体となった軍事支配に抵抗してきました。どれも特段の政治主張を掲げて闘ったわけではなく只々命と暮らしを守るためにやむにやまれず立ち上がった闘いであったことはその歴史が示すとおりです。

ここ十数年は、辺野古新基地建設、高江ヘリパッド建設や与那国、石垣、宮古における自衛隊基地建設反対運動に集中してきていますが、これらの闘いもすべて軍事基地ができて運用が始まれば、そこが出撃・攻撃の拠点になりひいては反撃による戦場と化すことが明らかであることから立ち上げられた運動です。人々はそれぞれの地域でそれぞれの発意で運動を作り闘いを展開してきました。

しかしながら、政府が対中国戦争に大きく踏み出し、その最前線を沖縄・「南西」諸島の島々に負わす意思が明白になり、そしてその準備が着々と進められる今日にあっては、もはや個別の闘いでは間に合わず有効な反撃ができません。県民全体が一丸となって取り組み政府に物申す組織団体がどうしても必要になっています。沖縄には戦後の長い大衆運動を通じてさまざまな大衆運動団体が組織されています。今日、辺野古新基地建設反対運動をリードしている“オール沖縄会議”や幅広い市民団体を結集して目覚ましい活動を続ける“平和市民連絡会”などがその代表に挙げられます。

しかしながらオール沖縄会議は会が立ち上げられた際に確認された活動目標に、自衛隊問題が取り上げられておらず現在の状況に対応ができません。オール沖縄会議を規定する活動綱領と言うべき“建白書”には①オスプレイ配備反対②辺野古新基地建設反対③地位協定の抜本的改訂要求の3点が掲げられていますが、自衛隊の基地建設問題あるいは自衛隊の活動については何らのコメントもありません。

オール沖縄会議の果たす役割を理解し評価するものではありますが、今日既述したように抜き差しならない事態に立ち至っていることを踏まえれば、組織の行動規約を見直して新しい事態に対応できる組織団体への脱皮が求められていると言えます。またそのことを望みたいと切望するものです。ただ会議が幅広い結集を目的として緩やかな組織綱領を定めた経緯もあり簡単に方向転換もできないことも理解できます。苦しいところです。その穴を埋めるように“平和市民連絡会”が奮闘し大きな輪役割を果たしていますが、全県民的結集というには限界があります。

・「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」設立

県内の学者・文化人、マスコミ人、平和運動家らが呼びかけ人となって、去る1月31日に会結成の記者会見が行われ、3月19日(土)には会設立記念大集会が沖縄市民会館大ホールで開催されました。その時に提案された会の基本原則、活動目標は以下のとおりです。
1この会は「戦争反対」を唯一の目的として活動を行う。そのために、特定の政党支持を行わず、選挙に際しては特定の候補者を支持・推薦することもせず、政治的には不偏不党の対場で臨む。

2またオール沖縄に結集する各政党・諸団体の立場にかんがみ団体加入ではなく個人参加方式とする。

3島々で孤立しないように各島々との連携強化を図っていく。

与那国、石垣、宮古、沖縄の各島々を結びまた鹿児島県の奄美、馬毛島と連携を密にして地域連携・連帯を図っていく。
以上の基本原則のもと以下の活動を行う。

①講演活動、新聞等への寄稿、ネット配信、チラシ配布、署名活動等での広報活動を展開。
あらゆる広報媒体を駆使して、政府から一方的に流布される「台湾有事」「中国脅威」論に囚われて「戦争やむなし」に流れる空気に抗して「反戦平和」の世論形成に寄与する。

②県外講演会への講師派遣、集会参加などを通じて全国世論の形成に寄与する。

③県民の圧倒的支持を得て、県議会に『沖縄・「南西」諸島を戦場にさせない決議』採択を要請していく。

④会への参加情況、署名活動の進展具合を見極めながら、あらためての県民投票『沖縄・「南西」諸島を戦場にさせない県民投票条例制定』の働きかけを検討していく。

⑤政治状況次第では、県政・県議会また県内の政党あらゆる労働団体・市民団体に呼び掛けて一大県民集会を開催し、政府・国会へ陳情団を派遣する。

⑥在日米国大使館、中国大使館などへの要請活動。

⑦直接渡航しての米国政府・議会、中国政府・議会などへの要請活動。台湾との交流。

⑧国連人権理事会への派遣。

・結びに

危機迫る状況での運動のあり方について以下補足し結語に代えたいと思います。

政府はとんでもない戦争の道に踏み出そうとするに際して、どのようにして住民を監視し「都合の悪い」行動を摘発抑制していくか虎視眈々と狙っています。戦争は一方で敵を圧倒する強力な軍事兵器の用意と他方で内部から起きてくる反対運動の抑制・規制が同時に準備されなければ実行に移せません。

戦前のわが国の突出する軍事予算と治安維持法を中心とした弾圧立法の猛威を振り返ればすぐに理解のできることです。ましてや今回日本政府が準備する対中国戦争は「宗主国」アメリカの命運をかけた戦いであり、米国の対日要求が過剰となることは容易に予想されます。その中に市民運動への抑制弾圧も含まれているだろうことは、先月那覇軍港を使って実施された米軍の軍事演習に、米軍に抵抗する沖縄の市民活動家を模した一団が登場して演習が実施されたことからも十分に想定されることです。また懸念される土地規制法の9月実施をはじめ政府当局者がその気になれば現行法制を強硬に解釈適用すれば市民運動をいかようにでも抑制するはずです。

特に土地規制法は最大の警戒と対策が必要です。この法律が文字通りに施行されたら沖縄の大衆運動全体が圧殺されかねません。さらに私の個人的経験から、「共謀」という名の解釈適用をもってすればどのようにでも人々を捕え抑圧することができることを強調しなくてはなりません。

それだけに運動の側も慎重でなくてはなりませんが、何より心掛けなければならないのは、常に正々堂々とした大衆運動の構えです。その力で政府の圧力をはね返し、大衆運動への介入をはね返していく力とすべきだと思います。そうした運動構築のために今回立ち上げられた「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」が大きな役割を果たすものだと信じます。頑張ってまいりましょう。

(※本稿は、関東一坪反戦地主の会通信への山城博治さんの寄稿をご本人の承諾をうけて転載させていただいたものです)。

1 2 3 4
山城博治 山城博治

1952年具志川市(現うるま市)生まれ。2004年沖縄平和運動センター事務局長就任。その後同議長、昨年9月から顧問となり現在にいたる。今年1月に設立された「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」共同代表就任。沖縄を「南西」諸島を戦場にさせないために全県全国を駆けまわって、政府の無謀を止めるため訴えを続けている。

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ