「ピースボート世界一周の船旅」② ~「ピースボート」は日本社会の縮図~
国際前回の「ピースボート世界一周の船旅」① で、ピースボートの特徴は観光だけでなく、平和について学ぶ船旅であることだと述べたが、もう一つ、面白い特徴として挙げられるのは、洋上での専属講師による講演の他、自主企画でカルチャークラスや講義を開き参加でき、乗船者が互いに教えあい、学びあう旅でもあるということだ。
私もこの機会に、自主企画で「台湾有事」の際に戦場となる沖縄の危機を訴える講義を日本人対象に2度ほど行った。
全国からの乗船者に沖縄を戦場にさせないとの思いを持ち帰って拡散してほしかったからだ。
「ピースボートはある意味、日本社会の縮図だ」と言った人がいたが、ある程度予想していたとはいえ、あまりに多くの人が沖縄の要塞化について知らないことに驚いた。
本土メディアがいかに沖縄について沈黙してきたかがわかる。
「知らなかった、教えてくれてありがとう」と感謝する人が多いが、無関心な人も多く、異議を唱える人もいた。
「中国脅威があるから、日本防衛のため軍備を整えるのは当然だ。」と言う。
中国の軍備増強や周辺隣国との摩擦を中国脅威だとする傾向があるが、注意すべきは、ここでの焦点は「台湾有事」であるということだ。
ディスカッションやディベートでも何でも、論点としてのトピックは一つに絞るべきであり、2つ以上を混在して話すと収集が着かなくなる。
ウクライナ戦争や「台湾有事」を論じる際に、欧米が「民主主義国家」対「独裁国家」の構造で論じる傾向があるが、それと同じで論点の混在となる。
それに、民主主義国家と自負する国々が正義であり独裁国家とされる国々が悪であると定義できるような単純な世界ではないことはご承知の通りである。
民主主義国家と宣伝する国々が他国の民主主義を踏みにじってきた歴史もある。
米国が言い出した「台湾有事」は、中国の台湾侵攻を指している。
よって、「台湾有事」で起こる戦争についての議論での中国脅威は台湾との関係に限定して論じられるべきである。
さらなる傾向として、「中国の台湾侵攻の可能性は低い」と軍事や中国の専門家が指摘するも、ウクライナ戦争でロシア悪が常識の日本では中国脅威が拡散されており、台湾有事についての議論でも、証拠や事実を挙げることなく、安易に「中国が恐い」と結論づける人が多い。
平和外交の努力がなく、戦争準備一辺倒の日本を批判すると、「中国が好きなの?」と反応されて驚く。
まさに、ジョセフ・ナイが「米国はアジアの緊張を高め、日本は中国の脅威を煽る反中ナショナリズムによってアメリカの計画に埋め込まれ、そのようにコントロールされる」と「Foreign Affairs」の論文に書いたとされる通りの状況になっていることを実感した。
日本人としてまず問うべきことは、「台湾有事」をめぐる戦争は日本の防衛戦争なのかどうかである。1つの中国を米日が共に認めるなかで、「台湾有事」を「日本が責任を持って対処する」と政権の政治家が述べる姿勢は、他国の内政に日本が積極的に介入したとの判断になりかねない。
東南アジア諸国連合(ASEAN)は米中対立をアジアに持ち込もうとする米国に否定的で台湾の極端な行動にも反発する傾向が強く、日本はアジアの異端児との指摘もある。((Yahoo news 3/22 富坂 聰)2017年北朝鮮がグアム攻撃に言及した時、時の小野寺防衛大臣が積極的介入を明言、米国は「日本はグアムを守る準備ができている」と述べた。
日本は米国の敵をすべて日本の敵とし、米国領土グアムや中国領土台湾を守ることは日本防衛だとし戦争に突入していくのか?
日本がアジア諸国を西欧の支配から解放するとした日中戦争は、日本の侵略戦争として歴史に刻まれていることを今こそ思い出すべきだろう。
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独立言論フォーラム・理事。沖縄県那覇市生まれ。2019年に名桜大学(語学教育専攻)を退官、専門は英語科教育。現在は非常勤講師の傍ら通訳・翻訳を副業とする。著書は「沖縄の怒り」(評論集)井上摩耶詩集「Small World」(英訳本)など。「沖縄から見えるもの」(詩集)で第33回「福田正夫賞」受賞。日本ペンクラブ会員。文芸誌「南瞑」会員。東アジア共同体琉球・沖縄研究会共同代表。