【連載】沖縄の戦場化を断固拒否する(山城博治)

『東アジアを戦場にさせないぞ!韓・琉・日の民衆大連帯を!1.29反戦集会』に寄せて 恐るべき戦時国防政策「安保3文書」閣議決定に基づく島々の軍事要塞化を許さず、無謀な沖縄・南西諸島戦争を止めるために 

山城博治

米国の傀儡政権丸出しの信じ難いまでの軍備増強とその財源確保に明け暮れる岸田内閣、このままの政権運営を許せば日本は間違いなく「重税」と「民生費」切り捨てによって暮らしは破壊され、その上に築かれる「軍事大国」の道が国民にとって何の「大義」もない戦争に駆り出される悲劇が待ち受けていることは誰の目にも明らかだ。

しかしそれでもなお大きな反対世論や大衆運動が彷彿として巻き上がってこない現実が不思議であり恐怖でならない。

その政府によって、戦場となることを名指しされた私たちの地域、沖縄・南西諸島も日増しに強まる軍事基地建設とミサイル配備など具体的な「戦争勃発」の脅威に晒されていながら、それでもなお島々を焦がすような激しい反対運動が立ち上がるわけでもなく、連日報道される「南西諸島有事」を煽る政府・防衛省・自衛隊の動きに、ひたすら身がすくんで小さくなっているのが現実だ。

到底受け入れられない政府の暴走、前のめりになる戦争政策を前に歯ぎしりするばかりではあるが、この静けさは、どこに原因があるのかを共に考え真に連帯するための一助になればと願うものである。

私たちは、昨年1月政府から垂れ流される「中国脅威」論とそれに基づく「抑止力強化」「防衛力強化」の一大キャンペーンに対抗するため「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」を立上げ、県内外の学者文化人・ジャーナリストを講師に招いて学習会を続け、県民に今日起きている事態が避けられない米中対立がもたらしたものではなく、経済的に台頭してくる中国を米国が日本を巻き込んで抑え込むために、日本の犠牲の上に成立する政治的・軍事的中国包囲網の確立を図ろうとしていることに最大の原因があることを訴え続けてきた。米国の謀略を暴くことが政府の「中国脅威論」「南西諸島の軍事強化論」に乗せられずに、しっかりとした判断ができるはずだと思ったからであった。

その一連の学習会を通じて明らかにされた重大事が二つある。

一つは昨年9月25日に開催した共同通信社編集局専任編集委員の石井暁記者による講演(講演は「ノーモア沖縄戦の会」より『また「沖縄が戦場になるって本当ですか?」』のブックレットに編集)によるものである。

石井記者は講演の中で、「台湾有事」に際して米軍が出動し中国軍と交戦する事態になり政府が「存立危機事態」に立入ったと判断すれば、自衛隊は2015年に「合法化」された集団的自衛権行使を発動して参戦することになる。

米軍の戦争に自衛隊が否応なしに参戦するシステム(自動参戦システム)が出来上がっており、当然ながら米軍も自衛隊も沖縄から発進することから沖縄が反撃の対象となり戦場になるというものであった。石井記者は「集団的自衛権」行使をめぐる国会論議の中で当時の安倍首相は「決して日本が戦争に巻き込まれることはない」と強調していたことが真っ赤な噓だったことが分かって唖然とした旨のことを述懐したことが印象に残る講演であった。

二つ目は、今年正月3日の琉球新報に掲載された防衛研究所防衛政策室長高橋杉雄氏のインタビュー記事によって氏が唱え、今回の安保関連3文書のベースになったと言われる「統合海洋縦深防衛戦略」の基本的な戦略認識についてである。

高橋氏は琉球新報記者の「台湾有事が起きた場合南西諸島にどのような影響があるか」との質問答えて「中国が米軍の介入を阻止するため、南西諸島の飛行場や港湾をミサイルで攻撃すると考えられる。民間も含め、軍事的に使用できる施設が対象になる。無防備なら上陸して占拠しようとする可能性もある」と語っている。

これはすなわち、中国は「台湾侵攻」に際して台湾を攻める前に、あるいは同時に南西諸島の空港、港湾施設を攻撃する。そうであれば中国が台湾に侵攻する兆しがあれば現に侵攻するかどうかに関わらず反撃が必要である、との論理を引き出す。これが安保関連3文書に明記された「敵基地攻撃能力(先制攻撃能力)」保有に秘められた本音であることがよく分かる。

心しよう。石井講演で語られたのは「自衛隊の自動参戦システム」についてであるが、中国の国内問題であるはずの台湾問題で、何らかの中国の「侵攻」の兆しがあれば在沖米軍が

出動し、状況によっては自衛隊が否応なしに参戦していくシステムが出来上がっていること、さらに高橋氏インタビューは「侵攻」の兆しありと日米が判断すれば「反撃」という名の先制攻撃も辞せず(政府が言うところの「反撃能力」)、何の前触れもなく一挙に日中、米中開戦の事態もありうると言うことを語っていることである。

このあたりになると石井記者と同じく共同通信社で論説委員を務めたジャーナリストの岡田充氏が米国の挑発的対応は中国のレッドゾーンを探るためだとする、これまでの論述の意味が分かってくる。

つまり米国は「何が何でも中国を引き出したい出てこないなら引きずり出すまでだ」ととてつもない強硬策を取ろうとしている。ロシアと同様戦争に引きずり出し完膚なきまでに叩くつもりなのだろう。その舞台とされるウクライナや南西諸島こそ悲劇だ。米国の謀略に乗せられてはならない。

 そのような中で、「台湾有事」の最前線と位置付けられた与那国島や石垣島で地域住民や地元市議会から強い不安や明確に反対する声が上がってきた。

今年3月に自衛隊石垣駐屯地が開設予定されているがその石垣市議会で、昨年末の12月23日、安保関連3文書に明記された敵基地攻撃能力を巡り「反撃能力を持つミサイル配備は容認できない」と訴える意見書が採択された。

市民の間に「有事」の脅威が広がっていることを如実に示す事例となった。

同様なことは国境の島与那国町でも昨年11月に実施された日米共同軍事演習で島に大砲を備えた戦闘車両が持ち込まれたり、安保関連3文書で新たに攻撃ミサイルが配備されることに「従来の話と違う」と批判が起きている近況を県内紙は伝えている。

また年明け玉城デニー知事も「新たなミサイル配備には反対」の方針を表明した。大きな変化が生まれている。嘆いてばかりはいられない。戦場にされてはならない。声を上げるときが来たのだ。

全国の仲間の皆さん学習を深め共に反撃のスクラムを固めようではありませんか!

山城博治 山城博治

1952年具志川市(現うるま市)生まれ。2004年沖縄平和運動センター事務局長就任。その後同議長、昨年9月から顧問となり現在にいたる。今年1月に設立された「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」共同代表就任。沖縄を「南西」諸島を戦場にさせないために全県全国を駆けまわって、政府の無謀を止めるため訴えを続けている。

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