【連載】ウクライナ問題の正体(寺島隆吉)

第19回 ゼレンスキーとは誰かーウクライナにはなぜナチスが多いのか?ー

寺島隆吉

先述のとおり、ゼレンスキーは大統領選挙の選挙キャンペーンで、 「2丁の機関銃を持ち、ロシアへの従属(や汚職)を指摘された国会議員に銃を乱射する」という、どう考えても大
統領選挙の政策宣伝としては極めて不穏なCMを流していました。

またゼレンスキーが大統領として立候補する前の、密かな事前準備として、テレビドラマ『人民の僕』で主演して、 高い視聴率を得るという工作をしたことも、すでに述べました。

このドラマシリーズでは、大統領は「人民の僕」ということになっているのですが、大統領に当選したあとの言動を見ると、この「人民」には「ロシア語の話者」は入っていないのです。

また自分の意に沿わない人物も「人民」には入っていないようです。というのは、今やウクライナでは大統領の指揮・監督の下で、政敵の暗殺・誘拐・拷問がやりたい放題だからです。前章でも触れましたが、次の記事は、そのことをよく示しています。

“One Less Traitor”: Zelensky oversees campaign of assassination, kidnapping and torture「裏切り者を一人でも減らせ」 :ゼレンスキーは、政敵の暗殺・誘拐・拷問といった作戦を監督( 『翻訳NEWS』2022/04/28)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-893.html

ナチスドイツ軍やナチス親衛隊ガリシア第1師団(主としてウクライナ人による志願兵)がポーランドやソ連に侵攻したとき、残虐の限りを尽くした光景を髣髴とさせるような光景です。

上記の記事のURLをクリックして、ぜひとも、そこに載せられている画像だけでも見てほしいと思います。

もうひとつここで指摘しておきたいのは、ゼレンスキーが大統領選挙の選挙キャンペーンで「ロシアへの従属や汚職を指摘された国会議員に銃を乱射」しておきながら、自分には銃を乱射していないことです。

このことをビガノ大司教は先述の論考で、皮肉を込めて次のように指摘しています。

 

ウクライナの現大統領は選挙キャンペーンで、 2丁の機関銃を持ちロシアへの従属や汚職を
指摘された国会議員に銃を乱射するという、控えめに言っても不穏なCMを流していた。

しかし、 ウクライナ大統領が 「人民の僕」 の役割で喧伝した汚職との闘いは、 いわゆる『パ
ンドラ文書』(英領ヴァージン諸島の租税回避を暴露)から浮かび上がる彼の姿とは一致しない。

この文書によれば、選挙の前夜、ユダヤ人大富豪コロモイスキーが海外口座を通じて彼に4,000万ドルを支払ったように見える。

彼が勝利した2019年の選挙のちょうど1カ月前、 ゼレンスキーは自分の会社 [Kvartal 95
Studio]を友人に売却した。その友人とはセルヒイ・シェフィールで、後に大統領府参事官に
任命された人物だった。 (中略)

株式の売却は、 マルテックス ・ マルチキャピタル社の利益のために行われた。この会社はシェフィールが所有していて、英領ヴァージン諸島で登記がされている会社だ。

そのうえ、 ゼレンスキーは自分が正式に放棄してしまっていた事業の売却収益を自分の家族に与える方策(手口) をまだ探していた。(太線は寺島)

 

ご覧の通り、テレビドラマ『人民の僕』のなかで喧伝した汚職との闘いは、ここには全く見られません。

それどころか、世界各国の首脳や有名人が幽霊会社で租税回避していたことを示す『パンドラ文書』から浮かび上が ってくるのは、必死に税金逃れをしようと画策しているゼレンスキーの姿です。

だから、資産隠しに協力してくれた友人セルヒイ・シェフィールを、後に大統領府参事官に任命したのも、それにたいする論功行賞だったからに他なりません。

また「自分が正式に放棄してしまっていた事業の売却収益を自分の家族に与える方策」をまだ探していたのも、いかにして税金逃れをするかの方策を探し続けてきたことを示すものでしょう。

さらにまた、「海外の口座」を通じてユダヤ人大富豪から4,000万ドルもの選挙資金をもらうというのも、「自国の口座」に選挙資金が振り込まれてしまえば、自分が「人民の僕」ではなく、「大富豪の僕」であることが露呈してしまうことを、恐れたとしか考えられません。

このように考えると、欧米の世界では「民主主義の旗手」として持てはやされているゼレンスキーは、実は全く違った実像をもっていることが分かるはずです。

彼が祖国ウクライナで、親ロシア派のオリガルヒ(新興財閥)から権力を奪ったのは、ウクライナ国民に権力を与えるためではなく、むしろ自分の利益集団を強化し同時に政敵を排除するためだったと非難する声が多く聞かれるのも、当然なのです。

そのことをビガノ大司教は次のように指摘しています。

 

彼は保守派(親ロシア派) の閣僚たちを、なかでもまず第一に、有力な内務大臣である(ア
ルセン)アヴァコフを首にした。

さらに彼は、親ロシア派であり、ウクライナ議会の第二党である「生活者党」の党首ヴィクトル ・ メドベチュクを逮捕し、 反逆罪で告発した。この政党は、「人民の僕」に続く、第二の政党だった。

次に彼は、 自分の法律をチェックする役割を担っていた憲法裁判所長官を、 突然に退任させた。そのうえ彼は、7つの野党テレビ局を閉鎖した。

ゼレンスキー大統領の政党人気者の元ボクシング世界チャンピオンでありキエフ市長であるヴィタリー・クリチコも、すでに何度も捜索や差し押さえを受けている。

要するに、ゼレンスキーは自分の政治に沿わない人物を一掃したいようだ。

 

このように、ゼレンスキーは、 「民主主義の旗手」どころか、 「民主主義の圧殺者」なのです。

ところが日本では全国の至る所に「ウクライナ支援基金」と称する「募金箱」まで置いてあります。先日、コンビニに行く用事があったのですが、そこにまで募金箱があって驚きました。

しかも、ゼレンスキーの「圧殺」ぶりが並みではありません。前章でも紹介したのですが、煩を厭わず、それを再録すると次のようになります。

(1)3月19日の大統領令で、戒厳令を発動し、11の野党を禁止した。
(2)禁止された政党は、ウクライナの左翼、社会主義、反NATO勢力のすべてだった。
(3)公然たるファシスト・ネオナチ政党は、大統領令によって手つかずのままだった。
(4)すべてのニュース放送を国営の「United News」だけに一本化し、他は禁止した。
(5)ゼレンスキーは4月12日、野党第一党「生活者」党首メドベチュク氏を逮捕した。

今やウクライナは恐怖政治の世界です。

ロシアに共鳴しているとされる議員や市民の暗殺を支持する内務省の顧問アントン・ゲラシ ェンコが創設した「国家の敵」という悪名高い公開ブラックリストがあります。

このリストに載せられたジャーナリストやウクライナの反体制派は、このリストに名前が載った後、国家が支援する暗殺部隊によって次々と殺害されているのです。

殺害しない場合でも凄惨な拷問を行い、 保安庁SBCとネオナチの武装集団「アゾフ大隊」は、その拷問過程を記録し、その血まみれの顔の画像をネットで公開するという残酷ぶりです。詳
しくは先述の記事を御覧ください。

*ゼレンスキー「裏切り者を一人でも減らせ」( 『翻訳NEWS』2022/04/28)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-893.html

ゼレンスキーの恐怖政治「銃を突きつけ拷問した映像まで公開するという残酷さ」

この記事では、 「今年2月の開戦以来、ウクライナの治安機関によって投獄された人々のリストは日に日に増えており、ここに転載することはできないほど膨大である」と述べ、さらに「一般市民も拷問にさらされている」ことも画像付きで詳細に伝えています。

前章冒頭に載せたのは、その一部に過ぎませんが、その画像の説明は以下のようになっていました。

一般市民が街灯に縛られ、 性器が露出したり、顔が緑色に塗られたりしている動画が、 SNSに無数にアップされている。

今年2月の開戦以来、 ウクライナの一般市民も拷問にさらされている。

戦時中の法と秩序の執行を任務とする領土防衛義勇兵によって行われたこれらの屈辱的な拷問行為は、 ロシアのシンパとされる人々からロマ人 (ジプシー) や泥棒とされる人々まで、 あらゆる人々を標的にしてきた。

ゼレンスキーの「恐怖政治」については、まだまだ紹介しきれないほどの事例が山積みしていて、 私をイライラさせるのですが、もう十分に長くなってきていますので、 一旦ここで打ち切らせていただきます。

アゾフ大隊から拷問を受けるロマ人

〈追記〉

繰り返しになりますが、ゼレンスキーは大統領選挙の選挙キャンペーンで、 「2丁の機関銃を持ち、ロシアへの従属(や汚職)を指摘された国会議員に銃を乱射する」という、どう考えても大統領選挙の政策宣伝としては極めて不穏なCMを流していました。

このCMそのものが、 「正義のためなら人殺しをしてもよい」というメッセージを発信しているのです。それをドンバス2カ国で実践しているのがウクライナ軍「ネオナチ親衛隊」として有名なアゾフ大隊でした。

すでに、そのこと示す動画は、私のブログでも既にいくつか紹介してきていますが、最近
RTに載せられた次の動画はドンバス地区「マリウポリ市」の惨状を生々しく伝えています。

* Donbass: I’mAlive!(ドンバス:まだ私は生きている!)
https://player.odycdn.com/api/v4/streams/free/Donbass_I%E2%80%99m_Alive/11f5099c66183471638a57a64798c5e24e1d8f54/dc1dc2

アメリカは「人道的介入」 「独裁政権から民衆を救う」と称してイラクやシリアやアフガニスタンなど世界中で多くの人を殺してきたのですが、それを見習って同じ行為をしているのが、CIAの指導を受けているゼレンスキー大統領だとも言えるわけです。

キエフ政権がCIAの指導を受けていることは、 『櫻井ジ ャーナル』の次の記述からも明
らかです。

元治安部隊SBUのプロゾロフによると、ウクライナの治安機関は2014年以降、CIAから直接助言を受けてきたという。次はプロゾロフの言です。

「CIAの職員は2014年以来、キエフに存在している。彼らは秘密のアパートや郊外の住宅に居住していた 」。
「しかし彼らは、特定の会議を開いたり秘密作戦を企てたりするために、頻繁にSBUの中央事務所にやって来た 」。

ヴァレンティン・ナリヴァイチェンコは、2013年から14年にかけてのクーデターによる政権転覆後に、SBUの初代長官となった。

彼はジョージ・W・ブッシュ政権時代に在米ウクライナ大使館の総領事として活躍し、ワシ
ントンとの深い絆を育んだ。

ヤヌコヴィッチ元大統領の政権下で仕えたアレクサンドル・ヤキメンコは元SBUだが、このナリヴァイチェンコについて次のように述べている。

「ナリヴァイチェンコは、この在米ウクライナ大使館の総領事だったとき、CIAにスカウトされた」。

さらにまた、ゼレンスキーは、2021年、ウクライナで最も悪名高い情報機関の人物オレクサンデル・ポクラドを、SBUの防諜部門を率いるように任命した。

なんと恐ろしいことに、このポクラドは「絞殺魔」というニックネームを持つ人物なのだ。

これは、拷問やさまざまな汚い手口を使って、ゼレンスキーの政敵を反逆罪に陥れたという評判にちなんだものだ。にもかかわらず (あるいは、 だからこそ) 、 このような人物をゼレンスキーは選んだのである。

ウクライナの言語地図。地図の左上がウクライナ語話者の地域、右下がロシア語話者の地域。

 

(寺島隆吉著『ウクライナ問題の正体2—ゼレンスキーの闇を撃つ—』の第4章から転載)

 

ISF主催トーク茶話会:孫崎享さんを囲んでのトーク茶話会のご案内 

※ウクライナ問題関連の注目サイトのご紹介です。

https://isfweb.org/recommended/page-4879/

※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。

ISF会員登録のご案内

「独立言論フォーラム(ISF)ご支援のお願い」の動画を作成しました!

1 2
寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ