東南アジアにおけるIC/MRA活動(IC NEWS 37)

藤田幸久

3月にカンボジアとタイを訪問し、国際IC関係者と交流してきました。カンボジアではソン・スーベール枢密院委員(元国会副議長)のお宅に泊めて頂き、カンボジアICの方々とお会いしました。

(右中央がスーベールさん)

彼とは1980年にタイのバンコックで劇的に出逢いました。彼も私もMRAの国際親善使節Song of Asiaに異なる時期に参加していたため初めての出逢いでした。これがご縁で相馬雪香さんが前年に設立した難民を助ける会(AAR)のプロジェクトを数年間受け入れて頂きました。

カンボジアとMRA/IC との関りは、1954年にスーベールさんの父上のソン・サン元首相とフランス財務省勤務のMRAの人との出逢いが始まりです。

1984年に相馬雪香さんなどとMRA国際チームはタイ・カンボジア国境の難民キャンプを訪問し、ソン・サン元首相や仏教僧数名と対話しました。その一人が「カンボジアは全てを失いました。人命も国土も。しかし、最も大きな損失は何が正しくて、何が間違っているかという、善悪の判断を失ったことです」と語ったことが強く記憶に残っています。

(左がソン・サン元首相、中央が相馬雪香さん、右がマッケンジー元英国大使)

ソン・サン元首相は1983年土光敏夫国際MRA日本協会会長(経団連会長)、オランダのフィリップス元フィリップス電器会長(コー円卓会議創設者)などと東京のMRA国際会議に出席しました。

(ソン・サン元首相と土光敏夫国際MRA日本協会会長)

内戦やポル・ポト派による大虐殺を経て1980年代後半にプノンペン政府と国外に拠点を持つ3つの政党との和平交渉が始まりましたが、それに先立つ1985年にスイス・コーのMRA会議でこの両者による初の会談を行いました。1991年のカンボジア和平後の1993年と94年にはカンボジアで各派間の信頼醸成を目指すMRA国際会議を開催しました。

今回は、その会議に参加したソー・ケン副首相兼内務大臣などと旧交を温めました。またMRA/ICの長い友人で現在亡命活動中のサム・レンシー元野党党首の支援者、世界宗教者平和会議(WCRP)のテプ・ボン会長や多くのNGOの方々とも再会しました。さらにフン・セン首相の長男で次期首相に指名されているフン・マネット陸軍司令官やサイ・サムオル環境大臣など次世代のリーダーとも会談しました。

(ソー・ケン副首相兼内務大臣と)

驚いたことに、立場の異なる政治指導者から日韓首脳会談と両国関係の改善への高い評価が示されました。アジアの緊張関係はロシア、中国、北朝鮮、台湾など北東アジアを巡るもので、その関係改善は、大国間の板挟みになっている東南アジアにとって有難いとの声がズシンと響きました。

タイではドイツ外務省のシンクタンクで「日本の新しい安全保障戦略」というテーマで講義しました。反撃能力保持、GDP2%への防衛予算増などの日本政府の防衛力整備計画を説明した後で、戦争は装備と共に「戦争の意思」も重要な要素だが、日本は隣接する5つの国と地域との関係は決して良好ではない。これらの国と地域は第二次大戦を終結したサンフランシスコ講和条約にはロシアが反対し、中国、台湾、韓国、北朝鮮は不参加だった。そして現在でも北朝鮮と台湾とは国交が無く、ロシアとは平和条約が無く、フルに国交のある中国と韓国ともギスギスしてきた、というと皆ビックリしました。

国内紛争だらけの国々が陸続きで共存しているASEANよりも日本の方が危険に見えるとの認識でした。

私は、二か国で様々な機会に➀サンフランシスコ講和会議で日本との講和に反対する国々が多かった中でMRAの創始者ブックマン博士他がそれらの国々を説得して講和賛成に回ってもらった歴史。②1962年のMRA小田原アジアセンター開所式のために入国が認められた韓国の金鍾泌氏(後に首相)と大平正芳外相との合意が3年後の日韓国交正常化に繋がった歴史などを紹介しました。

大国間の対立に翻弄されながら独自の立場を維持してきた東南アジアの知恵から学ぶことの重要性を感じました。

6月3日~6日マレーシアでIC国際会議が開催されるほか、年内にメコン青年交流プログラムの開催も検討中とのことです。東南アジアのICによる友好と和解のイニシアチブを支援していきたいと思います。

 

【カンボジア報告】

https://y-fujita.com/archives/34259

https://y-fujita.com/archives/34266

https://y-fujita.com/archives/34276

https://y-fujita.com/archives/34284

https://y-fujita.com/archives/34271

https://y-fujita.com/archives/34289

https://y-fujita.com/archives/34296

【タイ報告】

https://y-fujita.com/archives/34308

https://y-fujita.com/archives/34317

https://y-fujita.com/archives/34312

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藤田幸久 藤田幸久

水戸一高、慶大卒。初の国際NGO出身政治家。世界52カ国を訪問。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣として10年ぶりに医療・介護予算を増額。民進党次の外務大臣、民主党国際局長、横浜国立大非常勤講師、等歴任。現在国際IC日本協会会長、岐阜女子大特別客員教授

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