【連載】コロナ騒ぎ謎解き物語(寺島隆吉)

第26回 『朝日新聞』批判 ─イベルメクチンは有害・無益 !?⑥:ビル・ゲイツのメディア支配は朝日新聞にも?

寺島隆吉

前節では、次のような事件を取りあげて、その背景を考察しました。

オクラホマ州でイベルメクチンの過剰摂取が多発しているという最新のニュース報道は、病院側によって否定された。そのようなケースは1件もない、と。その話を捏造した医師は2カ月間、そこで働いていなかった。

いずれにしても、これは、巨大製薬会社やCDC(アメリカ疾病管理予防センター)などが、イベルメクチンの効果に、どれほど恐怖しているかが分かる事件でした。

それほどイベルメクチンの効果は絶大であり、逆にアメリカ民衆の眼には「救い主」に映ったわけです。

それに比べると、大村智博士を産み出した当の日本人の、イベルメクチンに対する認識の低さは驚くべきほどです。

イベルメクチンの発明者・大村智博士

 

それはともかく、いままで紹介してきたロバーツ博士の下記論考は次のように結ばれていました。これを読むと、アメリカの言論事情が改めてよく分かります。

イベルメクチンがこのウイルスに対して効果があることを褒ちぎる論文も相当数出てきているが、イベルメクチンを治療の選択肢の1つとして論じることは、アメリカでは、いくつかのソーシャルメディア上で完全に禁止されている。

例えば、ユーチューブは、現職の上院議員が、イベルメクチンやヒドロキシクロロキンを治療薬として使用することについて話す映像を載せることを保留した。さらにツイッター社は、査読を受けた論文だけを載せる医学誌を、イベルメクチンの効果を証明する論文を載せたことを理由に、ブラックリスト入りにした。

「自由と民主主義の国、アメリカ」で、真実や事実が議論の対象から排除され、COVID-19対策措置に影響を与えることができないというのは、どういうことなのだろうか?

*「イベルメクチンは、COVIDmRNAワクチンに対する強力な反証」( 『翻訳NEWS』2021-09-10)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-656.html

私はこれまで、赤旗や長周新聞などの記事を批判し、 「私たちはガリレオの時代に戻ってしまうのだろうか」と書いてきましたが、上の記事を読むと、アメリカの現状も並みの状態ではありません。

ロバーツ博士も次のように自問しています。

「自由と民主主義の国、アメリカ」で、真実や事実が議論の対象から排除され、COVID-19対策措置に影響を与えることができないというのは、どういうことなのだろうか?

このロバーツ博士の問いに対する答えを探し求めていたら、次のような論考が見つかりました。

(1)Why the Bill Gates Global Health Empire Promises More Empire and Less Public Health. Gates Foundation Owns the WHO! By Jeremy Loffredo and Michele Greenstein(The Grayzone, 8 July 2020)
(ビル・ゲイツ財団という世界的医療帝国は、なぜ「もっと大きな帝国」 「もっと小さな公共衛生」を展望しているのか。それはWHOがゲイツ財団の所有物だからだ)
https://www.globalresearch.ca/why-the-bill-gates-global-health-empire-promises-more-empire-and-less-public-health-gates-foundation-owns-the-WHO/5718367

この論考には次のような驚くべき事実が書かれていました。引用が少し長くなりますが非常に重要な事実なので、どうかお許しください(翻訳は寺島)。

ゲイツ財団は、その富を世界の保健政策に関する報道に影響を与えることにも使ってきた。また、ゲイツ財団の悪質な活動に対する批判を抑えることにも使ってきた。

ゲイツ財団は、NPR、PBS、ABC、BBC、アルジャジーラ、デーリーテレグラフ、フィナンシャルタイムズ、ユニビジョン、ガーディアンなどの主要メディアに数百万ドルを寄付している。

実際、ガーディアン紙の「グローバル・デベロップメント」セクションは、ゲイツ財団との提携により実現したものだ。

また、ゲイツ財団は、ジャーナリズムのトレーニングや、メディアの記事・物語を効果的に作成する方法の研究に数百万ドルを投資している。

シアトルタイムズ紙によると、 「ゲイツ財団のプログラムで指導を受けた専門家がコラムを書き、ニューヨークタイムズからハフィントンポストまで様々なメディアに掲載され、デジタルポータルではジャーナリズムと事実のねじ曲げの境界線が曖昧になっている」という。

2008年、PBS NewsHourの広報責任者であるロブ・フリンは、 「最近の国際医療の分野では、ゲイツの手が入っていないものはほとんどありません」と説明している。

これは、同財団がNewsHourに350万ドルを提供して、世界の医療分野の重要な問題を報道するための、専門的な制作部署を設立した頃のことだ。

「メディアの自由財団」の代表であるミッキー・ハフ氏は、グレイゾーン誌に対し、ゲイツ財団が影響力を行使する方法は、PR会社への助成金、大学教授への寄附などを通じて行われ、これは財団活動の典型的な方法であると述べている。

要するに、 「世論操作の手本となった本『プロパガンダ(宣伝扇動)』を著したエドワード・バーネイズは、この種のプロパガンダの成果を誇りに思うだろう」とハフ氏は言う。

したがって、この財団を賞賛する報道が主流のメディアでよく見られるのも、南半球の発展途上国における財団の不愉快な活動があまり注目されないのも、不思議ではない。

ご覧の通り、ビル・ゲイツの手はアメリカだけでなく欧州や中東にまで及んでいるのです。地域別に分類すると次のようになります。

〈アメリカ〉
NPR(National Public Radio 、全米公共ラジオ局)
PBS(Public Broadcasting Service、全米公共テレビ放送)
ABC(American Broadcasting Corporation、私企業)
ユニビジョン(スペイン語のテレビネットワーク)

〈イギリス〉
BBC(British Broadcasting Corporation、英国放送協会、テレビ・ラジオ公共放送局)
ガーディアン(日刊紙)
デーリーテレグラフ(日刊紙)
フィナンシャルタイムズ(経済紙、現在は日本経済新聞社の傘下にある)

〈中東、カタール〉
アルジャジーラ(アラビア語と英語でニュース等を24時間放送している衛星テレビ局)

このようにビル・ゲイツは、欧米と中東の大手メディアに、大金を湯水のように注入しているのですから、PBS NewsHourの広報責任者であるロブ・フリンが、 「最近の国際医療の分野では、ゲイツの手が入っていないものはほとんどありません」と説明しているのも無理はありません。

その結果、インディペンデント紙や、ガーディアン紙などの報道機関どころか、今までは反体制的誌面で知られていたローリングストーン誌までが、 「オクラホマ州の病院において、緊急治療室がイベルメクチンを過剰服用した人々で溢れかえり、銃で撃たれた被害者たちが追い返された」という偽ニュースを報じるまでになっているのです。

これはゲイツ財団が「ジャーナリズムのトレーニングや、メディアの記事・物語を効果的に作成する方法の研究に数百万ドルを投資してきた」ことの見事な成果でしょう。

なにしろ、シアトルタイムズ紙によると、 「ゲイツ財団のプログラムで指導を受けた専門家がコラムを書き、ニューヨークタイムズからハフィントンポストまで様々なメディアに掲載され、デジタルポータルではジャーナリズムと事実のねじ曲げの境界線が曖昧になっている」というのですから。

このような事実を知っただけでも私にとっては驚天動地の驚きでしたが、次のようなジョイス・ネルソン(Joyce Nelson)による論考があることを発見して、声も出なくなるほどの驚きに襲われました。

(2)Billionaires’ Media: The Smearing of Robert F. Kennedy Jr. Toronto Globe and Mail Smears Robert F. Kennedy Jr. Calling him “a top voice of misinformation on social media.”(Global Research, 6 Oct 2020)

(億万長者のメディア支配:ロバート・F・ケネディ・ジュニアへの悪口雑言──カナダのトロントに拠点を置くグローブ&メール紙は、RFKジュニアを誹謗中傷し、 「ソーシャルメディアを使って誤った情報を流す最大の人物」と呼んだ)

先に紹介した論考では、ビル・ゲイツが手を伸ばしていたのは、アメリカ、イギリス、カタールだけだったのですが、なんとカナダにも手が伸びていたのです。

しかし、よく考えてみれば中東のカタールまで手が伸びていたのですから、それがカナダにまで及んでいたとしても何の不思議もありません。

そこで以下では、このジョイス・ネルソン記者の論考を読んで知ったことを少し紹介したいと思います。幸いにも、これには次のような邦訳が出てきたので、それをもとに報告します。

(3)億万長者ビル・ゲイツのメディア支配:ロバートFケネディ・ジュニアを徹底的に誹謗中傷( 『翻訳NEWS』2021-01-07)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-476.html

この論考でネルソン記者はまず、 『コロンビア・ジャーナリズム・レビュー』誌の2020年8月21日の特集記事で、ティム・シュワブ記者が次のように述べたことを紹介しています。

(ちなみに、ティム・シュワブはワシントンを拠点にしながらゲイツについて調べているジャーナリストです。またこの『レビュー』誌は、コロンビア大学大学院が公開しているプロのジャーナリストのための雑誌です。 )

「慈善家がメディアの資金不足を埋めるにつれて──そしてコロナウイルスの大流行に続くメディアの低迷のなかで、それこそが慈善家の、拡大することがほぼ確実な役割なのであるが──考えられないほど大きくなった懸念は、肝心の資金寄付者について、ニュース編集室がどれほど公正に報道できるかということである。ニュース編集室への主要資金提供者であり、頻繁に好意的な報道の対象となっているゲイツ財団のことを考えれば、この懸念はどれほど大きくても大きすぎることはない」

これに続けて、さらにネルソン記者は、シュワブ記者が「ゲイツ財団が2020年6月末までに出した約2万件の慈善助成金を調べ、ジャーナリズムに2億5,000万ドル以上が投入されたことを発見した」と述べたことも、紹介しています。

その助成金の受け取り手は次のようなものでした。それは、前節で列挙した大手メディアの数をはるかに超えるもので、ビル・ゲイツによるメディア支配力の巨大さに、改めて息をのむ思いがしました。以下がその一覧です。

*BBC(イギリス国営放送)
*NBC(米国の三大ネットワークのひとつで、NBCユニバーサルグループの主体企業)
*アルジャジーラ(ニュース等をアラビア語と英語で24時間放送する中東の衛星テレビ局)
*プロパブリカ(アメリカの非営利・独立系の報道機関)
*ナショナルジャーナル(ワシントンDCに拠点を置くアドバイザリーサービス会社)
*ガーディアン紙(イギリスの大手一般新聞)
*ユニビジョン(アメリカのスペイン語テレビネットワーク)
*ミディアム(電子出版のプラットフォーム)
*フィナンシャルタイムズ紙(イギリスで発行されている経済紙)
*ニューヨークタイムズ紙
*アトランティック誌(ボストンを拠点とする文学・文化解説誌)
*テキサス・トリビューン紙(テキサスの政治トピックを追うローカルNPOメディアで、年間1億円以上を稼ぐ)
*ガネット紙(バージニア州マクリーンに拠点を置く)
*ワシントン・マンスリー誌(ワシントンDCを拠点とする隔月発行の非営利雑誌)
*ルモンド紙(フランスの夕刊紙。紙名はフランス語で「世界」を意味する)
*シアトルタイムズ紙(シアトルで発行されている日刊紙の中で、購読者が最も多い)
*調査報道報告センター(カリフォルニア州に拠点を置く非営利のニュース組織。1977年から調査ジャーナリズムを実施)
*パティスィパント・メディア(米国の映画製作会社。主に社会性の強い映画を製作)
*ピューリッツァー危機報告センター(2006年に設立された米国ニュースメディア組織)
*全国プレス財団(ジャーナリスト向けの教育プログラムに焦点を当てた米国のジャーナリズム組織。功績に対して賞を発行)
*国際ジャーナリストセンター(米国ワシントンDCにある非営利の専門組織で、この27年間で180か国から7万人を超えるジャーナリストと直接協力)
*アメリカンプレス協会(News Media Allianceと提携している非営利のメディア教育団体)

シュワブ記者によれば、 「このリストも不完全だ。それはゲイツ財団が資金提供を報告する義務がないためだ」という。その一例が、ドイツの有名な週刊誌シュピーゲルです。

この週刊誌ついてネルソン記者は次のように述べています。

最近、ドイツの大手誌シュピーゲルも、他の報道機関と同様に、ゲイツ財団から「3年間で約200万ユーロから300万ユーロ」を受け取ったということだ。

これは「ニュースに影響を与えようとするゲイツ財団の秘密の行動戦略ではないのかという疑問」を提起している。

他方、ゲイツが資金を提供している報道機関について、ゲイツはこう答えた。

「それら報道機関が記事に書いていることは完全にかれら次第だ」と。つまり、 「報道内容に私は口を挟んでいない」と言いたいわけだ。

他方、このゲイツの言い分に対して、先述のティム・シュワブ記者はCJR(コロンビア・ジャーナリズム・レビュー誌)で、次のように反論しています。

ゲイツがニュース編集室にお金を渡すと、報道内容が制限される。しばしば、世界中の保健や教育などの話題に対してである。

というのはゲイツ財団は世界中の保健や教育などに取り組んでいるからだ。そしてそれが報道機関に対するゲイツ財団の行動戦略を高めるのに役立つというわけだ。

ゲイツに対する批判的報道がなされることは「希有」である。だから、拡大する懸念は、ゲイツに関する報道が今後の前例、モデルとなるということだ。

つまり現在行われているゲイツ報道のやり方が、次世代のハイテク億万長者たとえばジェフ・ベゾスやマーク・ザッカーバーグなどが慈善家に転身する際に、報道陣がどう報道すべきかのモデルになるということだ。

これを読んですぐ思い出されることは、一般人に与えられる叙勲として最高の栄誉「旭日大綬章」をビル・ゲイツが受賞したことです。

前著『コロナ騒ぎ謎解き物語』では、RFKジュニアが大統領官邸のホームページを通じて、 「アフリカの子どもたちに対して犯したビル・ゲイツのワクチン犯罪」について調査するよう求める署名運動を展開したことを紹介しました。

が、ゲイツに最高の叙勲を与えた日本政府は、このゲイツによる犯罪を知らなかったのかもしれません。だとすれば、これこそゲイツによるメディア戦略の巨大な勝利だと言えるでしょう。

しかし、ここで注意しておきたいことは、ネルソン記者がティム・シュワブというゲイツ専門の調査報道を紹介し、 「いかにビル・ゲイツが欧米や中東のメディアをしているか」について読者を啓蒙しつつも、アジアについては一切触れていないことです。

ゲイツがイギリスどころか、カナダのグローブ&メール、欧州ドイツのシュピーゲル誌、中東カタールのアルジャジーラにまで手を伸ばしているのですから、日本の大手メディアに手が及んでいないとすれば、むしろ不思議と言うべきでしょう。

ましてビル・ゲイツの別荘が軽井沢にあるとすればなおさらのことです。この別荘も単なる避暑地だと考えることは、あまりに安易すぎるのではないでしょうか。

BBCというイギリスの公共放送にまで手が及んでいるとすれば、NHKという公共放送はどうなのでしょうか。

イギリスの一流紙ガーディアンやドイツの一流誌シュピーゲルなど(これらもかつては左派・リベラルの主張で知られていました)にも、ビル・ゲイツの手が及んでいるとすれば、日本の朝日・読売・毎日などの各紙はどうなのでしょうか。

私が今回、とくに朝日新聞の記事を取り上げて論評したのは、このような懸念もあったからです。

かつて朝日新聞は中道左派の新聞として知識層には厚い信頼がありました。しかし最近のコロナウイルスをめぐる論調は「かすむリアル」という連載記事を見れば分かるように、ワクチン強制接種に疑問を呈する人間はあたかも「陰謀論者」であるかのような論調になっていました。

確かにワクチン反対を叫ぶ人たちのなかには、福井県議会議員・斉藤深緑氏のような荒唐無稽な陰謀論を主張する人もいます。が、遺伝子組み換えワクチンは正式な検証も経ていずFDA(アメリカ食品医薬品局)すらEUA(緊急使用許可)としてしか認可していないものです。

だとすれば「mRNAワクチン」に疑問を呈するのは当然のことでしょう。 「mRNAワクチン」技術を開発したロバート・マローン博士が懸念しているのは、国民のワクチン接種率が最も高い国々では、COVIDの新規症例数も極めて多くなっている、という点なのです。

 

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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