米国隷属国家日本を問う(後)
琉球・沖縄通信安保・基地問題
「1879年、明治政府による琉球処分の際、あらゆる要求に応じた琉球だが一つだけ拒んだものがあった。それは軍隊の駐留だ。琉球は『我々弱小国は対話と友好により隣国との平和を保つ努力をすべきで、武力は武力を招く』と反対したが、政府は軍事は国決定で反対は存在しないとはねつけ日本軍駐留が決定した。それが沖縄の基地化の最初である」と歴史を説く(沖縄の主張の正しさは、台湾上陸予定の米軍が日本軍が駐留する沖縄に変更上陸した結果、沖縄戦となり、米軍基地の島となった歴史が証明する)。「沖縄は他によって決定権を奪われてきた歴史だが、県独自に2015年までの基地返還アクションプログラムを作製した。私は軍事基地を平和と人の幸福を生み出す場所に変え、アジア太平洋諸国との長きにわたる友好関係のために沖縄の地理的優位性を再活性化させたい」と未来を語る。しかし、最高裁は「開廷するやいなや裁判長が2行の評決を読んで1分で閉廷した。『上告を棄却する。訴訟費用は上訴人によって支払われるべし』」と。
翁長雄志氏は上記の2人と異なり自民党政治家である。その彼が、何故「イデオロギーよりアイデンティティ」を唱え、政府が強行する辺野古新基地建設に反対し「オール沖縄」を組織したのか?その源は、オスプレイ配備反対と普天間基地の県内移設断念を求め超党派で市町村長が東京でデモ行進をした時にあると推測する。
行進する彼らに浴びせられたのは「売国奴」「非国民」というヤジと罵倒、観衆の冷たい目だった。何かがはじけたのだろう。彼は前知事の埋め立て承認撤回を明言した。その後は就任挨拶で上京しても面会を拒否され、予算は削減され冷遇を受け続けた。癌に冒されやせ細る体から力強く発信した数々の名言は今も心に残る。「ウチナーンチュ、ウシェーティナイビランドー」(沖縄人を馬鹿にしてはいけませんよ)「ヌチカジリ、チバラナーヤーサイ」(命の限り頑張りましょうね)と琉球語で県民を鼓舞し、「『日本を取り戻す』という中に沖縄は入っているんですか」「沖縄以外の都道府県で、日米両政府という権力と闘ってきたところがありますか」と政府に鋭く迫り「日米の安全保障体制は沖縄という砂上の楼閣に乗っている」と表現した。
・最後に
1995年の少女暴行事件での県民の怒りがきっかけで世界一危険な基地と当時の米国副大統領に言わしめた普天間基地の閉鎖が報道され県民は喜びに湧いた。が、それは、美しい大浦湾を埋め立て辺野古新基地を建設する県内移設に変わった。今や辺野古に新基地が出来ても普天間基地閉鎖が実現するのかさえ不透明な状況だ。
そして、沖縄は相変わらず、米兵による事件、ヘリや戦闘機事故、自衛隊基地も含めた日米両基地からの消化剤PFASによる水や土壌汚染、オスプレイや戦闘機の騒音など日々基地被害に悩まされている。日本の一県となったにも関わらず、日本の政治が及ばない治外法権に苦しむ。
コロナでは、米軍基地内のデルタ株感染発生により、基地の多い中部での爆発的感染数が全国で群を抜いたが、飲食が原因とされ基地からの感染に触れた本土メディアは知る限り皆無であった2022年1月現在、基地内で300人規模のオミクロン株集団感染が発生、又もや中部を中心に県民に感染が拡大している(今回は山口、広島等他県の基地でも感染発生、拡大がありメディアも基地に言及した)。
PCR検査実施もなくマスク無しで歩き回る米兵達はまさに米国隷属国家日本を象徴する。さらにクリスマス直前の12月23日、地方紙2紙が衝撃的ニュースを伝えた。自衛隊と米軍が、台湾有事を想定し新たな日米共同作戦計画の原案を策定した。沖縄県の南西諸島に攻撃用軍事拠点を置くと発表しており、住民が戦闘に巻き込まれる可能性が非常に高い。安倍・麻生政治待望の「戦争のできる国」の実現だ。南西諸島はまたも日本の、米国代理戦争の捨て石となる。基地被害に苦しむ日々は、戦争の恐怖にも怯える日々となっている。
矢部宏治氏は、主権を取り戻すための憲法改正を説いた(11)。「日本は最低限の防衛力を持つ」「今後、国内に外国軍基地をおかない」を憲法に明記するという、米軍撤退を実現したフィリピンモデルだ。米軍基地が敵から日本を守るためでなく日本人の命と安全を脅かすだけの存在であることが明瞭となった今、憲法が骨抜きにされ集団的自衛権で米国の戦争に加担する政府が暴走する今、米国の呪縛から逃れるにはこの案しかないかもしれない。が、やはり国民の意識がそこまで高まることはなかったし、今もない。
自衛隊は「住民を守る力は無い。住民保護は自治体の責任」と宣言した。「軍隊は住民を守らない」との沖縄戦の教訓の再来だ。「米国は以前に米軍の基地があったスービック湾に戻りたがっているが、米軍基地がそこに戻って、もし戦争が勃発したらフィリピン人は絶滅してしまう」(12)。そう述べて米国の要求を拒否したフィリピンのデュテルテ大統領、彼のような存在を日本の政権に望むは無謀か。
参考文献
(11)矢部宏治(2019)『日本はなぜ基地と原発を止められないのか』講談社
(12)東江日出郎(2021)「バイデン政権で何が変わったのか?」東アジア共同体・沖縄(琉球)研究5号。
※「米国隷属国家日本を問う(前)」はこちらから
独立言論フォーラム・理事。沖縄県那覇市生まれ。2019年に名桜大学(語学教育専攻)を退官、専門は英語科教育。現在は非常勤講師の傍ら通訳・翻訳を副業とする。著書は「沖縄の怒り」(評論集)井上摩耶詩集「Small World」(英訳本)など。「沖縄から見えるもの」(詩集)で第33回「福田正夫賞」受賞。日本ペンクラブ会員。文芸誌「南瞑」会員。東アジア共同体琉球・沖縄研究会共同代表。