【特集】ウクライナ危機の本質と背景

ウクライナに平和をもたらすために、米国はどのような貢献ができるのか?

ニコラス・J・S・デイヴィス(Nicolas J.S.Davis)

・ミンスク第2次合意を妨害した米国

第四に、全ての当事者がコミットする安定的かつ永続的な和平への段階的なロードマップが必要である。ミンスク第2次合意は、脆弱な停戦をもたらし、政治的解決へのロードマップを確立した。

しかし、ウクライナ政府と議会は、ペトロ・ポロシェンコ大統領とその後のウォロディミル・ゼレンスキー大統領の下で、15年にポロシェンコがミンスクで合意した次のステップ、すなわちDPRとLPRで独立した国際監視下の選挙を認める法律と憲法改正を可決し、連邦化したウクライナ国家の中で自治を認めることを実現しなかったのである。

こうした失敗によってロシアがDPRとLPRの独立を認めた今、新たな和平合意では、ミンスク第2次合意で約束した自治権であれ、ウクライナからの正式な独立であれ、全ての当事者が約束する方法でDPRとLPRの地位、そしてクリミアの地位を見直して解決しなければならない。

トルコでの和平交渉では、ウクライナにとって、ロシアが再び侵略してこないような強固な安全保障が必要であることがネックとなった。国連憲章は国際的な侵略から全ての国を守るという形式的なものだが、侵略者(通常は米国)が安保理の拒否権を行使する場合、何度も失敗している。

では、中立国であるウクライナは、今後どのようにして攻撃から守られると安心できるのだろうか。また、全ての当事者は、他国が今回の合意を守ると、どのように確信できるのだろうか。

第五に、外部勢力は和平協定の交渉や実施を損なってはならない。

米国とNATOの同盟国はウクライナの積極的な戦争当事者ではないが、NATOの拡張と14年のクーデターによってこの危機を誘発し、その後キーウのミンスク第2次合意の破棄とウクライナへの武器流入を支援した彼らの役割は、それがどこであれ、交渉のテーブルに長い影を落とす「誰もが認識しているが、話したくはない重要な問題」なのである。

12年4月、潘基文前国連事務総長は、シリアにおける国連監視下の停戦と政治体制の移行に関する6項目の計画を作成した。

しかし、潘の計画が発効し、国連の停戦監視団が配置されたまさにその時、米国やNATO、アラブ王政の同盟国は3つの「シリアの友」会議を開き、シリア政府を打倒するために支援しているアルカイダとつながった反政府軍に、事実上無制限の財政・軍事支援を約束した。これは、反政府勢力に停戦を無視するよう促し、シリアの人々にとってはさらに10年間続く戦争へとつながった。

ウクライナをめぐる和平交渉の脆い性質は、成功しても、こうした外部からの強い影響に非常に不安定なものにする。米国はドンバスの内戦で、ミンスク第2次合意を支持するのではなく、ウクライナの対決姿勢を支持し、それがロシアとの戦争につながった。

トルコのメヴルト・カヴォソグル外相は現在、テレビ局「CNNトルコ」に対し、名前を特定しないままNATO加盟国が、ロシアを弱体化させ続けるために「戦争の継続を望んでいる」と語っている。

・結論

米国とNATOの同盟国が現在及び今後数カ月間にどのように行動するかは、ウクライナがアフガニスタンやイラク、リビア、ソマリア、シリア、イエメンのように長年の戦争によって破壊されるか、それともこの戦争が外交プロセスによって速やかに終結し、ロシアとウクライナ及びその近隣諸国の人々に平和と安全、安定をもたらすかを決める上で、極めて重要となるであろう。

米国がウクライナの平和の回復に貢献したいのであれば、和平交渉を外交的に支援し、ウクライナに、その交渉担当者がロシアとの和平合意を成立させるために必要と考える譲歩を支持すると明確に示す必要がある。

ロシアとウクライナがこの危機を解決するためにどのような仲介者に協力するにしても、米国は外交プロセスを公的にも密室でも全面的かつ無条件に支援しなければならない。また、12年のシリアにおける潘の計画に対してのように、米国自身の行動がウクライナの和平プロセスを弱めることのないようにしなければならない。

ロシアが交渉による和平に合意するインセンティブを与えるために米国とNATOの指導者が取り得る最も重要な措置の1つは、ロシアが撤退協定に従った場合に、制裁を解除することを約束することである。

そのような約束がなければ、制裁はロシアに対する影響力としての道徳的・実際的価値を急速に失い、自国民や、家族を養うための食糧をもはや買うことができない世界中の貧しい人々に対する恣意的な集団処罰にしかならなくなる。NATOという軍事同盟の事実上のリーダーとして、この問題に対する米国の立場は極めて重要であろう。

従って、米国の政策決定は、ウクライナに直ちに平和が訪れるのか、それとももっと長く血なまぐさい戦争が続くだけなのかに、決定的な影響を与えることになる。米国の政策立案者やウクライナの人々を気遣う米国人にとっての試練は、米国の政策選択がこれらのどの結果をもたらす可能性が高いかを問うことでなければならない。

(訳者:東江日出郎)

提供:Global Research
原文は、「How Could the U.S. Help to Bring Peace to Ukraine?

URL: https://www.globalresearch.ca/how-could-us-help-bring-peace-ukraine/5778849

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ニコラス・J・S・デイヴィス(Nicolas J.S.Davis) ニコラス・J・S・デイヴィス(Nicolas J.S.Davis)

独立系ジャーナリストで、女性を中心とした反戦団体「コードピンク(CODEPINK)」と協力しているリサーチャーであり、『我々の手にこびりつく血: アメリカのイラク侵攻と破壊』(Blood on Our Hands: The American Invasion and Destruction of Iraq)の著者である。また、グローバル・リサーチへの定期的な寄稿者でもある。 

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