「GDP水増し」をマスコミはなぜ追及しない? ゾンビ政体とアベノミクスの嘘

藤原肇

日本の国力は日ごとに衰え、国民の収入や豊かさは、着実に劣化が進んでいる。しかし、“茹でガエル症候群”に陥った国民は、危機であることさえも感じとることができなくなった。それが現在の日本であり、極めて危うい状態にあることは間違いない。

もっとも大きな問題は、感受性や思考力の衰退である。それらを呼び覚ますべく、本稿で日本の現状を明らかにしたい。

・20世紀末の「破断界」

20世紀末にあたる1989年、中国で「天安門事件」が起き、ドイツでは「ベルリンの壁」が崩壊した。日本ではバブルが炸裂するなか、91年にはソビエト連邦が解体。冷戦体制の終焉が始まった。

ちまたでは「ノストラダムスの予言」をはじめ、「マヤの暦」の終わりが取り沙汰された。人々が不安に包まれて、落ち着きを失ったことで、世紀末を告げる「破断界」(物理学において、物体が壊れる限界)が生じたわけである。

そうして歴史が激動する直前の88年に出版されたのが、大変不幸な誕生史を背負った拙著『アメリカから日本の本を読む』(文藝春秋)である。今だから明かすが、この本の発売後、同時通訳の名人・国広正雄から献辞を書くように頼まれた。その宛先は、当時、皇太子の明仁親王だった。

それがきっかけか、京都皇統という舎人(従者)が私の前に現れ、意見交換をするようになった。著書を出すたびに皇族に献呈する関係が始まり、舎人との意見交換は毎回数時間も続いた。2000年から02年までの会話の記録を、20年後に出版した『皇室の秘密を食い荒らしたゾンビ政体』(ヒカルランド)に収録している。これは、小泉純一郎政権の初期における、歴史の証言となっている。

舎人の口からは、三笠宮と昭和天皇の真の兄弟関係や、新発行だったユーロ通貨が日本の江戸時代の医者・三浦梅園の思想に基づく(欧州のトップの関心が、大分の哲人の上に集まっている)といった、超極秘に属する情報が次々と飛び出した。それを耳にした私は目を見張ると同時に、皇室が持つ情報力の凄さに愕然としたのである。

さて、日本がゾンビ政治によって本格的に食い荒らされたのは、それ以降、すなわち小泉政権以来の20年の期間である。

その舞台となったのが郵政民営化で、国有財産が私物化され、国民の富は収奪された。格差が拡大して国民は貧しくなった。

さらに酷いのが安倍晋三政権で、戦前回帰を指向した安倍は、国体である憲法を蹂躙し、議会政治を解体し尽くした。国民の相互信頼は崩れ去り、社会は滅茶苦茶に溶融している。

・通り過ぎた世紀末と暦の断絶の危機

すでに記憶の彼方にあるのかもしれないが、世紀末には「Y2K問題」が発生した。西暦2000年を迎えた瞬間、時間の連続性が崩れて、デジタル世界の連続性が狂う、というものだった。暦が利用できなくなれば、コンピュータ依存の社会は心不全に見舞われて大混乱する。だから、科学者や技術者は動転し、緊急事態だと騒いだ。

そして、1999年末から2000年にかけて、航空の運航停止をはじめ、電気・ガスのインフラや、銀行のコンピュータ管理に、世界中が国を挙げて監視強化した。結果として大混乱は生じなかったが、政治の世界では、世紀末に似合った形で、人間の愚行による事件が続発している。

日本では小渕恵三首相の不審死と、密室の5人組のクーデタにより55年体制がご破算になったことで、清和会によるゾンビ体制が完成、亡国路線をまっしぐらに突き進む暴政が始まった。

覇権国の米国においては、新世紀になったとたんに9.11の同時多発テロ『皇室の秘密を食い荒らしたゾンビ政体』(ヒカルランド)が起き、資本主義を象徴するニューヨークのビルが大崩落した。そして米国は、イラクやアフガンを舞台に長期戦争にのめり込み、没落する契機となる。

その隙を狙って北京政府が猛烈に工業化を推進、覇権を握るべく踏み出した。これがいっそうグローバリズムを本格化させ、米中の企業がプラットフォームの構築を競った。 米国のGAFAに対して中国のBATHが追い上げ、ピラミッド型の古い産業は淘汰されて姿を消し始めている。

グーグル社が生まれたのは1998年。世界がインターネットで結ばれ、コンピュータが急速に普及。これが人間社会にどのような影響を及ぼしたかといえば、金儲け主義の席巻である。

Mountain View, California, USA – March 29, 2018: Google sign on the building at Google’s headquarters in Silicon Valley . Google is an American technology company in Internet-related services and products.

 

同時に、テロに対する戦争という作られた熱狂に煽られて、弱肉強食が時代の精神となった。ワーモンガー(戦闘狂)の米ブッシュ政権は戦争政策にのめり込み、新自由主義の嵐が世界を包んでいく。

先代のクリントン政権の時代から、米国が世界制覇を不動のものとするべくとった方策が、中国に資本と技術を注入し、世界の生産基地にすることだった。結果、米国の産業は空洞化。グローバリズムの荒波は地球の隅々を急襲して、古い経済秩序を破壊していく。

ジャーナリストのトーマス・フリードマンは、04年に出版した『フラット化する世界』で、「グローバルな競技場は、平坦に均されている。世界はフラット化されつつある」と高らかに宣言している。

さらに、彼が想定する「グローバリゼーション3.0」の世界では、あらゆる肌の色の人間が国境を越えて活躍すると予告した。しかし、そこには裏と表の意味があった。

生物を構成する細胞が、浸透圧を利用して内外の体液を調整するように、国民国家の細胞膜である国境の内側と外側では、液体が含むイオンが異なっている。血管細胞では、外液のナトリウムイオンが細胞内に過剰に侵入すると、細胞内にカルシウムイオンを引き込んで、血管を硬直化させて高血圧を引き起こす。

日本におけるナトリウムとは、竹中平蔵(慶応大学名誉教授)や西室泰三(元日本郵政社長)である。

・郵政民営化が秘めたカラクリ

現在に至る自公体制のはじまりは、1999年の小渕内閣である。途中で民主党政権も生まれたが、政権側による、松下政経塾卒議員の「トロイの木馬作戦」で自滅した。

日本のデフレが本格化した95年から現在に至るまで、世界のGDPは平均1.6倍に成長したが、日本だけはゼロ成長である。日本人は貧困を極め、国民一人あたりのGDPで、台湾や韓国にも追い越されている。

その元凶が、小泉純一郎政権である。巧みな客寄せで満員御礼の小泉劇場では、小泉がシテ(主役)、安倍がワキ(脇役)を演じた。演出を務めたのが、ウォール街仕込みの竹中であった。

竹中が水先案内役を果たしたのが、米国の「対日年次要望書」だ。その内容は、郵政公社の民営化によって日本の国富を海外に移転、日本経済を弱体化させ、国力の衰退を狙うものだった。

日本の貯金を米国のために使う。その戦略の実現を目指し、“構造改革論”を旗印に、小泉が刺客まで使って強引に推進したのが郵政民営化路線だった。公共投資を縮小し、設備投資を抑制したため、企業では賃金が切り下げられ、国民の格差は拡大した。

また小泉の新自由主義路線も、米国発のネオコン戦略に基づく、日本を破壊する政策である。竹中の陣頭指揮の下、新自由主義は日本社会に急速に拡がり、「民営化」を口実に、彼らは新しい利権を確保し続けた。一方、ワキの安倍はメディアを使い、言論弾圧を強行したので、愚民政策が大規模に進んだ。

現在に至るまで、米国は資本主義の砦である。そこで民営化は軍事面にまで浸透し、軍隊の兵站や裏工作に民間会社が積極的に進出して、「ブラックウォーター」や「ハリバートン」などの企業が暗躍している。しかし、そんな米国も、郵便公社(USPS)には手を付けていない。退役者たちの年金処理を担い、かつ情報流通のインフラだからである。

米国による、小泉・竹中を使った日本の郵政民営化の狙いは、貯蓄部門が持つ350兆円を、ハゲタカ・ファンドの食い物にすることだった。そのために貯蓄部門の切り離しを強行する。

それでも、仮想空間の電話や電信は民営化の対象になったものの、現実空間の道路や郵便配達については米政府は民営化を否定し、社会インフラを支える郵便公社の80万人の公務員は維持されたのだった。

だが、郵政の貯蓄・簡保が切り離されたことにより、日本郵便は経営危機に陥る。強引な分離路線の結果、人員が削られ、社会インフラであるはずの郵便サービスの質は低下した。非正規職員が増加し、過疎地での配達を減らすこととなった。

郵政はそれまで、貯金や保険の利益を使うことで、独立採算で運営できていた。税金による補填もなかった。小泉政権は“人件費の節約”を謳ったが、口実にすぎないし、実際にそんな効果はなかった。

郵便局の業務を構成する金融部門と非金融部門を分離することで、金の卵を産む金融部門だけ民営化で引き離し、私物化を狙う政商たちに払い下げの便宜を図ったのが、小泉と竹中のコンビである。

こうして05年に誕生した日本郵政株式会社の初代社長に就いたのが、三井住友銀行の西川善文元頭取だった。後に「かんぽの宿事件」が起きたことで、民営化が利権づくりだったことが露見した。それでなくとも、住友銀行は過去、数多くの疑惑事件が結びつき、ジャーナリズムを賑わせている。

Chiyoda, Tokyo: Tokyo Central Post Office: Exterior of Tokyo Central Post Office. Tokyo Central Post office is a central branch of Tokyo Post office and Japan Post Bank. Tokyo Central Post Office reopened on July 17, 2012, after renovation work that sought to preserve the original interior material.

 

1 2
藤原肇 藤原肇

フリーランス・ジャーナリスト。『皇室の秘密を食い荒らしたゾンビ政体』『日本に巣食う疫病神たちの正体』など著書多数。海外を舞台に活躍する。

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ