「GDP水増し」をマスコミはなぜ追及しない? ゾンビ政体とアベノミクスの嘘

藤原肇

日本人が知らない国外では、もっと奇妙な事態が起きていた。それを記録した『経世済民の新時代』(96年、東明社)の一部を再録するが、その内容は複雑怪奇である。

〈イタリアのアンブロシアーノ銀行の倒産事件は、重要な金融機関の破滅として注目されたが、ロベルト・カルヴィ頭取の首つり死はロンドンだったし、スイスの子会社ゴッダルド銀行を住友銀行が買い、竹下登元首相が蔵相として住友銀行に近かったことは、TNTが爆弾として完成したことを意味した。(略)

アンブロシアーノ銀行から伝わった病原菌は、マル暴印のアングラ世界とドッキングして、住友銀行と竹下登の接点として、イトマン事件をはじめ、佐川急便事件を導火線に暗殺事件が続き、最後の砦の大蔵省や金融界にまで達している。〉

アンブロシアーノ銀行とは、カトリックの総本山・バチカンの「主力行」と呼ばれた銀行である。

本書は当初、名の知られた出版社から刊行予定だったが、ゲラまでできていた段階で、出版中止となった。それほどの検閲が、日本では行なわれていたわけだし、96年の時点においては監視の目が厳しかったから、国民が何も知らなくても当然だ。

だが、2021年に電子版で出した『「アスペ」の三奇人交遊録』の第2章で、再びこの件に触れ、より具体的に書いた。読み比べれば、複雑怪奇な真実への理解の糸口となるだろう。日本の政治と経済の闇の領域に触れることが出来るのだ。

〈その前哨戦の形として、平和相互事件が起きて、「金屏風事件」でヤメ検が浮上し、「イトマン事件」で許栄中が、「佐川急便事件」で竹下首相に疑惑が及んで辞任劇に繋がった。また、稲川会の石井進が絡む形でプレスコット・ブッシュを通じ、韓国の裏人脈と結ぶ一連の疑獄事件が続発し、住友銀行の姿が浮かび上がった。

平和相互銀行は町金融であり、頼母子講を経て発展を遂げ、支店網を広げていた。大阪中心の住友銀行が東京進出するに際して、足場に使いたい金融機関だった。だが、支配者の小宮山家は裏社会と密着していたから、東京ではヤクザ銀行とされ、黒い噂が絶えなかった。しかし、それでも住友は支店網を使おうと試みた。

一方、住友は世界進出に際して、アンブロシアーノ銀行がマネーロンダリングの窓口用に、スイスの国境の町に作ったゴッタルド銀行を買収している。バチカン銀行(宗教事業協会)の内部にはマフィアが寄生しており、アンブロシアーノ銀行を通じてマネロンを行なっていた。バチカン銀行はサナダムシの巣窟だったのだ。

78年には、マネロンへの追及姿勢を見せていた法皇ヨハネ・パウロ1世が就任直後に暗殺される。また、アンブロシアーノの頭取だったロベルト・カルヴィは、82年にロンドンで暗殺された。

それらをラリー・ガーウィンは、『誰が頭取を殺したか』に、フリーメーソンに繋がるとして書いた。さらに、それを追った松本清張は『霧の会議』を執筆しているが、事件の実態は未解決である。〉

日本郵政は、その初代社長からして闇につながるいわくつきの人物だったのだ。

第2次安倍内閣の12年には、公明党の議員立法として郵政民営化法案の改正案が成立する。菅義偉官房長官は竹中が総務大臣のときに副大臣を務めて総務相に昇格した人物である。

このころに、元東芝会長から日本郵政社長に就任したのが西室泰三だった。西室は日本の国債を買うことをやめ、米国債と株にその投資先を替え、郵政の体質を大きく変えた。

また、オーストラリアの物流会社トールを6000億円で買収し、高い暖簾代で大損害を出している。東芝でも、西室は会長時代、米ウエスチングハウスの買収によって、同じく高い暖簾代を支払い、東芝を倒産状態に追い込み詐欺師を喜ばせた。

米国にとっての最大の功績は、日本郵政を米アフラックと提携させ、簡易保険の支配権を米国の手中に移したことであろう。

西室は東芝アメリカ社の社長としてロビー活動をしていた時に、米財界の手駒となった。05年からは東京証券取引所会長として、日本の企業の乗っ取りに協力したグローバリストである。

小泉・安倍は産業界のトップに米国内通者・西室を起用することで、日本の企業を売り払って長期政権を維持したのだ。

・アベノミクスの嘘とマスコミの怠慢

こうして四半世紀も続いたゾンビ政治。途中に短い政権交代があり、暴政を止める機会もあったが、「トロイの木馬作戦」によって、希望は打ち砕かれてしまった。さらに、メディアの腐敗と堕落による結果が日本社会の崩壊だ。日々明らかになる欺瞞や改ざん行為にも、もはや誰も驚く者はいないありさまである。

一昨年に辞任した安倍晋三は、あえて無能な傀儡を後継首相に仕立ててその破綻を利用、第3次安倍政権の再登場をも目論んだが、そんな安倍が講じた仕掛けが、GDPの基礎データ改ざんだった。アベノミクスの欺瞞を隠蔽することが目的であり、日本を完全に狂わせた。

昨年末に発覚した国交省による統計捏造では、20年のGDPの数字を4兆円もかさ上げしていた。すなわちゾンビ政体の全期間で、100兆円も嘘の数字を作ったことになるだろう。

この工作の裏には、GDPを20年までに600兆円にするという、アベノミクスの“目標”があった。

Japan’s GDP rises

 

しかし、言うまでもなく国家の経営の基礎となるGDPを胡麻化すことは、税収も国家予算の算定も、大いに狂わすことになる。それを平気でやる安倍晋三の貪欲性は、北朝鮮の金政権や中国共産党をしのぐものだ。

ただし、数字の捏造や改ざんは、独裁者の得意技である。戦前の「大本営発表」が、その悪例の代表だ。国民は嘘に騙され、大日本帝国の滅亡に繋がった。

この欺瞞を厳しく告発した、堀栄三の名著である『大本営参謀の情報戦記』(文春文庫)に、当時の具体的な実例が列挙されている。一例として、台湾沖空中戦の数字を引用しよう。これにより日本人は戦果に陶酔し、レイテ島の大惨事に続く。

〈16日15時発表 台湾沖航空戦の戦果、累計次の如し。轟撃沈 空母10、 戦艦2、巡洋艦3、駆逐1、撃破 空母3、戦艦1、巡洋艦4、艦種不詳11……。

この数字が真実なら、39年前の東郷元帥の日本海海戦以上の大戦果である。それが各司令部は、大本営海軍部発表を全面的に肯定し、各幕僚室は軍艦マーチに酔っていた。東京の電波は、かくてありもしない幻の大戦果という麻薬を、前線にばらまいてしまった。〉

しかし、安倍政権のGDPでっち上げは、これを上回る狂態と言って過言ではない。ただし、それでも、北京政府はアベノミクスが目指した600兆円のGDPの2倍を超える1300兆円を誇り、没落する日本を嘲笑しているのが現状である。

安倍は嘘つきのペテン師だし、出鱈目放題によって国政を食い物にしたことについては、筆者は『日本に巣食う疫病神たちの正体』をはじめとした数冊の『ゾンビ政体』シリーズで、すでに論じてきた。

一方、言論弾圧という点では、安倍はゲッペルス並みであり、狂信的なサイコパスぶりではヒトラーとスターリンが顔負けするほどだ。こんな男が長期政権を握ったことで、日本の社会は溶融したのである。

それにしても、なぜ日本のジャーナリズムは、大本営発表よりも数万倍も悪辣なGDPの数字のでっち上げに対し、正面から虚妄と犯罪を暴露して、告発しないのか不思議である。そこに共犯の悪意を感じるのだ。

なお、本稿の一部は税理士・山根治の「山根治ブログ」にも、筆者のコメントとして掲載されている。併せてお読みいただきたい。
(文中・敬称略)

(月刊「紙の爆弾」2022年4月号より)

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藤原肇 藤原肇

フリーランス・ジャーナリスト。『皇室の秘密を食い荒らしたゾンビ政体』『日本に巣食う疫病神たちの正体』など著書多数。海外を舞台に活躍する。

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