【連載】週刊 鳥越俊太郎のイチオシ速報!!

北海道新聞の夕刊が休刊。新聞社の夕刊はもう! 他

鳥越俊太郎

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今週の「鷲の目」

1、北海道新聞の夕刊が休刊。新聞社の夕刊はもう!
2、放送法でガタついたあの磯崎さんが引退だってさ?
3、処理水と汚染水の違いわかる人?

1、北海道新聞の夕刊が休刊。新聞社の夕刊はもう!

ほとんどの読者は見落としたに違いない。
いやーホントに目につかない数センチ大の記事。毎日新聞社会面のべた記事。わずか9行、見出し入れても10行。
でも新聞の歴史にとっては重要な記事だ。見出しを紹介すると、「北海道新聞 今月で夕刊休刊」。記事は全文紹介しておく。

「北海道新聞社(札幌市)は1日付けの社告で、9月末で夕刊を休刊すると発表した。10月から朝刊とニュースサイト「北海道新聞デジタル」を拡充する。
購読料は朝夕刊セットの4400円(税込み)から3800円(同)となる。
同社法務広報グループによると、今年7月時点での夕刊の発行部数は23万3700部。
1992年は約78万部を発行していた。」

これは北海道新聞だけのことだろうか?北海道新聞はかつては北海道警の裏金問題で多くの功績を残しているほかニュース戦線でも大きな功績を残している。
先日北海道新聞出身の高田昌幸さんとお茶をしたばかりだ。
高田さんは在職時代、北海道庁の不正経理問題や北海道警察の裏金問題などを告発報道。
新聞協会賞を受賞している。
高田さんたちもきっと夕刊は時間的な競争の中では大事な媒体だったはずだ、しかし、もう時代は変わったようだ。
デジタル文化が導入されると、私たちが、早朝に行われた捜査二課の家宅捜索のニュースを何とかして夕刊に叩き込んだ時代はもはや過去の懐かしい話となった。
今の夕刊にはどんな記事が載っているのだろうか。
北海道新聞夕刊休刊(廃止とは言わない。が事実上は廃刊!!)のことを頭に入れて今の朝日や毎日、そして東京新聞の夕刊の実情を見ていきたい。

毎日新聞夕刊9月2日1面には「読む写真」と言う企画で「新たな指にともる希望」がこの日のタイトル。
「美容師の国家試験を間近に控えた19歳の時、あやかさんは交通事故で右手の人差し指を失った。しかし、その後美容師になり、シリコン製の人工ボディパーツ『エピテーゼ』と出会い人前で右手を出すことに躊躇しなくなり、人生が大きく変わった」写真を大きく使った読み物企画だ。
読んでみると面白い。が、いわゆるニュースの記事ではない。
新聞の一面全部を使ってこう言う読み物を展開するのを見て昔の記者は「これが新聞か?」という疑問を持つだろう。
しかし、もはや夕刊はこういう展開になっているんだね。

ただ、そこは新聞だ、
1面の左端には縦に「露、次世代ICBM実戦配備」「ゼレンスキー氏、国連出席へ」「NY減油9ヶ月半ぶり高値」という15行くらいの短信ニュースが並べてある。
毎日新聞夕刊2面も企画もの。

ラグビーのワールドカップフランス大会の話。
フランス観光親善大使を務める元日本代表FWの大野均さんのインタビューだ。
紙面3分の2を占める写真入りの企画。
左側の企画もラグビー企画。
大阪朝鮮高校出身で神戸製鋼から日本代表、それもチームの司令塔、スタンドオフ(SO)になった李承信(リ・スンシン)の話。どれも面白い読み物だがニュースではないなあ。

3面は写真企画。福島県楢原の海水浴場のサーフィン大会復活のお話を写真で見るという企画。
4面は「馬(UMA)ランド」、9月3日の新潟記念の特集、まるで競馬場で読む競馬新聞のようだ。続いて第5面は何とあのテレビの人気番組「笑点」の林家木久扇さんが来年の3月いっぱいで「笑点」を勇退するというお話だ。
これが紙面の三文の二。
左には「Media Now」というタイトルでコラムニスト、ペリー荻野さんのお話。内容はNHKBSプレミアムで8月25日から始まった中井貴一主演「雲霧仁左衛門6」についてだ。

5面は芸能のお話だ。ここは読んでて楽しいね。
さていよいよ最後の先ずは第二社会面。
上半分は9〜10日に主要20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれるインドの首都、ニューデリーに7月に完成したばかりの首脳会議用の施設「バーラト・マンダパム」の話。
多少はニュースに絡んだ企画だ。
その記事の下に「死亡数日前か SNSに動画 プリゴジン氏」という写真付きの記事。

もう一本は「女性正社員賃金 男性の7割」「上場企業 管理職比率9・4%」。
こちらは東京商工リサーチの調査で判明したちょっと驚きの結果だ。
日本の企業は想像以上に男女格差が激しいのに驚くなあ。
さて第6面所謂社会面だ。トップの記事は92歳の被爆者が描いた絵本「あの日」「席替わり犠牲の共に『許して』」「生き残った義務、体験伝え」さてこの日の夕刊でニュースらしいニュースが2本3段見出しで載っている。
「旧統一教会に過料検討」「文部省 適切回答せずと判断」。
「日大アメフト部 再び停止」「違法薬物事件 無期限 寮も閉鎖」。
どちらもニュースとしてはかなり重要な、重いものだな。統一教会問題は最終的に文部省が東京地裁に解散命令を請求するのかどうかだ。

ニュース記事の最後には「請求の証拠が整えば、東京地裁に解散命令を請求する」とある。
問題は解散命令が出た後多くの信者たちがどうするか?このニュースはまだまだ尾を引いていく話だな。
日大アメフト部の方もかなり大変な話になってきた。
毎日新聞の夕刊を全部チェックして見たら、何と最後の第6面にニュースらしいニュースが2本だけ載っていた。

これだけ見ると新聞社のニュースを伝える夕刊はもう要らないなあ、と思う。
北海道新聞が休刊事実上の廃刊を決めたのも頷ける話だ。
これは朝日新聞、毎日新聞、東京新聞も似たような話だと思う。

さて、今後の新聞社の動向が気にかかるよねえ。
私事だけど新聞は朝刊はマンションの扉の前に配達してくれる。
しかし、夕刊は一階の郵便受けポストまで取りに行かねばならない。
歳をとると毎夕エレベーターで一階まで新聞を取りにいくのは結構な負担だ。
妻との間で今日はどちらが行くか、言い争いとは言わないけれど、今日はちょっと足が痛いのでお願い!なんてことになっている。
正直に言うと新聞の夕刊は私たちには負担なのだ。
今日チェックしたように夕刊はなくてもニュースに敏感な私にも問題はない。
じゃあそろそろうちも夕刊止めるか?これは我が家の一つの例だけど、こうして読者が離れると新聞社側も夕刊を止めることで身軽になり、朝刊とデジタル化で本来のニュース報道のメディアになることができるんじゃないだろうか?

2、放送法でガタついたあの磯崎さんが引退だってさ?

2016年2月頃だったかなあ、放送法をめぐり安倍総理の意向をくんで特定のテレビ番組を狙い撃ちにしていた首相補佐官、礒崎陽輔氏(65)が政界を引退するそうだ。
これも毎日新聞のベタ記事だ。
私にとっては記者会見までして戦った相手で何とも言えない感じだ。記事をそのまま引用する。

「自民・礒崎氏が 政界引退を表明 元首相補佐官」の見出しで次のような記事が。
「自民党の元参院議員で、第2次安倍晋三政権で首相補佐官を務めた礒崎陽輔氏(65)が1日、政界を引退すると表明した。
自身のホームページ(HP)で明らかにした。礒崎氏はHPで『この度、政治の第一線から引退することを決意しました』と発表。
安全保障担当の首相補佐官として集団的自衛権を容認する憲法解釈の変更や安全保障関連法の成立に関わったことを振り返り『憲法改正が実現していないことを心残りとしていますが、情熱を持つ多くの国会議員の皆さんにその道を継いでいただけるものと確信しています』と記した」。

日本の憲法改正を企む雑魚が一匹いなくなったなというのが私の感想。
あの時危機感を覚えて記者会見をやったが、戦友で毎日新聞の2年後輩の岸井成格はもはやいない。先に逝ってしまった。
同じ戦列に立ってくれる後輩たちがどのくらいいるのか?誰がやってくれるのか?心配し出したらキリがないなあ!!!

3、処理水と汚染水の違いわかる人?

2日の東京新聞夕刊の3面。「『処理水』を『汚染水』と発言」「野村農相の資質 与党でも問う声」「首相は更迭否定」。 記事の前文をさらっと紹介しておこう。
「岸田文雄首相は1日、海洋放出している東京電力福島第一原発の処理水を『汚染水』と呼んだ野村哲郎農相の更迭を否定した。
発言について『言い間違いとはいえ、不適切であり極めて遺憾だ』と指摘」とある。

さて、ここでは野村哲郎農相が言い間違えてしまった水について考えてみたい。
私たちも案外こういう水の表現については改めて問われると説明できないかもしれない。
ではここで野村農相が批判を浴びた「処理水」と「汚染水」はどう違うのか考えてみたい。と思って新聞をチェックしていたら、さすが読者に寄り添うのが得意な東京新聞です。

Q and A にして書き出している。そのまま記事を紹介しておく。

【汚染水】デブリに触れ、高濃度 【処理水】2段階で放射能除去

Q、汚染水とは?

A、世界最悪レベルの事故を起こした1〜3号機では、格納容器内にある溶け落ちた核燃料(デブリ)の冷却が続いています。
デブリに触れた冷却水は高濃度に汚染され、建屋に流入してきた雨水や地下水と混ざって量が増えます。これが汚染水です。

Q、処理水とは

A、汚染水を2段階で浄化処理した後の水です。
建屋から汲み上げた水は、まず除染設備で放射性セシウムとストロンチウムを低減します。
その後、放射性物質トリチウム以外の大半の放射性物質を取り除くことができる多核種除去設備(ALPS=アルプス)に送られ、そこで浄化処理後の水が処理水と呼ばれています。

こうやってみると処理水と汚染水は全く異なる性質の水だと言うことになる。
問題は野村さんは最初はやはり意図的に汚染水と言ったのかどうかが問題になるだろう。
漁業関係者の間には海洋に放出された水について疑いを持っている人はいるだろうね。
ひょっとすると野村さんはそうした漁業関係者にも寄り添いたい気持ちがあったのかもしれませんね。
全くの言い間違いなら自分がアホでした、ごめんなさい!で済むんですが、原発の汚染水をどう処理して放出するか?電力関係者と漁民の間での気持ちはかなりかけ離れているんでしょうから、微妙ですね。

野村さんは鹿児島県霧島市出身。
進学校で名高いラ・サール高校を卒業、4年後には中馬辰猪議員の秘書になっている。
霧島市は鹿児島湾の最深部、錦江湾に面している。
水産業者とは近しい関係にあって、今回の海洋放出水の問題でも微妙な立場にいたのかもしれない。今回の海洋放出問題では、やはり中国からの迷惑電話のことが一番気になる。というか、やっぱり中国ってどういう国なんだろうか?首を傾げたくなるなあ???

はい、今日はここまでお読みくださってありがとうございます。

2023/9/4
鳥越 俊太郎記

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鳥越俊太郎 鳥越俊太郎

1940年3月13日生まれ。福岡県出身。京都大学卒業後、毎日新聞社に入社。大阪本社社会部、東京本社社会部、テヘラン特派員、『サンデー毎日』編集長を経て、同社を退職。1989年より活動の場をテレビに移し、「ザ・スクープ」キャスターやコメンテーターとして活躍。山あり谷ありの取材生活を経て辿りついた肩書は“ニュースの職人”。2005年、大腸がん4期発覚。その後も肺や肝臓への転移が見つかり、4度の手術を受ける。以来、がん患者やその家族を対象とした講演活動を積極的に行っている。2010年よりスポーツジムにも通うなど、新境地を開拓中。

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